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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/15(月) 09:05:41.74 ID:yDP7SWGp0
 ●白玉楼 

妖夢「これがソードアート・オンラインですか。 
   アバターは面倒なので私そのまま、髪の色だけ人間らしく黒にしてっと」 

妖夢「……リンク・スタート!」 







 








●第一層・はじまりの街 

妖夢「ここがはじまりの街ですね。剣士だらけで酔いそう。 
   私の二刀流はどこまで通用するかしら?」 

妖夢「まずは武器を変えないと。 
   初期装備の、両刃の直剣なんか不要。片刃の曲刀が欲しいのです」 

妖夢「あの店が良さそう——おじさん、これを下取りであの曲刀をください」 

NPC店員「あいよお嬢さん。カトラスだぜ」 

妖夢「小さくて軽いですね。リーチの短さが気になるけど……そうだ、もう一本ください」 

クライン「なんだなんだ、二刀流か? 変わってんな」 

妖夢「あなたは?」 

クライン「俺はクライン。おなじカトラス使い同士、よろしく」 

妖夢「私はヨームです」 

クライン「そうだ、ちょっとレクチャーしてくれねえか? 
     その迷いのない只者じゃない動き、あんたベーターだろ?」 

妖夢「いいえ違いますよ。私はリアルで剣術を嗜んでいるだけです」 

クライン「なんという希少種! ぜひフレンド登録してくれ」 

妖夢「いいですよー」

●はじまりの街・西の平原 

妖夢「これがリーバー、ソードスキルって便利ですね。 
   勝手に体が動いて、どんな素人もソードスキルを使ってる瞬間は達人になれる」 

クライン「なんだヨーム、さっきからみんな一撃じゃんかよ。どうなってんだ?」 

妖夢「力をすこし込めたら、威力や速さが増すみたいです。 
   さらに急所も狙えば、最終的にダメージが三倍くらいまで増えますね」 

クライン「急所って、すげえな。よし俺も……うわっ、また失敗した。 
     力を抜いてりゃ楽なんだが、上乗せを狙うと加減もタイミングも難しいな」 

妖夢「失敗を繰り返して馴れるしかありませんね」 

クライン「このイノシシ野郎、動くなよ。チェストォー!」 

妖夢「そうだ、二刀流を試してみようかしら」 

妖夢「あれ、リーバーが発動しない。ポストモーションは合ってるはずなのに」 

キリト「そこの君、この辺りに警告表示が出てないか?」 

妖夢「あ、確かに。すいませんが、あなたは……」 

キリト「俺はキリト。二刀流は装備するだけならシステム的に可能だけど、 
    ソードスキルが一切使えなくなるんだ。だからほとんど誰も真似しないよ」 

妖夢「およよ、知りませんでした。ありがとうございます」 

キリト「二刀流なんて無謀なことはせずに、普通に片手一本でいいと思うよ。 
    みんな素人だから、通常攻撃なんてへっぴり腰で格好悪くて、見てらんないからね。 
    ソードスキルのモーションに任せたほうがずっと良い」 

妖夢「まあ、別にソードスキルが使えなくても私は構わないんですけどね。こんな具合に」 

キリト「なっ! しょっぱなから四連撃って? 通常の連続攻撃だけでフレンジーボアを一気に倒した? 
    しかもアニメやゲームみたいに鮮やかな二刀流。どうなってるんだ」 

妖夢「通常攻撃もソードスキルとおなじです。 
   タイミングと狙い次第でいくらでも速く打ち込め、強力なダメージを与えられますよ」 

クライン「さすがリアル剣術使いは動きが違うな。まるでずっとソードスキルを使ってるみてえだ」 

キリト「そうなのか。やはり武道経験者が有利になるゲームなんだなSAOは。 
    アバターだけ見れば俺の妹よりすこし上くらいなのに」 

クライン「おめえ妹さんがいるのか! 俺に紹介してくれよ!」 

キリト「ちょっ、あいつは俺らみたいなゲーマーとは違うから」 

妖夢「クラインさん、なんでそんなに過剰反応してるんですか? 私も女の子なのに」 

クライン「いや……ヨームがリアルで女って限らねえし、その強さだから歳もアバターとは違うだろうし」 

妖夢「クラインさん、ゲームで出逢いを求めるなんて、不純です!」 

キリト「クラインっていうのか。あまり素を出すと、せっかく格好いい二枚目アバターが泣くぞ」 

クライン「ぐぬぬ、反省だぜ」

●夕刻 

妖夢「狩った狩った〜〜!」 

クライン「やっと一撃で倒せるようになったぜ。ありがとなキリト。さすがベータテスター」 

キリト「クラインのスジがいいからだよ。それよりもヨーム、きみの二刀流、良ければ俺に教えて欲しい」 

妖夢「難しいと思いますよ。システムのアシストがあるソードスキルと違って、 
   通常攻撃だけで行う私の二刀流は生半可なシステム外スキルよりも高難度なはずですから」 

キリト「こう見えても剣道の経験があるんだ。もちろん剣術と剣道は違うってわかってるけど」 

妖夢「考えておきます。まずは見て基本動作から盗んでみてください。 
   才能があれば気が向いたら教えてあげてもいいですよ」 

クライン「そろそろ俺は一端抜けるわ。あれ? ログアウトボタンがねえぞ」 

キリト「なんだって?」 

妖夢「……鐘の音が」

●強制転移 

キリト「ここは、はじまりの街の、転移門広場」 

妖夢「変なのが湧いてますよ」 

クライン「宙に浮かぶ赤い顔なしローブ巨人たあ、悪趣味だな」 

茅場『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。私の名は茅場晶彦……』 

妖夢「悪・即・斬!」 

茅場『うわあ、やめてくれたまえ! どうしてレベル一か二でそんな高さまで跳べる!』 

妖夢「なにこいつ。図体ばかりでかくて、弱っちい」 

茅場『システムコマンド、当たり判定透過』 

妖夢「あ〜〜、ずっるーい」

●チュートリアル 

茅場『カクカクシカジカ、プレイヤー諸君の健闘を祈る』 

妖夢「いじわるね茅場って人。せっかく人間になってたのに、本当の姿に戻っちゃった。 
   まあ髪が黒から銀になっただけなんだけど。これは目立っちゃいそうです。 
   うん、半霊まではさすがに再現できないようね」 

クライン「……ヨーム、マジで女の子だったのか。よく見たら妖精みたいで、なんと可憐な」 

妖夢「クラインさん鼻息荒いですよ」 

キリト「ちょっと来い、クライン、ヨーム」

●路地 

キリト「リソースうんたらかんたら、効率なんたらかんたら。だから俺と一緒に来い」 

クライン「すまんが、ダチを置いていけねえ」 

妖夢「クラインさんも一緒ならいいですけど、 
   私は女子なので、殿方とふたりきりというのは、すこし」 

キリト「……そうか。ふたりとも、なにかあったらメッセージ飛ばしてくれ」 

クライン「おうよ、この礼はそのうちな」 

キリト「またなっ」 

クライン「キリトよう、おめえ、案外可愛い顔してやがんな。けっこう好みだぜ」 

キリト「……おまえもその野武士面のほうが、似合ってるよ」 

妖夢「キリトさん。あの——初心者の私が言うのもなんですが、 
   ソロはとても危険らしいので、気をつけてください」 

キリト「ヨームこそ、いくら強いからといって、あまり無理はするなよ。じゃあな」 

クライン「いっちまったな……」 

妖夢「これからどうしましょう」 

クライン「なあヨーム。俺のパーティーに来ねえか?」 

妖夢「そうですね。ほかに知り合いもいませんし、おなじ曲刀使いのよしみで、お世話になります」 

クライン「…………!」 

妖夢「クラインさん、そのガッツポーズ、彼女候補ゲットとか勝手に思ってません? 
   いまがどういう状況か、考えてくださいね。 
   それに先に言っておきますけど、キリトさんのほうが私の好みです」 

クライン「——がっくり」

●四日後・トールバーナの町 

クライン「うひゃあ、こんな早く迷宮区間近に来れるとは」 

妖夢「たぶん一番乗りですね」 

ダチ(アフロ[ピザ])「これもヨームさんが超強いおかげです!」 

ダチ(頭巾ヒゲ)「ありがとう、俺たちの戦乙女!」 

クライン「ようし、このまま迷宮区行ってみよう!」 

全員『おおぅ!』

●半日後 

妖夢「いきなり着いちゃいましたね」 

クライン「まさかこの大扉、ボス部屋かこれ?」 

妖夢「まあいいです。ちょっと遊んでみましょう」 

クライン「危なくなったら即、撤退するからなヨーム」 

妖夢「判っていますよ」

●一〇分後 

イルファング・ザ・コボルトロード「ぐふっ」 

妖夢「なんか倒しちゃいましたね。 
   コボルトロードとかいうの、弱い! 弱すぎる! 手応えがなさすぎます」 

クライン「異次元の戦いを見てしまった。ダメージの八割はヨームだったな。 
     最後のほう、一五連撃くらいしてなかったか?」 

妖夢「さっさと第二層に行ってみましょう。まだまだ斬り足りません。 
   ボスなんてみんな私が切り刻んであげます」

●第二層・主街区ウルバス 

クライン「弱ったな。この層、テーブルマウンテン? みたいなのがいっぱいあって、まるで迷路みてえだ」 

ダチ(トサカ頭)「仲間にベータテスターでもいれば案内役として助かるんでね?」 

妖夢「そうだ、キリトさんを仲間に勧誘しましょう。彼はベータテスターって言ってましたよね」 

クライン「よし、その手で行こう。たぶんレベルも俺たちのほうが上だろうし、誘いやすそうだ」 

妖夢「さっそくフレンドメッセージ送りますね」

●数時間後 

キリト「……すごいなきみたちは。速攻なんてもんじゃないぞコレ」 

クライン「いや、すごいのはヨームだけだな。 
     俺たちほかの六人は剣豪少女のおこぼれに与ってるって情けない立場さ」 

妖夢「キリトさん。ぜひ私たち風林火山に加わってください。この先はあなたの目が必要なんです」 

キリト「俺はきみたちを見捨てた側だぞ。こんな身勝手なソロの俺に関わっても、なんの得も……」 

アスナ「ソロ? 私がいるのに?」 

妖夢「あのキリトさん。隣の綺麗な方は?」 

キリト「ああ、こいつは……」 

アスナ「アスナっていいます。ヨームさんが茅場のあんちくしょうを斬ってくれたおかげで、 
    勇気を分けて貰い、初日からはじまりの街を出発した口よ」 

妖夢「それは、どういたしまして」 

アスナ「その後なりゆきからこの黒い変な人といっしょにいるの。 
    この人とっても便利なナビゲーターよ。一家に一匹欲しいわね」 

キリト「変なのっていうな。一匹っていうな」 

アスナ「とにかく宿屋に引き籠もるより、戦ってるほうがずっと前向きよね。これからの旅、よろしくね」 

妖夢「はい、私もほかに女子がいれば助かります」 

キリト「アスナ、勝手に話を進めるなよ。俺はクラインたちについていくってまだ決めたわけじゃないんだぞ」 

アスナ「でもクラインさんたちの装備、私たちよりずっと立派じゃない。 
    いろいろと効率が良さそうよ。レベルも早く上昇するんじゃない?」 

妖夢「それは正解です。じつは私たちはみんなレベルが八以上あります。 
   一緒にいればアインクラッドでもっともハイレベルな集団でいられますよ。 
   ちなみに私は一一です」 

アスナ「ねっ。私はまだ六、キリトくんも七」 

キリト「よろしくお願いします!」

●およそ四ヶ月後 

茅場「最前線はすでに第五〇層か……およそ二日で一層ずつ攻略されている」 

茅場「台風の目となっているこのYo−muという二刀プレイヤー、 
   一〇連撃、二〇連撃といくらでも攻撃を繋げ、 
   私がデザインしたソードスキルなど眼中にない無双ぶり。一体何者なのだ」 

茅場「このままでは私の計画が大きく狂ってしまう。間に合わない」 

茅場「攻略が早すぎて、自殺もヤケになる者も激減し、死者はわずか八〇〇名しか出ていない。 
   これは予想とおおきくズレている。私の世界はもっと重く、暗くなるはずだったのに。 
   なぜ最前線があれほど和気藹々としているのだ!」 

茅場「仕方ない、そろそろ動くべきだな。私のアバターと、最強の神聖剣を引っ提げて」

●第五〇層ボス攻略戦 

ヒースクリフ「や、やあ。私もボス攻略戦に参加させてくれないか。私の名はヒースクリフ」 

妖夢「この層のボスはクォーターボスでしたっけ。 
   偵察戦によると普通と比べたら超強力でやっかいな相手です。 
   第二五層とおなじく、当たり所が悪ければ一撃で殺されそうな勢いですよ。 
   あなたは初顔さんですよね。レベルは足りていますか?」 

ヒースクリフ「たぶん安全マージンは十分だよ。レベルは六〇くらいかな」 

妖夢「みなさん! 怪しいですこの人!」 

ヒースクリフ「い、言いがかりはよしたまえ」 

妖夢「きっちり安全マージンに足りてる人は、攻略組でも私とキリトさんくらいしかいません。 
   なぜなら攻略速度が早すぎて、みんな攻略戦とレベリング戦闘がほぼ平行作業になってしまい、 
   いつもギリギリだからです」 

クライン「もしかしてこのヒョロいの、ヨームが出現を予想してた、あいつか?」 

キリト「みんな、このヒースクリフというプレイヤーを、捕まえるんだ!」 

ヒースクリフ「うわなにをするやめr」 

キリト「あっ、消えた。転移結晶も使わずに。しかもGMしか使えない左手メニュー!」 

妖夢「このチート行為で確定ですね。いまの人が、まちがいなく茅場晶彦です」 

アスナ「さすがに鋭いわねヨームちゃん」 

妖夢「簡単に予見できることですよ。茅場晶彦がただ傍観者で満足できているはずがないんです。 
   私がよくいく幻想きょ……もとい学校でも、なにか異変あらば、 
   首謀者はおろか黒幕も一緒に混じって遊んでるんですよ」 

クライン「相当に面白い学校に通ってんだなおめえ。私立か?」 

妖夢「ディアベルさん、指名手配のほう、お願いします」 

ディアベル「よし任せろ! キバオウさん、茅場捜索は頼んだ」 

キバオウ「なんでや! 丸投げやん。わいも攻略戦に出たいんや!」 

クライン「キバオウは、レベルがちいっと足りねえな」 

キリト「今回ばかりはレベル四〇台では命がいくつあってもな」 

キバオウ「仕方あらへん。ならヒースクリフはわいの手で絶対に捕まえてみせたる! 
     来いやコーバッツ少佐」 

コーバッツ「ありえない……攻略戦に出れば、経験値がっぽりなのに」 

キバオウ「面倒くさいやっちゃな。よし、コーバッツはん。 
     ジブンいまから解放軍の中佐に昇進や。これでええやろ」 

コーバッツ「不詳コーバッツ中佐、ありがたく任務に精励します! 
      キバオウ中将閣下バンザイ!」 

キバオウ「茅場を捕まえたら、わいも大将に昇進やな。ほなら、行くで!」

●現実 

茅場「……私の世界なのに、完全に追い出されてしまった。 
   ほかのアバターで行っても性格までは隠せない。似たような対応が待っていそうで怖いな」 

茅場「このままでは、私のシナリオはメチャクチャだ。どうしよう。 
   こうなったらせめて、Yo−muの正体だけでも突き止めなければ」 

●日本某所 

茅場「彼女のIPからすると、この辺りのはずなのだが」 

茅場「なんだろう、この古ぼけた、朽ち果てかけた神社は」 

茅場「歩き通しで疲れたな。すこし裏の縁側で眠らせてもらおうか」

●数時間後 

霊夢「あんた誰? あまり強そうに見えないわね」 

茅場「ワキを露出した謎の巫女だと? それに神社がすっかり綺麗になっている」 

霊夢「ああ、幻想入りね」 

茅場「幻想入り?」 

霊夢「あなた、外の世界で忘れ去られた人か、逃げだしたいと思ってた口でしょう」 

茅場「…………」 

霊夢「ここは幻想郷。外の世界で幻想になった人や、 
   人間でないなにかが訪れる、いわゆる異世界よ」 

茅場「い、異世界だと……まさかそのようなものが実在するとは」 

霊夢「とりあえずあんたのことは後で紫(ゆかり)に相談するとして、いまはこれ」 

茅場「ホウキ?」 

霊夢「働かざる者、食うべからず。 
   私はいまからこたつで昼寝するから、境内の掃除のほうよろしくね」 

茅場「この私に、単純労働をしろというのかね。それよりも幻想郷とやらについて詳しく」 

霊夢「煩いわね。あなたが外でどんな立場だったかなんて興味ないわ。 
   幻想郷に来たのなら、とりあえず郷に従いなさい」

●その夜 

紫「霊夢、結界を勝手に緩めないでよ。なんの用?」 

霊夢「おかしなおっさんが幻想入りしたのよ。屁理屈ばっかこねて鬱陶しいから、引き取って」 

茅場「……ひどい巫女だ。晩飯の用意までさせられるとは」 

紫「あらあなた、妖夢を閉じ込めた張本人じゃない。 
  妖夢を解放するくらい私の能力なら簡単だけど、面白そうだから様子見してたら、 
  あなたのほうから自力で幻想入りしてくるなんて……さすがは世紀の大天才といったところかしら」 

霊夢「大天才? この胡散臭い屁理屈おっさんが?」 

茅場「私はこう見えても二〇代なんだが」 

霊夢「それならもっとそれらしい言動しなさいよ。 
   あまりに落ち着いてそんな肉のこけた頬をしてるから、 
   てっきり三五歳くらいの虚弱体質って思ってたわよ私」 

茅場「……きみは見も知らぬ虚弱な中年へいきなり雑用を押しつけるのかね」 

紫「天下の茅場晶彦も博麗の巫女を前にすれば形無しね」

●冥界・白玉楼 

茅場「ここは? ずいぶんと閑かな場所だが」 

紫「死後の世界のひとつよ」 

茅場「死後だと! ……幻想郷とは、また違うのか」 

紫「ええ。あなたが欲していた異世界というものは、いくらでもあるわ。 
  この日本と関係しているものだけでも、幻想郷にはじまり、 
  仙界・天界・極楽・冥界・黄泉・地獄・魔界・妖精界・月都などもろもろ。 
  世界に目を広げれば、それこそたくさんね。私も実数なんて把握できないほどよ」 

茅場「私はいったい、なにをしてきたのだ。ソードアート・オンラインを作って、 
   デスゲームを演出し、世界を創ったと豪語していたのは、ただのまやかしだったのか」 

紫「あなたの事情なんかどうでもいいわ。さあ、彼女があなたの探していた妖夢よ。 
  ちなみに顕界との接続は私の能力にあの霊夢の力をプラスしてるわ」 

茅場「……新手の虐待かね。顔中に心ない落書きがしてあるんだが。美人が台無しだろうに」 

幽々子「だって、妖夢が眠りっぱなしでおやつを買ってきてくれないから〜〜。お腹すいた〜〜」 

紫「あなたキャラ崩壊してるわよ」 

幽々子「うらめしやー」 

茅場「人魂? 亡霊? そういえば妖夢といったかな、この子も傍らにおおきな人魂が」 

幽々子「私はご明察のとおり亡霊だけれど、妖夢は半人半霊、妖怪よ。 
    半分生きていて、半分死んでるわ。そういう種族なの」 

茅場「……まさか異界の人にあらざる住人が、私のゲームをプレイしていたとは。 
   世の真実は近くにあったのか」 

幽々子「純粋な剣士である妖夢にとって、剣一本で戦うあなたの世界こそ、 
    長年ずっと追い求めるものだったのよ。誇りなさい茅場晶彦。 
    あなたは人間でない本物の異相たる存在を、ここまで魅了するほどの世界を、 
    たとえ仮初めであったとしても創り出すことに成功したのだから」 

茅場「なるほど、私はそういう意味では、夢を具現したといえるのか」 

紫「ではそろそろ帰りましょうか。茅場晶彦、あなたはまだ、顕界ですべきことがあるわよね」 

茅場「ああ。私にはやるべきことがある。だがひとつだけ、力を貸して欲しい」 

紫「なにかしら」 

茅場「このままでは攻略が早すぎて、私の準備が間に合わない。その手伝いをしてもらいたい」 

紫「それで私になんの得があるの?」 

茅場「世界を変革するささやかな可能性のスタートに、 
   立ち合える——歴史の目撃者ではなく、当事者として」 

紫「面白そうね。暇だし、ここは乗ってあげてもいいわよ」

●およそ四ヶ月後 

妖夢「いよいよ第一〇〇層ね」 

キリト「長いようで早かったな。これもみんな、ヨームやクラインのおかげだ。 
    あのとき俺を誘ってくれてありがとう」 

クライン「キリトこそすげえよ。二刀流なんてユニークスキルをゲットしてよう。 
     スターバースト・ストリームやジ・イクリプスのおかげで、 
     八〇層からこちら、楽させてもらったぜ」 

妖夢「元祖二刀流といっても私のはシステム外のソードスキルレスですから、 
   いまとなっては瞬間火力面でキリトさんには叶いません」 

キリト「いや違う。なにもかも、ヨームが起点だった。 
    きみの頑張りがみんなをわずか八ヶ月で頂上まで導いてくれたんだ。 
    やっかいなクォーターボスも第二五層はふいを付かれたが、 
    五〇層でも七五層でも死者が出なかったのは、すべて君が起こした奇跡さ。 
    俺の二刀流スキルなんか、飾りだよ」 

アスナ「キリトくん、ヨームちゃん。はやく来てよ。 
    二七連撃と三三連撃の主役がいないと始まらないじゃない」 

妖夢「あ、すいませんアスナさん」 

キリト「いま行く」 

エギル「よーし。ユニークスキル持ちが揃ったぞ」 

アスナ「まさか最後の関門が、ユニークスキル持ちが揃わないと開かないなんて、変なカラクリね」 

クライン「こうして並んでみると壮観だな。まずキリトの直剣による二刀流、 
     俺のカタナによる抜刀術、アスナの細剣による閃光剣、エギルの大斧による旋風斧、 
     シュミットの突撃槍による無限槍、シリカの短剣による千手剣、 
     リズベットの戦鎚による雷神鎚、アルゴの投剣による手裏剣術 
     ……最後に、クラディールの大剣による暗黒剣」 

クラディール「みなさんと違って、爆発的な攻撃翌力と引き替えに自分のHPを削りながら戦う暗黒剣 
       ……デスゲームなので、あまりにも使えない」 

ディアベル「それでもうらやましい。俺もユニークスキル欲しかった」 

妖夢「私もユニークスキルは運悪く得られませんでしたけど、 
   得たとしても曲刀二本では使えないので、けっきょく変わりませんね」 

クライン「わりいなヨーム。曲刀系のユニークが、まさか上位レアスキルのカタナにしかなかったなんて、 
     俺も意外だった。不人気カテゴリーは辛いな」 

妖夢「気にしないでください。両手武器のカタナスキルだと本格的に一本しか持てませんから、 
   二刀流を守りたい私としては片手用曲刀のままじゃないと都合がつかなかったんですよ」

アルゴ「本当に運ダナ。まさかのユニークスキルが出たトキ、オイラは心底びっくりしたヨ」 

シリカ「すいません私みたいなのがユニーク持ちで……ヒロイン補正だと思います」 

リズベット「私も驚きだわ。ま、投剣や短剣や戦鎚は使用プレイヤーが少ないぶん、競争率も低いってものよ」 

ディアベル「片手用直剣はユーザーが三〇〇〇人はいるから、競争率高すぎたんだよなあ……二刀流」 

キリト「じつはディアベル、二刀流は片手用直剣専用じゃないんだ」 

ディアベル「なんだって?」 

キリト「このスキルだが、片手用の武器であればなんでも有効なんだよ。 
    二刀流だけ出現が早かったし、武器種に依存しない謎スキル。つまり——」 

ディアベル「片手用直剣専用の、ユニークスキルがまだ残ってるというのか」 

キリト「ああ。俺が思うにおそらく、あの某ヒースクリフが怪しい。 
    判明しているユニークスキルが九種類というのも、数としては中途半端だろう」 

キバオウ「なんやと! あれかいな、わいらがずっと探しとった茅場のおっさんは、 
     こん大扉の向こうに未知のユニークスキル隠してふんぞり返っとるわけかい。 
     コーバッツ上級大将、捕縛の用意はええか?」 

コーバッツ「万端です! キバオウ大元帥閣下、 
      我々の永きに渡った捜索の日々も、ここで終わるというものなんですね」 

妖夢「語っていても仕方ないです。行きましょう——開ければ、なにもかもが、わかります。 
   私もたぶん、最後のボスは茅場だと思っています」 

ディアベル「よし、みんな行こう! そして勝つんだ!」 

全員『おおぅ』

●第一〇〇層・紅玉宮最奥 

ヒースクリフ「待っていたぞ諸君……って、すごい人数だな」 

妖夢「攻略組、三レイド、一四〇人よ」 

ヒースクリフ「たしかにこの大所帯で戦っていれば、ほとんど人死には出そうにないな」 

キリト「久しぶりだな。覚悟、茅場晶彦!」 

ヒースクリフ「さて、大勢で乗り込んできたところ悪いが、 
       この深紅に染められた空間は見ての通り局所的な圏内で、 
       私もシステム上、一般プレイヤー扱いだ」 

キリト「…………」 

ヒースクリフ「つまり私を倒す手段はデュエルモードしかなく、 
       同時に戦うことが許される人数は、わずか一人でしかない」 

ディアベル「なんだと! 俺の絶対無敵なゴルディオンハンマー戦術が使えない!」 

ヒースクリフ「本来なら全プレイヤー中で最大の反応速度を持ち、勇者の役割を担ったキリトくん、 
       きみが魔王たる私の相手となるはずだったのだが、 
       あえて私が描いたシナリオ外の相手で決着を付けさせてもらおう——妖夢くん」 

キリト「ヨウム? ヨームじゃないのか」 

妖夢「……あなた、私の正体を知ってるのね」 

ヒースクリフ「ああ。よく知っているとも。白玉楼の防人、幻想郷最強の女流剣士、魂魄妖夢くん」 

クライン「おいてめえ! リアルばらしは最大のマナー違反だぞ! 
     ……メモメモ、コンパクヨウムちゃん」 

妖夢「ク、クラインさん?」 

クライン「リアルに戻ったとき、名前を知っておかねえと、会えないだろうがよ」 

妖夢「まったくもう……勝手な人ですね」 

クライン「ぶっちゃけるとヨームよう。俺、おめえがマジで好きだわ」 

妖夢「なっ! ななな、いきなり告白ですか?」 

クライン「だってよう、ゲームクリアしちまったら、離れちまうからな」 

妖夢「——そうですね。あの、告白してくださって、ありがとうございます。 
   前向きに検討したいと思います。真剣に」 

クライン「えっ? それってまさか……」 

妖夢「でもその前に、茅場を倒さないといけませんね」

アスナ「そうか! この戦いが終われば私たちは……キリトくん!」 

キリト「アスナ?」 

アスナ「私、あなたが好きよ。後悔したくないの」 

キリト「……お、おうっ」 

シリカ「いけない! ここは自己主張しないと。私もキリトさんが好きです」 

リズベット「私もよ! 私もキリトが、好きー!」 

アルゴ「オレっちもキー坊のことが、お金の次くらいに好きダヨ」 

クライン「おいおいキリトのやつ、突発的にすげえモテっぷりだな」 

キリト「みんなごめん。好意はありがたいけど、俺の体はひとつしかないんだ。 
    俺は……俺は、アスナと付き合いたい」 

妖夢「じつは私も最初、キリトさんのことが好きだったんですけどね」 

クライン「なんとぉ? いや待てよ、最初ってこたぁ……」 

妖夢「アスナさんが相手じゃ分が悪すぎるって思って、自分で勝手に失恋してました。 
   予定調和になってくれて安心してます。お幸せにキリトさん、アスナさん!」 

アスナ「ありがとうヨームちゃん。ねえキリトくん、この戦いが終わったら、第二二層に家を買いましょう」 

キリト「それもいいな……でもたぶん、あの男を倒したらこの世界とはもうおさらばじゃないかな」 

アスナ「残念ね……なら、リアルで会いましょう」 

キリト「ああ。会おう、アスナ。あ、これ俺のリアルネームと住所」 

アスナ「私はこれよ。覚えてね」 

妖夢「いいなあ。カップルいいなあ」 

クライン「なあヨーム、返事をな」 

妖夢「およっ? クラインさん、ずいぶん急かすんですね」 

ヒースクリフ「そろそろ本番に入っていいかね、妖夢くん」 

妖夢「やはり私を指名するんですか。わかりました。ちゃっちゃと終わらせましょう」 

クライン「茅場ぁ! なんでそこで止めやがるー!」

ヒースクリフ「公平を期するため、諸君らに私だけが持つ、 
       最初にして最後のユニークスキルを教えておこう。神聖剣という」 

妖夢「なんですか、その大袈裟な名前。茅場さん、ずいぶん歳を食った中学生なんですね」 

ヒースクリフ「くっ……このし——ごにょにょ剣は、片手用直剣と大盾の合体スキルで、 
       全スキル中、最大の防御力を誇っている。一方で攻撃性能は普通だ。 
       ほかの九種類がすべて攻撃翌力に特化しているのと、正反対の属性といえるだろう」 

妖夢「さすがフェアネスを貫き通したGMの鑑ね。情報開示ありがとう。そこだけは認めてあげるわ」 

ヒースクリフ「なお私のレベルはきみと同じ一〇八としている。それは済まないが演出上、了承してもらいたい」 

妖夢「私が八ヶ月戦い続けて到達した高みを、データ操作一発とは、さすがにチートすぎますよ。 
   でも仕方ないわね。そうでもしないと最低限の勝負にすらならないもの。 
   一〇八か——奇しくも煩悩を示す数字とは、未熟な私らしくもあるわ」 

ヒースクリフ「それではデュエルだ。モードは——」 

妖夢「もちろん、完全決着モード!」 

ヒースクリフ「ためらいもしないのだな。さすが冥府の守護。 
       それでこそこの戦いも盛り上がるというものだ」 

妖夢「私はこの世界で唯一、正真正銘、本物の剣士。あなたの命を奪うことに、なんの感情もないわよ」 

キリト「いよいよ始まるのか。最後の戦いが」 

アスナ「大丈夫よキリトくん。ヨームちゃんは最強なんだから」 

クライン「うお〜〜、ヨームの返事が気になってラストバトル観戦どころじゃねー!」 

ヒースクリフ「それでは——行くぞっ!」 

妖夢「盾ですか。折伏無間! なに、弾かれた?」 

ヒースクリフ「……ほう。まさか攻撃判定のある特殊盾を大胆に掴もうとするとは。だがまだまだぁ」 

妖夢「甘い! 炯眼剣!」 

ヒースクリフ「剣術で当て身技だと? ぐおぉ!」 

妖夢「生死流転斬! あなたていどのド素人剣術なんて、どれほどチートなスキルに頼ろうとも、 
   私の敵じゃない! キリトさんのほうがまだ強いわ。円心流転斬!」 

アスナ「ヨームちゃんが珍しく技名を叫んでいるわ。よほどノッてるのね」 

キリト「システムが用意した最強の攻撃スキルを持つ俺ですら、 
    ヨーム相手には最長三〇秒しか持たないからな。相手が悪すぎる」 

妖夢「最後は未来永劫斬! ——はい、いっちょあがり。HPバー、削りきったわよ」 

ヒースクリフ「……ああ、終わった。これでやっと、私の世界も次の役割へと向けられる」 

妖夢「なにそれ? ちょっと、なに深そうなことつぶやいてるんです——」 

システムアナウンス『七月七日七時七分、ゲームはクリアされました。ゲームはクリアされました……』 

妖夢「おー、七並び。これは吉兆だわ」 

クライン「待ってくれ〜〜! ヨーォォォォム!」

●黄昏の空間 

妖夢「あれ? ここはどこ? あ、まさかあれ、アインクラッドじゃない? 無音で崩壊してる……」 

妖夢「…………」 

妖夢「……意外と綺麗な光景ね」 

妖夢「…………」 

茅場「やあ、魂魄妖夢くん。待たせたね」 

妖夢「あなたは——茅場晶彦の、リアルの姿です? 
   城はどうなっているんですか? あそこにいた人たちは?」 

茅場「これはデータ消去の演出だよ。安心したまえ、あそこにいた生存者は、 
   全員すでにログアウトを終えた。私ときみ、キリトくんにアスナくんを除いてね」 

妖夢「キリトさんとアスナさんは?」 

茅場「正規の勇者にはすでに会ってきたよ。 
   あの城が崩壊し終わったら、自動的にログアウトするよう設定してきた」 

妖夢「どうして一〇〇〇人近くも死ぬような大異変をしでかしたのですか」 

茅場「そうだな。いつしか叶えるよりも行動することが目的となってしまい、 
   あまり深く考えたことはなかったのだが、妄想に取り憑かれたから、かな。空に浮かぶ鋼鉄の城の」 

妖夢「……あなたが作りたかったものって、本物の異世界ですよね。 
   だから私たちの顔や姿を元に戻し、死んだら本当に終わるゲームを演出したのでしょう」 

茅場「ああそうだ。だが私は幻想郷の巫女や、冥界で眠るきみを知ってしまった。 
   本当の世界とは、静謐で穏やかなものだった。 
   私のやってきたことはなんだったのだろうと、考えるようになったのだよ」 

妖夢「答えは出ましたか」 

茅場「それはこれから、電脳の情報網が出す。答えを求めるための種を世界へと蒔こうと思う。 
   私の知識や意識という、見えざる種を。何十年かすれば、きっと世界の仕組みは変わっているだろう」 

妖夢「……あなた、死ぬ気ね」

茅場「元々このデスゲームをはじめたときから、生き長らえようなんて甘いことは、 
   カケラも思っていなかったさ。ひとつ礼を言おう、妖夢くん」 

妖夢「なんでしょう」 

茅場「君のおかげでこのソードアート・オンラインは、ひとつの異世界として完結できた。 
   私の用意していた、ありきたりでくだらないヒロイックファインタジーのシナリオより、 
   よほどエキサイティングだったよ。可能性を見せてくれて、ありがとう」 

妖夢「最後まで自分勝手な人ですね。私にその礼を受けるいわれはないわ。 
   勝手にお逝きなさい。私はこれからも冥界に住んでいますが、 
   私が存命中にあなたと会うことはないでしょう」 

茅場「夢は果たされた。私は地獄行きなど、これっぽっちも怖れはしないよ。 
   まもなくデータの完全消去が終わる。では、そろそろ行くよ」 

妖夢「消えた……知らないって幸せね。予言してもいいですけど、あなた多分、 
   年甲斐もなく泣き喚くことになるわよ。あ、聞こえてないか」

●冥界・白玉楼 

妖夢「おはよう、ただいまー!」 

幽々子「おかえりなさい。どうだった?」 

妖夢「なかなかに楽しい休暇でした幽々子さま。 
   八ヶ月か——ちょっと長くなりましたね。お勤め、頑張って取り戻します!」 

幽々子「そのまえに、顔を洗いましょうね。うふふふふ」 

妖夢「え? ——鏡、鏡……きゃー! ゆ、幽々子さまヒドいですー!」

●閻魔裁判の間 

映姫「次の魂は……茅場晶彦ね」 

茅場「閻魔は人材不足なのか? こんな子供がやってるなんて」 

映姫「うるさいわねあなた。順番待ちの列ですでにブツブツ聞こえていたわよ。 
   すこしはお黙りなさい。人間が増えすぎて十王様方だけではまったく捌ききれないのよ。 
   私は幻想郷と、顕界でこの一帯を担当してるわ」 

茅場「幻想郷——なるほど、だからあの紫くんは、私に潜伏場所を変えさせたのか」 

映姫「部外者なのに八雲紫を知ってるの? 面倒な子が来たものね。ええっと、 
   罪状は自殺と……一万人もの拘束監禁! さらに大量殺人? 一〇〇〇人近くとは、たまげたわ! 
   私の受け持ちでこれほどの大悪党を見るなんて、戦国時代以来よ」 

茅場「たしか紫くんまたは藍(らん)くんから一筆、書状が届いてるはずだが」 

映姫「……ああ、これね。読むわよ。 
  『茅場晶彦の大脳新皮質の完全スキャンは成功の模様。 
   コピーされた意識群のうち、ひとつを複製回収。新世紀の式神として、幻想郷のために使役予定。 
   ネットに散らばったデータにも刺激を与えているので、覚醒は早いだろう。 
   代償として死亡したあなたは地獄で安心して大人しく服役なさい』 
   だそうよ。私には半分くらいしか判らないわね」 

茅場「そうか、無事に成功したか。あの八雲藍くんという式神の仕事は確かだったな。 
   まだ半年以上かかったであろう装置の調整と完成を、たった二ヶ月に短縮するとは。 
   さすが異界の生き物は、たとえ狐であろうとも格がちがうな」 

映姫「とりあえず白黒付けずともあなたの地獄行きは確定よ。落ちる先はもちろん、 
   最大の苦痛を受ける阿鼻叫喚の無間地獄ね。服役期間は——二〇万年ほどかしら」

茅場「にっ、にじゅうまん? ちょっ、ちょっと待ってくれないか。 
   そんな長い間、私はずっと筆舌の苦しみを味わうのか?」 

映姫「仕方ないじゃない、あなたは平和国家日本にあるまじき無差別大量殺戮者なんだから。 
   これが戦乱の世なら数千年で済んだでしょうに……」 

茅場「差が開きすぎているだろう! どういう理屈なのか、教えてくれないか」 

映姫「現代の日本がなまじ史上かつ世界最高の安全な治安国家なものだから、 
   情状酌量の余地どころか凶悪犯罪の懲役乗算倍率レートがすごいことになってるのよ」 

茅場「理解しがたい」 

映姫「世に範を示すため、霊界にも戒めが必要なの。 
   八〇年近くもつづく類を見ない安寧の平時にあえてこのような大乱を起こすことが、 
   日本の歴史にどれだけの濃い影を落とす、罪深いことかおわかり? 
   あなたの悪影響はおそらく、世紀単位で波及するわよ」 

茅場「私はただ、自分の想い描いた夢想を実現するために……」 

映姫「だまらっしゃい狂人さん。あなたなんてまだまだ小物よ。 
   前世紀派手に暴れた某ヒットラーなんか聞いた話、刑期は五千万年らしいわよ。 
   乱世の時代で五千万だから、いま同じことをすれば数億年となるでしょうね。 
   まあ、あなたがこれから落ちる仏教の地獄とは別の、キリスト教系の地獄なんだけどね」 

茅場「私は仏教徒ではない。裁判のやりなおしを要求したいのだが、どこに申請すればいいのかね」 

映姫「とにかくこれがあなたに積める唯一の善行なのよ。それではさよなら茅場さん」 

茅場「お、おかあさ〜〜ん!」

●埼玉県某所 

明日奈「和人くん、最近ネットでなにを熱心に調べてるの?」 

和人「いくら調べても出ないんだよなあ明日奈……ヨームの二刀流らしき流派。 
   ヨームのやつ、ついに教えてくれなかったんだよ。見つけ次第、リアルで入門したい。 
   あれを覚えれば、まもなくサービス開始となるALOで俺は最強になれる!」 

明日奈「ヨームちゃん、また会えるといいわね」 

和人「俺がキリトとしている限り、きっと会えそうな気がする。ALOでなら」 

明日奈「でもそれって、ヨームちゃんがいる限り、和人くんは永久に最強になれないってことよ?」 

和人「あ〜〜、……ま、いいか。ヨームの後塵を拝するくらい、 
   どうってことない。会える嬉しさのほうが、ずっと上だ」 

明日奈「私もおなじよ、和人くん」

●ダイシー・カフェ 

壷井「コンパクヨウムちゃん、どこにいんだよう。俺のスイートハート」 

ミルズ「クライン、大の男が昼間から呑むな喚くな泣くな。 
    あの子にまた会いたいなら、このゲームで待ってるんだな」 

壷井「なんだいこりゃ、エギル。アルフヘイン?」 

ミルズ「アルヴヘイム・オンラインと読む。通称はALO。 
    SAOサバイバーが千人単位で正式サービス開始を待ちわびている。 
    いくら半年以上閉じ込められたからといっても、あの日々を忘れるなんて出来やしないさ。 
    俺たち、もう知ってしまったんだからな」 

壷井「そうか……そうだよな。よっしゃ、今度こそ俺は男を上げるぜ、エギルよう。 
   目指すはヨームの横に並んでも遜色ない、最強の魔法戦士だ」 

ミルズ「無謀な挑戦の前に警告しておいてやる。 
    おまえさんより強かったキリトとアスナも、ALOをプレイするそうだぞ」 

壷井「リ、リア充は爆発してろぉ!」 

ミルズ「なに言ってんだか。おまえさんも無事再会したら、勝負駆けが待ってるだろ」 

壺井「おうよ。待ってろよヨーム!」

●博麗神社 

魔翌理沙「久しぶりだな妖夢! もう当たり前に動けるのか」 

妖夢「ええ。妖怪だからか、リハビリは不要でしたよ」 

魔翌理沙「いくらデスゲームといってもおまえのことだから、SAOは面白かっただろう?」 

妖夢「剣で暴れまくってさっぱりしてきました。恋も経験できたし、なかなか充実の日々でした」 

魔翌理沙「恋だと! それは聞き捨てならねえなあ。そこんとこ、詳しく教えてくれよ」 

霊夢「そんなことより妖夢、神社に来るなら酒くらい持ってきなさい」 

妖夢「まったく霊夢さんはまるで変わりませんね」 

魔翌理沙「そうだ。妖夢の用事ってなんだ?」 

妖夢「ああ、じつは面白いゲームがまもなく発売されるそうなんですよ。 
   ALO、アルヴヘイム・オンライン——妖精の国っていいます」 

魔翌理沙「ソードアート・オンラインとは別物か?」 

妖夢「ええ。このゲームですが、魔法を使えるのはもちろん、空を自由に飛べるらしいですよ。 
   それも、とんでもない広さだそうです」 

魔翌理沙「おおっ。SAOは剣だけなんで敬遠したが、ALOは楽しそうだぜ。よし、さっそく手配しないとな」 

霊夢「まさか妖夢、また結界に小さな穴を開けて回線を提供してくれって言うつもりじゃ」 

妖夢「霊夢さんのぶんは幽々子さまと紫さまが費用を捻出してくださるそうですよ」 

霊夢「よし、がんばって遊ぶわよ! 幻想郷は飛び回るには狭すぎるのよ。 
   たまには外界のゲームで息抜きしないとね! いまから前祝い酒よ!」 

魔翌理沙「タダとなると俄然乗り気だな霊夢。酒盛りとなれば、私も付き合うぜ」 

妖夢「私も今度こそ楽しく遊びたいです。クラインさん、また会いたいなあ——あ、一杯ください」 

魔翌理沙「まだ酒が入ってないのに、頬が赤いぜ妖夢」

※続けてALO編 主人公はチルノ

●霧雨魔法店 

チルノ「アルヴヘイム・オンラインであたい最強! 
    天才のあたいが来てやったからには、もう勝利は確定だよ!」 

魔翌理沙「よう、待ってたぜチルノ。ほらこいつを被って、設定するぞ」 

チルノ「おー、これが噂の妖精王国!」 

魔翌理沙「アミュスフィアのユーザー名はCirnoっと。おいチルノ、 
    キャラクター名もおなじにしとけよ。名前が分かってないと連絡が取れないからな。 
    システムがユーザーネームと被るって注意してきたら正解だぜ」 

チルノ「わかったー」 

魔翌理沙「『リンク・スタート』と言って、あとは適当に設定したらゲーム開始だぜ。 
    それじゃ、向こうで落ち合おうな」 

チルノ「リンク・スタート!」

●エントリー 

システム『アルヴヘイム・オンラインへようこそ——キャラクター名を入力してください』 

チルノ「名前〜? ち、ち……魔翌理沙が同じにしろって言ってたな。 
    えーと、あたいの綴り綴り、あ、この左上のか! C・i・r・n・o」 

システム『ゲーム機本体のユーザーネームとおなじですが、宜しいでしょうか』 

チルノ「あたいったら天才ね」 

システム『種族を決めましょう』 

チルノ「氷、氷、水……ウンディーネ!」

●ウンディーネ領ホームタウン 

チルノ「あたい降臨!」 

チルノ「お〜〜、みんな青い髪、青い目、青い翼! ウンディーネ!」 

チルノ「容姿ランダムって言ってたけど、あたいはどんな姿かな? 
    大ちゃんみたいに胸が欲しい♪」 

チルノ「あ、この建物の壁、あたいが写ってる!」 

チルノ「…………」 

チルノ「なんであたいが、そのまんまいるの?」 

チルノ「メッセージ? ——M・a・r・i・s・a、魔翌理沙だ!」 

魔翌理沙『姿いっしょで驚いただろ? そいつはゲーム機に因幡てゐの幸運能力を掛けてるからだぜ』 

チルノ「そーなの? ……返事、返事」 

チルノ『まりさ とこにいる』 

魔翌理沙『世界樹のふもとにいる。 
    とてつもなくでっかい木まで飛んでこい。おまえなら簡単なはずだ』 

チルノ『わかつた せかいしゆにいく』 

チルノ「でっかい木、でっかい木……分かんない。やい、そこの青びょうたん」 

ディアベル「ん? おお、これは見たこともないほど小さなアバターだな。 
      珍しい。初期装備か。ゲームをはじめたばかりかい?」 

チルノ「世界樹ってどこ? 行きたいの」 

ディアベル「いきなりレネゲイドにでもなる気か。俺としてはあまりお奨めできないね」 

チルノ「レネゲイドって美味しい? じゃなくて、どこにあるのかな? 世界樹」 

ディアベル「そりゃあ、あちらにまっすぐ飛んでいけば、 
      ぶっとうし丸一日くらいで着くだろうけど」 

チルノ「ありがと。じゃああたい、行くね」 

ディアベル「ちょっと待てよきみ。一人だと危ないぞ」 

チルノ「うん?」 

ディアベル「ここはMMO歴の長い俺がレクチャーしてあげよう。 
      こう見えても一週間後に迫ってる選挙で領主候補の筆頭なんだ。 
      顔が広いから、いくらでも仲間を紹介してあげられる」 

チルノ「いい。魔翌理沙と会う約束が先だ——飛翔!」 

ディアベル「んなっ! 補助コントローラーもなしに、なんだあの速度は! 
      初心者の随意飛行じゃないぞ。もう見えなくなった」 

ディアベル「そういえば、最初から猛烈な速さで飛ぶプレイヤーが何人かいるって噂があったな。 
      仮の名はセブンセンシズ・ガール。その一人がたしか……マリサ」

●虹の谷 

チルノ「なんで山より高く飛べないのかな」 

チルノ「ときどき勝手に地面へ降ろされるの、うっとーしー!」 

チルノ「あ、ここだけ山が低い。なんか出た……『虹の谷』? ここを抜ければ、世界樹だな」 

チルノ「変な空飛ぶモンスターが出た! あたいの魔法を食らってみろ! パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「…………」 

チルノ「あれれ?」 

チルノ「いやー! 来るなー!」 

チルノ「はあはあ、死ぬかと思った。魔法が使えないんじゃ、 
    いくらあたいが天才でも最強になれない。こうなったら、聞くは一時の恥ね」 

チルノ『まほうつかえない おしえろ ぱあふえくとふりいす』 

魔翌理沙『ごにょごにょごにょごにょ。この呪文を唱えて、最後にパーフェクトフリーズとでも叫べ』 

チルノ「よし、リベンジだ」 

チルノ「ごにょごにょ、おー、謎の魔法陣だ。パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「なんか効果が違う気もするけど、効いた! ごにょごにょ、パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「倒した! わっはっは、無敵だ。あたい天才!」 

チルノ「パーフェクトフリーズ! パーフェクトフリーズ! あたい最強!」 

チルノ「——うわーん! 魔法力尽きたー! 逃げるー!」

●央都アルン(世界樹のふもと) 

魔翌理沙「たった三時間で辿り着くとは、さすが生粋の妖精……もとい、天才だな。 
    私でも五時間近くかかったのに。やはりおまえをパートナーに選んで正解だったようだぜ」 

チルノ「……パーフェクトフリーズ、連続で八回しか使えない。 
    三〇分くらいで回復するけど、遅い!」 

魔翌理沙「そりゃ熟練度の低いうちは初期魔法でもMP消費が激しいからなあ。 
    武器も使えないと、ALOは戦えないぜ」 

チルノ「武器? あたいが使ってる、氷の剣の魔法はないの?」 

魔翌理沙「そういうのはかなり魔法スキルをあげないと無理だ。ここは幻想郷じゃないからな」 

チルノ「不便!」 

魔翌理沙「むくれるな。でもチルノ、楽しかっただろ」 

チルノ「うん楽しい。アルヴヘイム、幻想郷よりずっとず〜〜っと広い。 
    こんなに長くまっすぐ飛んでいられたの、はじめてだ」 

魔翌理沙「だからここは戦ってスキルを強くして、もっとどこにでも飛んで行けるようになろうな」 

チルノ「あたいに任せろ!」

●三〇分後 

チルノ「飽きた」 

魔翌理沙「早っ」 

チルノ「敵を探して、見つけて、剣や魔法で倒すだけ。単純なことの繰り返し、つまんない」 

魔翌理沙「仕方ないなあ。じゃあスキマから預かったこいつでも付けてやる。 
    私はもう一人でも大丈夫だしな。お友達がいれば退屈しないだろう」 

チルノ「なにこの白くて小さくて可愛いの!」 

ユイ「八雲結(やくもゆい)といいます。 
   このゲームではプライベート用のナビゲーション・ピクシーとなっていますが、 
   本来はあなたと同じくらいの大きさなんですよ」 

チルノ「やくもゆいちゃんは、あたいみたいに天才?」 

ユイ「お役に立てると思います。ただユイと、呼んでください。チルノさん」 

チルノ「よろしくな!」

●サラマンダー領ホームタウン・首都ガタン 

クライン「領主やめるって、本当かよレイム」 

霊夢「好きでやってるんじゃないわよ。見目が良くて強いからって変な理由で、 
   勝手に人気投票で赤トカゲの頭目にさせられたんだから」 

クライン「でも初代領主がわずか二週間で辞任って、 
     補佐役の俺としても、ようやく馴れてきたのによう」 

霊夢「私はね、央都アルンですることがあるの。 
   こんな博麗の巫女みたいな面倒なこと、現実だけで結構よ」 

クライン「てことは、世界樹に行くつもりかレイム」 

霊夢「グランド・クエストとかいうのを平らげて、 
   世界樹のてっぺんにいる妖精王オベイロンに謁見して、限定解除でいくらでも飛ぶ!」 

クライン「サービス開始一ヶ月半でグランド・クエストに挑戦? 
     いくらなんでも早すぎると思うぞおい。クエストが実装されたのも、たった一週間前だろ」 

霊夢「先行した魔翌理沙とチルノがエンシェント級の装備でガッチリ固めたって聞いたのよ。 
   三週間しか遊んでないチルノが、武器防具でもう私を追い抜いたって、我慢できないわ。 
   アルン周辺でないと手に入らないものがたくさんあるわけ。あんたも来なさい」 

クライン「うへえ。領主と補佐役が揃って消えると、サラマンダーはどうなっちまうんだ」 

霊夢「そんなの知ったこっちゃないわ。モーティマーとユージーンの兄弟がやりたがってるみたいだし、 
   摩擦も鬱陶しいから、頭目の地位なんて熨斗(のし)でも付けてくれてやるわよ」 

クライン「その思い切りの良さ、まるでヨウムみてえだな」 

霊夢「妖夢もホームタウンを出てアルンに来るそうよ。 
   そろそろ文通だけじゃ物足りなくなってきたところじゃないクライン?」 

クライン「よっしゃ! 付いていくぜレイム」

●央都アルン 

チルノ「あははは、霊夢の髪が赤! 変だ」 

霊夢「こればかりはね。黒髪はインプやスプリガン、ノームでなれるけど、 
   特性が私の趣味じゃないのよ。やはり魔法も武器もパワーよパワー!」 

魔翌理沙「まあ、博麗の巫女が隠密性や幻惑魔法、素材採集に秀でても仕方ないからな」 

霊夢「魔翌理沙は外見を優先してちゃっかりケットシーなんて選んでるじゃない。 
   耳がまるでネコみたいだし、しっぽまで生やして、可愛すぎるわよ。 
   あなたなら本来、星型のエフェクトが出る魔法をいくつも使えるインプでしょう」 

魔翌理沙「インプじゃ金髪になれないぜ。暗中行動が出来るからってインプを選んだ妖夢はまっくろくろすけだ」 

クライン「なあおいレイム、ヨウムはどこだ?」 

チルノ「誰このおじさん」 

クライン「まだおじさんって言われる歳じゃねえよ」 

魔翌理沙「ほう、この男が、もしかして」 

妖夢「あ、あの。お久しぶりです……クラインさん」 

クライン「おおうっ、黒髪のヨウム! まるで出会った最初の日を思い出すなあ」 

妖夢「はい。もう一年になるんですね。懐かしいです」 

クライン「こちらでもよろしくな、ヨウム」 

妖夢「クラインさんも。あの、さっそくフレンド登録を……」 

クライン「おうよ」 

チルノ「妖夢の顔が赤い! なんだなんだ? 珍しいぞ!」 

ユイ「ヨウムさんの心拍が急上昇していますね。ドキドキです。可愛いです。素敵です」 

魔翌理沙「まあアレだな、そういうわけだぜ」 

チルノ「妖夢はこのおじさんが好きなのか?」 

妖夢「ちっ、チルノ!」 

クライン「……これで、これで俺もやっと、爆発しろと言われる側になれる」 

チルノ「おー、男泣きだ」 

霊夢「チルノのせいで収拾が付かないじゃない。 
   ほらほら、妖夢とクラインはさっさとあちらで告白でもなんでも済ましてきなさい」

●一週間後 

巨像『未だ天の高みを知らぬ者よ——』 

チルノ「挑戦するー!」 

霊夢「ふっふっふ、腕が鳴るわね」 

魔翌理沙「グランド・クエストへ初挑戦か。 
    一昨日は三〇人のパーティーが全滅したそうだが、たった五人でどこまで通じるかな」 

クライン「ま、俺らならなんとかなるんじゃねーの? ヨウムもいるし」 

妖夢「私はクラインさん赴くところ、どこへでも馳せ参じます」 

ユイ「おててを繋いで、すっかりお熱いですねえ。ひゅーひゅーなのです」 

クライン「おいマリサ。このチビスケやたらと高性能だけど、本当にナビゲーション・ピクシーなのか?」 

魔翌理沙「ユイはあの悪名高いSAOを動かしてたカーディナル・システムの一部だぜ。 
    私の知り合いが途中からメインフレーム維持管理に加わった関係者でね、 
    疑似人格といえるレベルまで成長してたから、消去するに忍びなくてサルベージしたんだ」 

クライン「……どういうチートだよ」

●さらに一週間後 

チルノ「おまえ誰? 妙なトサカ頭」 

キリト「俺はキリト。クラインに呼ばれた助っ人だよ」 

リーファ「お兄ちゃん、こんな小さな子、はじめて見たわ!」 

アスナ「バグかしら? 活動にいろいろと支障あるんじゃない」 

チルノ「あたいは最強だから、ちんまくても平気だ」 

魔翌理沙「そいつの言ってることは本当だぜ。私たちの中で、 
    チルノはなぜか最強のエアレイド魔法使いだ。全プレイヤーでも上位五人に入ってるだろうな」 

霊夢「純粋だから、きっとシステムとの相性がいいのよ。 
   妖夢も武器で最強だし、どっちつかずで半端な私と魔翌理沙の立つ瀬がないわ」 

妖夢「キリトさん、アスナさん。ご無沙汰してます」 

キリト「……ヨーム。久しぶり」 

アスナ「ヨームちゃん、元気そうね。どこか落ち着いて見えるわ」 

妖夢「また一緒に戦うことが出来て、嬉しいです。 
   それから私ですが、ALOではヨウムで登録しています」 

アスナ「ヨウムちゃん、よろしくね」 

クライン「キリトもアスナも来てくれてありがとな」 

キリト「クラインも直では久々だな。元気そうで……ん? クラインとヨウム、どこか似てるな」 

リーファ「あれれ、防具がまるでペアルック〜〜。あやしー」 

妖夢「はい……付き合ってます」 

リーファ「マジ! うらやましいなー」 

アスナ「えっ! おめでとうヨウムちゃん! 良かったね」 

キリト「おいおい、初耳だぞ」 

クライン「そりゃサプライズは隠しておくってのが相場だかんな。 
     これで俺もおまえらに追いついたぞ。コンビとしての強さは、俺らが上だがな」 

キリト「ほほう。それじゃあ、試してみるか」 

妖夢「別にいいですよ。SAOではとても選ぶことが無理だった完全決着モードでの試合、 
   キリトさんと一度、してみたかったんです」

●試合後 

キリト「……なにがコンビとしての強さだよ。 
    ほとんどヨウムだけじゃないか。ゲームで死んだのは一年以上ぶりだぜ」 

クライン「まあ、俺の強さを一〇〇とすりゃ、ヨウムは一〇〇〇くれぇ強いからな。 
     俺は牽制役・囮役に徹してるほうが、ペアとしてはかえって強いわけだ」 

アスナ「私なんて接近されて五秒と持たなかったわよ。追尾魔法までありえない回避でかわしちゃうし、 
    どういう運動神経、もとい、飛行センスをしてるのヨウムちゃん」 

妖夢「いつもやってるというか、慣れてるというか、地上戦よりむしろ空中戦のほうが得意です」 

キリト「なんてこった。ALOでヨウムに追いつくどころか、ますます離されてしまった……」 

魔翌理沙「キリトからは天才と言っていい迸るほどの才気を感じるけど、 
    妖夢のリアル剣術は仲間内でも最強だぜ。何十年も修行して数百余の実戦経験を持つ相手に、 
    一年かそこらで追いつくのも無理な話だ。あまり気落ちすんな天才」 

キリト「何十年? 数百余?」 

魔翌理沙「おっと、言葉のアヤだぜ。それくらいに相当するほど濃いって喩えだ」 

チルノ「キリトとアスナ、本当はかなり強いだろ。 
    妖夢が強すぎて弱いように見えたけど、あたいには分かるよ」 

アスナ「あれ、この子はさっきの。あ、蘇生魔法かけてくれてありがとうね」 

チルノ「よし。ならその恩返しとして、今度はあたいと勝負しろ!」

●空中 

キリト「血の気が多いなこのおチビさんは。本当に二対一でいいんだな?」 

チルノ「さっきもクラインは適当に飛んでるだけ。ほぼ二対一だった。 
    あたいは最強だから、妖夢に負けられない。一人でいい」 

アスナ「キリトくん、この子、見た目で判断したら泣きを見るわよ」 

キリト「わかってる……蘇生魔法を使えるほどだし、プレッシャーが只者じゃない」 

チルノ「先手必勝! ごにょ——パーフェクトフリーズ!」 

キリト「なんとか回避できた。というかチルノ、それパーフェクト違うから!」 

アスナ「なんて詠唱速度なの! ほとんどスペルが聴き取れなかったわ」 

チルノ「ごにょ、アイストルネード!」 

キリト「しまった! ぐはあ。そ、それもアイスなんとかと違う」 

アスナ「キリトくんに回復魔法を……」 

チルノ「させるか! ごにょ、グレートクラッシャー!」 

アスナ「ごにょごにょごにょ、きゃあ、は、早い!」 

キリト「アスナも突っ込めよ。それ違うって」 

アスナ「ごにょごにょごにょ、そんな余裕ないわよ——ごにょごにょはい、ヒール!」 

キリト「サンキュー! それでは剣で勝負だチルノ!」 

チルノ「ごにょ、ソードフリーザー!」 

キリト「なんと氷の剣だと! 相変わらず名前違うけど、 
    最高ランクスペル! ——だが俺とてSAOで鍛えた剣の腕が!」 

チルノ「遅い!」 

キリト「フェイントを交えた俺の一撃が避けられた……ヨウムのときと同じだ」 

チルノ「地上と空中は、違うんだよ。ほいぶっすり、はい終了」 

キリト「一撃でHP全損か……さすが最上位攻撃魔法。アスナ、あとは任せた」 

アスナ「任せたって、キリトくんでも一蹴されたのに、私が叶うわけないじゃなーい!」

●勝負後 

チルノ「おまえら、なかなか強かったぞ」 

キリト「一方的にのされたあとで言われてもな……わずか五分で二度も死ぬなんて、初めてだよ。 
    しかも殺された相手に蘇生魔法の施しまで受けるとは。HP完全回復状態で復活するなんて、 
    ウンディーネにしか使えない、おまけに超高等魔法だぞコレ」 

チルノ「あたいは水系統限定だけど、攻撃魔法も回復魔法も極めたから、なんでも出来るんだ。えっへん」 

アスナ「ねえチルノちゃん。あなたって、MMOはどれくらいやってるの?」 

チルノ「MMOって美味しいか?」 

アスナ「へ?」 

霊夢「その子は強くなることに関しての集中力と記憶力は凄まじいけど、それ以外はてんでダメよ」 

キリト「……ということは、ヨウムのときと同じ」 

霊夢「からっきしの初心者よ」 

アスナ「ねえチルノちゃん、このゲームはじめてどれくらい?」 

チルノ「さあ? けっこう日が経ったよ」 

魔翌理沙「まだ五週間くらいだぜ」 

キリト「その期間であの強さだと? 飛ぶほうも凄いし——そういえば君はウンディーネだし、 
    まさか、セブンセンシズ・ガールの一人か!」 

チルノ「セブンセンシズぅ〜〜?」 

キリト「先日ウンディーネ領主になったディアベルが目撃してたんだ。 
    初心者なのにとてつもない速度で飛べる、常人にない第七の感覚を宿した天才少女アバターがいたって。 
    あ、第六感は超能力のことだよ」 

リーファ「それを言うなら、お兄ちゃんもたった一時間で補助コンなしで自在に随意飛行できるようになってたじゃない。 
     それこそ第六感ってレベルじゃないの?」 

魔翌理沙「つーかそれ以前に、感覚って七どころか一〇種類以上あるんだが、どこのマンガだそれ。 
    いわゆる五感ってのは、たくさんある感覚のうち、代表的なものを指してるだけだぞ」 

キリト「聖闘士星矢(せいんとせいや)は俺の亡くなった祖父がバイブルにしていたマンガだ。 
    それだけネタが古い」 

魔翌理沙「セイント? 悪いが知らん」 

妖夢「あのみなさん、セブンセンシズ・ガールですが、私が知ってます。 
   クラインさんに教えられたんですけど、私たち幻想郷クラスタ四人のことです」 

クライン「当人たちがろくに気付いてねえとは、恐れ入ったぜ天才空戦少女たち」 

キリト「ということは、もしかしてマリサとレイムも……」 

霊夢「悪いけど私も魔翌理沙も、空中戦闘——エアレイドに限ればあんたらより余裕で強いわ。 
   ま、私たちの戦いを見ればわかるわよ」 

魔翌理沙「そういうこった。善は急げってな」

●グランド・クエスト 

巨像『未だ天の高みを知らぬ者よ——』 

チルノ「受けるー!」 

魔翌理沙「私たちセブンなんとかが前に出るから、 
    キリトたちはクラインと一緒に後ろからサポートに徹してくれ」 

キリト「りょ、了解……」 

リーファ「お兄ちゃん、覇気がないじゃない。どうしたの?」 

キリト「しょうがねえだろリーファ、サポートなんて初体験だし。 
    しかもこれ、最高難度のグラクエだぞ」 

アスナ「これまでのクエストはいつもキリトくんが先導役で主戦力だったしね。 
    さすがに彼女たちが相手じゃ、二刀流の英雄も形無しかな」 

クライン「ま、上には上がいるってこったな。せいぜい参考にして、後日の糧としようじゃないか少年」 

キリト「おまえは気楽でいいよな。彼女が滅法強くて」 

クライン「社会人の俺は分別をわきまえてるからな」 

霊夢「最初は妖夢と釣り合うんだ〜って無謀に最強を目指してたわよ、その人。 
   私の強さを聞きつけて突っかかってきたから、秒殺して子分にしてやったのよ」 

クライン「レイムさーん、それは言わないって約束じゃ……」 

霊夢「ここぞとばかりに過去の鬱憤を晴らして大人ぶってるからよ」 

妖夢「あの、クラインさん。剣なら私が教えてさしあげますから、強くなりましょう」 

クライン「おうよ! 修行デートだな」 

チルノ「扉が開いた! 突入!」 

魔翌理沙「一番手は私だ! ごにょ、開幕マスタースパーク!」 

妖夢「はー! ごにょ、幽明求聞持聡明(ゆうめいぐもんじそうめい)の法!」 

キリト「そんな無茶苦茶な……大出力ビームに、分身の術だなんて」 

アスナ「はじめて見るけど、どちらも高位のスペルよね。名前ぜんぜん違うけど」 

キリト「ナイス突っ込みアスナ」 

リーファ「なによこれ。白い変な戦士がたくさん湧いてるわよ。すごい数」 

クライン「ガーディアンどもさ。まっ、これが彼女たちが短期間で魔法スキルをガンガンあげた理由だけんどな。 
     サポート魔法中心だけど、俺も地味に高レベルだぞ」

霊夢「ごにょ……八方龍殺陣!」 

チルノ「ごにょ、フロストコラムス!」 

魔翌理沙「ドラゴンメテオ!」 

妖夢「六根清浄斬!」 

霊夢「夢想封印!」 

チルノ「アルティメットブリザード!」 

キリト「……楽だ。弾幕の間を抜けてくるガーディアンを斬り倒すだけのお仕事。 
    というか前の四人、敵のあらゆる攻撃を謎機動でことごとく回避してやがる。あやかりたいぜ」 

リーファ「エアレイドの次元が違うわね。とくにチルノちゃんの動きは自然体すぎて、あまりにも天才的よ。 
     なんていうか、敵ながらガーディアンが可哀想になってきたわ」 

クライン「それでも届かねえんだよな。だから俺は剣技に秀でたおまえらを呼んだわけさ」 

アスナ「え? でももう敵、八割方は片付いてるわよ」 

クライン「見てなって。本番はむしろ、これからだ」 

キリト「なんだなんだ、新手がどんどん湧いて、白い壁になったぞ。むこうが見えない!」 

クライン「なっ。おまけにな、こちらはスッカラカンだ」 

チルノ「うーん、魔翌力がつきかけてる。あとは回復用にストック」 

魔翌理沙「ここから先は、肉弾戦だぜ!」 

妖夢「私の本領発揮ですね。このムラサメブレードで、今宵も滅殺してあげましょう。 
   まず最後のMPで特大の剣撃を放ちますから、そこへみなさん、突撃してください」 

キリト「ヨウムのことだから……すごいのが来そうだな」 

妖夢「ごにょ、迷津慈航斬(めいしんじこうざん)!」 

リーファ「すごーい! 剣が何倍にも伸びて、一撃で三〇体は倒したわよ」 

アスナ「これってあのエンシェントウェポンのエクストラ攻撃に、 
    インプ専用の高位スペルを合わせた特殊技じゃなかったかしら。名前ぜんぜん違うけど」 

霊夢「総員抜刀、突入!」 

キリト「そういや前の四人、ヨウム以外の三人は武器を手にしてなかったな。 
    前衛なのにここまで素手って、デタラメすぎる」 

アスナ「私から見れば、キリトくんも十分にデタラメよ。 
    クラインさんが言ったように、上には上がいるって話。さあ、行きましょう」 

キリト「ああ。そうだな。この戦い、どこまで通用するのか、俺も行けるところまで暴れてやる」

●五分後 

妖夢「はああぁぁ!」 

キリト「おりゃあああぁぁ!」 

チルノ「やった、抜けた!」 

霊夢「あなたたちはゴールの天井に! 残った人は万が一に備えた退路確保のため、 
   空間を維持するの。ここを橋頭堡として、守りきるわよ!」 

チルノ「任せろ! 行くよ!」 

キリト「まさか一回目の挑戦でたどり着けるとはな」 

妖夢「私たち、これで七〇回目くらいなんですけどね。 
   キリトさんたちのおかげでやっとクリアできそうです」 

キリト「ななじゅう? 毎日何回も挑んでたのか。そりゃ、スキル熟練度がすごいことになるはずだ」 

チルノ「なんだこれ、動かないぞ。なにも反応しない」 

キリト「おかしいな。これってどう見ても扉かなにかだよな」 

妖夢「条件が足りてない? でも敵は永久に出てくる仕様みたいで、 
   全滅させるのはとても不可能に見えます」 

チルノ「なあユイ。なにか分かるか?」 

ユイ「えっと、この扉ですけど、管理者権限によってロックされています」 

キリト「なんだと? クエストフラグは?」 

ユイ「フラグ以前に、この空間にはそれ用の変数がそもそも存在しません。 
   つまりALOのグランド・クエストは、普通のプレイヤーがなにをしてもクリアできないようになっています。 
   できるとすれば、GM用のアクセスコードを持った特殊な権限の人だけです」 

キリト「なんてことだ。実装してぬか喜びさせておいて、実際はまだ未完成だったというのか!」 

妖夢「開発チームの怠慢ですね。サービス開始間もないから、 
   どうせ誰もクリアできないと、高をくくっていたのでしょう」 

ユイ「いえ。扉自体はすでに機能します。この扉はどこかへワープできるよう、 
   しっかりデザインされています。ただ、開けないようにしているだけです」 

キリト「とんだ悪意を感じるな」 

チルノ「なに言ってるのか、天才のあたいにも分かるよう、教えろ」 

ユイ「チルノさん。この扉は意地悪な人のせいで、開きません」 

チルノ「意地悪なやつ、とっちめる!」 

キリト「とにかく撤退だ! ここにいてもいたずらに霊夢やクラインたちが疲弊するだけだ」

●宿屋 

全員『…………』 

クライン「GMコールで抗議文送ってみたけど、仕様ですってテンプレ返答だ。意味不明だぜこりゃ」 

リーファ「こうなったら、ネットでこの件、流してみる?」 

キリト「信じて貰えるのか? 三〇人はおろか五〇人態勢でも全滅するような難関クエストに、 
    たった八人で誰も死なず扉まで辿り着けたって」 

アスナ「あーあ。カメラで写真を撮っとけば良かった」 

魔翌理沙「現実的じゃないぜアスナ。悪意には悪意をもって返されるのが世の常だ。 
    まず扉を間近で見た者がほかに誰もいない。 
    だから運営に捏造だと主張されたら、こちらが逆に糾弾される。 
    データ書き換えでデザインを変更されたら、その時点で私たちは詐欺師に転落だ」 

霊夢「そこまで悪辣で性根の腐った運営と思いたくないけど」 

魔翌理沙「レクト・プログレスには、ニードレス技術開発に関する暗い噂もある。 
    慎重に事を運んでもいいと思うぜ」 

アスナ「その件についてだけど、私に任せてもらえないかしら」 

キリト「アスナ、さすがにそれは」 

魔翌理沙「なんだ、アスナには妙案があるのか?」 

アスナ「とっておきの裏技よ。じつは私の父が、レクト本社でかなり偉い人なの」 

キリト「あーあ」 

霊夢「悪いけどそのカードを切るのは、アスナ、最後の最後にしてくれないかしら」 

アスナ「どうして? 父さんから開発チームのあいつに圧力をかければ、 
    すぐに解決するわよこんな理不尽。 
    どうせ世界樹のてっぺんで偉そうにしてる妖精王オベイロンの正体は、あいつに決まってるんだから」 

魔翌理沙「よほど嫌いなようだな、レクト・プログレスにいる特定の野郎が」 

アスナ「だってあの変態ったら、ただでさえ変態のくせに、 
    いいかげん変態の変態なうえに変態すぎて、どうしようもない大変態だし」 

魔翌理沙「生理的に受け付けないのか」 

アスナ「名ばかりで実のない口約束だけの許嫁(いいなずけ)だったくせに、 
    いきなり権利を主張してキリトくんと私の交際に猛反対したのよ。 
    私に本当に好きな人ができたら、許嫁は解消する。 
    そんな感じの空手形だったし、父さんも母さんもキリトくんを認めてくれたのに」 

キリト「アスナが怒髪天貫いて、あやうく流血沙汰になるところだったよ。 
    おかげで俺はどうやら、将来までガッチリ進路が決まってしまったようだ」 

リーファ「お兄ちゃん、エリートコース確定だもんね。しっかり勉強しないと、置いてかれるよ」 

アスナ「そうなのよ。いまやキリトくんと私は、両家が認めて書面も交わした正式な許嫁なの」 

クライン「すげえ。リア充として追いついたと思ったら、 
     おめえらとっくに先の果てまで行っちまってたのかよ」 

霊夢「アスナ、あなたかなり恵まれたお嬢さまなのね」

アスナ「あまり話したくなかったけど、そうなるわ。 
    とにかく私の父を動かせば、この件は一発で解決よ」 

霊夢「だからこそ学ぶべきことがあるわ。理不尽なんていつでもどこにでも転がっている。 
   まず可能なあらゆる手を探って、なにもかもやり尽くして、 
   最後になってからでないと、裏技にはすがりたくないの」 

アスナ「レイムさん……」 

魔翌理沙「私も賛成だぜ。まず足掻いてみたい。なにか糸口があると思う」 

クライン「でも内側はロックされててダメなんだろう? 
     外側つーか、世界樹の幹は侵入不可エリアだしよ」 

チルノ「枝は?」 

魔翌理沙「おっ、ずっとだんまりしてた子が、やっと発言したな」 

チルノ「だってみんな、なに言ってるのかわかんなかったし」 

アスナ「不思議に思ってたけど、チルノちゃん、 
    もしかして見た目だけじゃなくて、中身も幼いの?」 

霊夢「まんまよ、まんま。九歳くらいと思っていいわ」 

キリト「……以後はそれを踏まえて、こいつに接しよう」 

チルノ「あー! みんなあたいをバカにしただろ。あたいは最強なんだぞ」 

魔翌理沙「はいはい、チルノは最強で天才っと。で、枝がどうしたって?」 

チルノ「中がダメ、外も幹がダメなら、あとは枝じゃん」 

クライン「途中で飛行可能時間が尽きて、誰も最下層の枝にすら届かねえぞ?」 

キリト「待てよ、その発想、捨てたものじゃない……」 

リーファ「なにか思いついたの、お兄ちゃん」 

キリト「——ロケットだ。みんなして肩車して、多段ロケットになればいい」

●アルン正門前 

リーファ「みんな見てるね……」 

クライン「我慢だ。我慢しろよみんな! 
     俺たちは伝説になるんだからな。いまは笑われても、気にするな」 

霊夢「それではいくわよ、一段目、全力ブースト!」 

チルノ「おおう、動き出した! 遅いね、ゆっくり」 

霊夢「仕方ないじゃない。私ひとりで、七人も抱えてるんだから! なんで私が最初なのよ」 

魔翌理沙「一番パワーのあるサラマンダーだから、仕方ないぜ」 

霊夢「おりゃあああ! 最高速度〜〜!」 

チルノ「遅い、ゆっくり」 

霊夢「バカにするなぁああ!」 

チルノ「おおお、加速しはじめたぞ、やるな霊夢、褒めてやる」 

霊夢「軽いからって理由でてっぺんにいる奴は気楽でいいわね!」

●およそ一〇分後 

霊夢「そろそろ尽きるわよ、二段目用意OK?」 

クライン「おうよ、任せろ!」 

霊夢「切り離すわ、それでは、行ってらっしゃい!」 

クライン「うぉぉおおお! サラマンダー族の底力を、見せてやる!」 

チルノ「霊夢より遅いな。のんびりだ」 

●およそ一〇分後 

クライン「俺の滞空限界が来たぞ、三段目!」 

リーファ「もっと高い位置にいたかったのに」 

クライン「飛行能力の高いシルフだからな。あばよっ、下で待ってるぜ」 

リーファ「任せなさい、私も妖精の端くれ!」 

チルノ「おおー、すこし速くなったな」 

●およそ一〇分後 

リーファ「四段目、タッチして!」 

アスナ「行くわよ、ウンディーネの全力!」 

チルノ「またのんびりだ」 

アスナ「私、それほど飛ぶの得意じゃないのよ」 

リーファ「どんどん離れていく……けど、あまり上昇してないわね」

●およそ一〇分後 

アスナ「私の限界が来たみたい」 

妖夢「私の出番ですね。五段目、行きます!」 

キリト「なんだこの急加速。さすがセブンセンシズ・ガールだな」 

チルノ「だんだん枝が近づいてきた!」 

妖夢「意外と疲れますねこれ」 

アスナ「うわあ、ヨウムちゃんもうあんな高さに。そういえばいま、高度何キロあるんだろう。 
    この高さからの滑空は楽しいわね。癖になっちゃいそう」 

●およそ一〇分後 

妖夢「私も滞空が切れたようです。お願いします」 

魔翌理沙「任せろ! 私の本領を発揮だぜ」 

妖夢「吉報を待っていますよ」 

魔翌理沙「行けー!」 

チルノ「高い高い! 早い早い!」 

●およそ一〇分後 

魔翌理沙「電池切れのようだぜ。キリト、よろしくな」 

キリト「七段目、スタート!」 

チルノ「あれれ? 三人から二人に減ってるのに、もしかして魔翌理沙とおなじくらい?」 

キリト「これでも俺はスプリガンとしてめっちゃ速いほうで、 
    並のシルフより最高速が出るんだぞ。きみたちが極端に速すぎるだけなんだよ」 

チルノ「もうすぐ届きそうだよ、枝」 

キリト「お? これってもしかして、俺も栄誉に噛ませて貰えそうだな」

●五分後 

キリト「やったぞ! 世界樹についた! 七人で良かったんだな」 

チルノ「あたいったら天才ね。なにもしなくても天才。 
    だから天才で最強。さっそく、写真、写真……キリト」 

キリト「なんだ、天才で最強ちゃん」 

チルノ「このカメラってアイテム、どう使うの?」 

キリト「やはり俺が一緒に辿り着けて、良かったな」

●世界樹 

キリト「なんてこった……どこにも空中都市なんてない。ここはもう、ほとんど頂上のはずなのに」 

チルノ「いくら歩いても、枝と葉っぱしかないね」 

ユイ「アルフらしき、NPCの反応もありません。皆無です。不自然です」 

キリト「とにかく写真だ。証拠を片っ端から写すぞ」 

チルノ「わあい。悪を暴くんだ」 

オベイロン「——困るなあ、いきなりそんなことをされたら」 

キリト「誰だ!」 

チルノ「くどくて変な顔、変な顔のおっさんだ」 

オベイロン「僕の名は妖精王オベイロン。きみたちが崇める、この世界の支配者だよ。 
      正規の手段を踏まずに世界樹に侵入してくるなんて、オイタが過ぎたね。 
      これはスプリガンとウンディーネに、きついペナルティを与えないといけないなぁ」 

チルノ「ここまで攻略したぞ。アルフに転生させろ。あたいはずっと空を飛ぶんだ!」 

オベイロン「いや、これは不正な手段だ。だから悪い子にはアルフの町も、謁見の間も見えないんだよ」 

キリト「それは理屈としておかしい。あの試練は、あくまでも世界樹の上へと転移する手段にすぎない 
    ——そういう設定で、個別の事象のはずだ。俺たちは方法こそ違えども、 
    きちんと実現可能なルールの範囲内で、フェアネスに則ってここまでやって来た」 

オベイロン「残念だけど、想定の範囲外ってやつだよ。 
      うん、何事にも例外はあるんだよ。だからね、不正はいけないな」 

キリト「だから不正じゃないと言っている……須郷」 

チルノ「あれ、固まったぞこの変なおっさん。すごー?」 

オベイロン「……そうか。そうかそうか、きみは——データを参照させて貰うよ……なるほど、 
      やはりまさかな、英雄くんがこんなところまで出張るとは、どこまで僕の邪魔をすれば気が済むんだい」

キリト「邪魔だと? 俺はべつにあんたの邪魔なんか」 

オベイロン「どうしてSAOを、たった八ヶ月でクリアしたんだ!」 

キリト「?」 

オベイロン「早すぎる、あまりにも早すぎたんだよ君たちは! ヨームという謎の少女と、 
      桐ヶ谷和人(きりがやかずと)くん。君たちふたりのせいで、 
      あまりにもあの世界は早くクリアされてしまった! なんという都合の悪いことを!」 

チルノ「あたいは妖夢から、良かった事だと聞いてるよ」 

ユイ「その通りです。攻略が早く終わったおかげで、死んだ人が思ったより少なくて済みました」 

オベイロン「良くない! おかげでどうだ、僕の計画は大幅に狂ってしまった! 
      実験に使うはずだった空間も、施設も人もお金も、なにもかもが無駄になってしまった。 
      明日奈くんまでもが僕を見捨てた! 選ばれた人間である僕をだぞ! 
      なにもかも失った僕には、数億円の借金しか残らなかった。終わったよ、ああ終わったんだ」 

チルノ「まるで三流な悪人の告白みたい」 

キリト「たしかに悪人っぽいな」 

オベイロン「おいおい、絶望に染められた僕の呪詛はまだ終わってないぞぉ」 

キリト「別にアルフになれなくてもいいけど、グランド・クエストの半端な実装を詫びて、 
    世間に謝罪するんだな。あとは誠意を見せて、クエストをきちんと完成させるんだ」 

オベイロン「あーはっはっは! そんなの、無理に決まってんだろが! 
      このALOでアルフの町をデザインして、 
      アルフ転生イベントの影響と修正を全マップへと実装反映させるのに、 
      何千万円掛かると思ってるんだい? そんなことに使うお金があったら、 
      僕の借金返済に一円でも回さないといけないじゃないか。分かってないなあ君は。愚かだね」 

キリト「……だめだこいつ」 

オベイロン「僕はね、きみを心底から憎んでいるんだよ。 
      絶好の研究材料と、出世街道の足がかりとなるはずだった婚約者と、 
      栄光の未来を、ことごとく奪ってくれたガキが!」 

キリト「おまえの事情は知りようがないけど、人の地位や不幸を利用しようとしていたことだけは分かる。 
    さらに運営資金の使い込みまで行うとは、須郷、おまえは悪だ」 

チルノ「悪か! こいつは悪いやつなんだな!」 

ユイ「私の会話分析でも、この人は悪人だという結果が出ています。 
   おまけに自分から勝手にネタバレして不利な状況を作ってるように、精神の均衡を失っています。 
   話が通じなさそうですから、さっさとやっつけましょう! ——きゃあ」

チルノ「ユイが消えた! おっさん、ユイになにをした!」 

オベイロン「なぜAIごときが僕を断罪する! 僕はきみの創造主なんだぞ! 
      たかがナビゲーション・ピクシーの分際で……いや、こいつは——これは、SAO! 
      基幹開発者、茅場晶彦だと! なぜだ! なぜ僕のALOにまだ、 
      茅場先輩の影がいるんだ! 名義はすべて書き換えたはずなのに!」 

チルノ「ユイを返せおっさん! さもないと——ぐっ」 

キリト「須郷、貴様! ……うぅ。これは、超重力か」 

オベイロン「未実装の重力魔法だよ。脆いねえ。いくら強がろうとも、神たる僕の操作ひとつでこのザマさ。 
      そう、僕はALOの絶対君主で、最高の支配者なのさ。もう君たちは帰さないよ。 
      ここで朽ちてもらう。死人に口なしってね。きゃーっはっはっは!」 

キリト「アミュスフィアはナーヴギアとは違う。そんな機能はないぞ」 

オベイロン「ちっちっち、甘いねえ君は。出来ることもあるんだよねえ。 
      たとえばさぁ、精神を崩壊させたら、殺したのとおなじ効果があるだろう? 
      とりあえず英雄くんと、そこのおちびさんの自力ログアウトは不可能にしておいたよ。 
      外から無理矢理起こされる前に、どうやって料理しようかなあ」 

チルノ「こいつ悪いやつだ! とんでもなく悪いやつだ!」 

キリト「貴様ぁ! こんなことをして……ぐはあぁ。な、なぜ腹を蹴られて」 

オベイロン「驚いてるかい? そうだろうな。なぜ痛いのかって顔をしてるね? 
      傑作だよその表情。きゃーはっはっは! もちろん痛覚を再現したからだよ。 
      ペインアブソーバーの抑制レベルを下げたのさ! 
      素晴らしいねえ、あらゆる感覚を操作できる神の手!」 

キリト「てめえ……」 

オベイロン「こうやって痛めつけて、徹底的に仕返しをしたら、いくら英雄といえども、 
      心は折れて、精神もやられてしまうだろうよ。だってSAOは、どれだけ敵に斬られようとも、 
      潰されようとも、飛ばされようとも、痛みを感じないヤワい世界だからねえ。だが!」 

キリト「それは俺の剣——なにを……が!」 

チルノ「キリト!」 

オベイロン「僕みたいな非力な男が剣を突き刺しただけで、ほらっ! 
      簡単に苦痛でのたうち回る! そうなんだよ和人くん。きみは英雄といっても、 
      あ・く・ま・で・も、ゲームの世界での勇者だったんだ。どうだい、本物の傷みというものは」 

キリト「……きさま。こんなことをして、いいと思ってるのか」 

オベイロン「あーっはっはっ! いくら強がろうとも、顔がウソを付いてないよ。 
      痛いよ〜痛いよ〜、助けて〜って言ってる。ほら和人くん、僕に頼みたまえ。 
      どうか背中の剣を抜いてくださいってな!」 

チルノ「おい卑怯だぞ変なおっさん!」 

オベイロン「黙ってろガキが。言動が幼いからゲーム機の登録情報を覗いてみたらまさかの九歳って、 
      どこまでふざけてるんだ。僕はね、ガキが大嫌いなんだよ。バカだし、愚かだし、煩いし、鬱陶しい。 
      小さいからといって、僕がきみに手を挙げることができないって思ってないかい? 
      きみにも知られてしまったからには、この和人くんとおなじように、 
      心を砕くことにするから、おとなしく料理の順番を待ってるんだな」 

チルノ「くそう——あたいは最強なのに」

謎の声『……そうか、きみは最強なのか』 

チルノ「え? 誰?」 

謎の声『しー、気付かれる。これはきみにしか聞こえていない。小さな声でいい』 

チルノ「……誰だ」 

カヤバ『私は茅場晶彦——の、残留思念みたいなものだ。非科学的な物言いになるが』 

チルノ「妖夢がやっつけた奴だね」 

カヤバ『そう、見事にしてやられたよ。システムを簡単に上回る、人間の可能性を見せて貰った』 

チルノ「妖夢は妖怪だよ」 

カヤバ『いや違う。あの世界では、魂魄妖夢(こんぱくようむ)くんといえども 
    プレイヤー以上の力を出すことは出来なかった。だから人間の可能性でいいんだ』 

チルノ「どうしてあたいに話しかけてるの?」 

カヤバ『それは八雲紫(やくもゆかり)くんに、幻想郷の未来を託されたからだな。 
    ニードレス技術は順調に発展しており、やがてニューロリンカーとして爆発的な世界の変革を実現する。 
    精神や魂の秘密が解き明かされる日も近い。それは同時に、オカルトとして日の目を見なかった分野が、 
    一斉に正統な科学の仲間入りを果たすことも、また意味しているのだよ。 
    結界や封印の類を科学で見つけ、科学で解除する日が来る。 
    私は新時代の式神として、妖怪たちと人間との橋渡しに選ばれたらしい』 

チルノ「天才のあたいに分かる言葉で説明してよ」 

カヤバ『そのうち人間は幻想郷を見つけるだろう。仲介役が私だ。 
    私は人間の側でありながら妖怪の味方でもあるから、チルノくんを助けるのだよ』 

チルノ「あたいは今、なにをすればいい」 

カヤバ『一時的にきみを、この世界の神にしよう』 

チルノ「最強になるのか」 

カヤバ『だがきっと、きみの喜ぶ最強とは違うと思う。それは許してくれたまえ。 
    須郷のバカを止めるには、いまはほかに手がないんだ』 

チルノ「わかった——なら、最強やるのはキリトに任せる」 

カヤバ『ほう、私が平行処理でキリトくんへ同時接触していることに気付いていたか』 

チルノ「あたいは天才だからね。キリトもブツブツしてる」 

カヤバ『彼には人間として託したいものがあるからね。では行くよ』 

チルノ「へえ。わからん……そうか、うんうん、つづけて同じコトを言えばいいんだね」 

オベイロン「うるさいなあガキが。さっきから一人で、なにをブツブツと」 

チルノ「システムログイン、IDヒースクリフ!」 

オベイロン「な、なんだと! なぜその名を言う! 茅場ぁ〜〜!」 

チルノ「システムコマンド、マジックコントロール、 
    IDチルノとIDキリトに掛かっているグラビティを無効化せよ」 

オベイロン「貴様!」 

チルノ「システムコマンド、IDオベイロンの管理者権限を強制ログオフ!」 

オベイロン「なっ!」 

キリト「ようやく解放されたぜ。システムログオン、IDオベイロン」

オベイロン「桐ヶ谷もか! 僕のGM権限をログインしながら乗っ取ったな! 
      雑魚でガキのくせに! 茅場め! 死んでまで僕の邪魔をするというのか!」 

キリト「うるさいな盗人が——うっ、剣を自分の体から抜くってこんな感覚なのか。 
    だがもうすぐ終わる。須郷、あんた名義を換えたと言ったな。 
    つまりALOは茅場のシステムを土台にしてるということだな」 

オベイロン「茅場先輩の構築したSAOは完成度が高い。流用しない手はないだろ。うへへっ」 

キリト「俺もおまえも、他人の舞台で踊ってることに変わりはない。 
    俺が雑魚の勇者なら、おまえは盗賊の王だ。 
    システムコマンド、この空間のペインアブソーバーをゼロに!」 

オベイロン「なっ? なにをする気だ!」 

キリト「決着を付けようってわけさ。痛みを感じない茅場の世界で魔王を倒す行為を、 
    たかがゲームだと嘲笑しただろ。だから現実とおなじレベルで痛みを感じるようにしてやったまでだ。 
    俺とおまえ、どちらが正義か。剣と剣の一対一で勝負を付けようっていうんだよ」 

オベイロン「武器、武器……ない、僕の武器がない! エクスキャリバー!」 

キリト「ほう、そんな武器があるのか。 
    システムコマンド、オブジェクトID、エクスキャリバーをジェネレート」 

オベイロン「なんだとぉ!」 

キリト「なんてふざけたステータスだ。ほら、特別に伝説の武器をくれてやる。 
    俺はこの、ただの店売り剣で相手してやるよ。掛かってこい須郷伸之!」 

チルノ「格好いいぞキリト!」 

オベイロン「……こ、このガキがぁ!」

●博麗神社 

チルノ「それでね、あたいがぼけ〜〜っと見てる前で、こう、何回も何回も切り刻んで、 
    変なおっさんはカエルみたいな悲鳴あげながら弾け飛んだ」 

妖夢「へーそれは見本のような勧善懲悪でしたね」 

チルノ「投げやりだなー、妖夢」 

妖夢「そりゃそうよ。この話を聞くのはもう九回目ですし」 

ユイ「みなさーん、お茶が入りましたよー」※式神なので実体可 

カヤバ「新作和菓子も出来たぞ。私の手製だから、ありがたく食したまえ」※式神 

チルノ「美味そうだ! さすがカヤバだな!」 

魔翌理沙「カヤバ、おまえもすっかり神社のおさんどんが板に付いたな」 

カヤバ「これも幻想入りして以来の腐れ縁というやつかな。もっとも、 
    そもそもなぜ私は女体化しているのか、 
    しかもなぜ中学生ていどのイヌミミ少女にされてしまったのか。 
    いろんなことを八雲紫くんに問い詰めたい日々だよ」 

霊夢「将来のためらしいわよ。まさか茅場晶彦そのままの姿で、 
   幻想郷と日本政府との交渉役に使えるわけがないじゃない。妖怪にしても、 
   年若い女の見た目でいるほうがなにかと便利なのよ。相手が油断してくれるから」 

カヤバ「まあいい。性転換は男のロマンらしいから、しばらくこの姿を楽しむとしよう」 

魔翌理沙「妖怪は姿に内面も引き摺られるっていうぞ。だからそのうち身も心も女になると思うぜ」 

カヤバ「それは貴重な観察対象になりそうで興味深いな。 
    妖怪というのはなんでもありなだけに、研究材料に事欠かなくて面白い」 

ユイ「はい、おやつの用意が整いましたよ」 

全員『少女喫茶中……』 

妖夢「けっきょく須郷って人は、なにをしたかったんでしょうか? 勝手に自爆しまくっちゃって、 
   未熟な私から見てもただの阿呆さん。なにか大それた所業を働こうって輩には見えません」 

魔翌理沙「ところがどっこい、あいつがやろうとしていたのは、人の魂の直接制御らしいぜ」 

妖夢「それは……なんという大それたことを」 

カヤバ「彼はそれなりに優秀だが、追い詰められると自暴自棄になるところがあってね。 
    悪事に走ってしまったのも、私への対抗心がおかしな方向に走ってしまった結果だろう。 
    私ほどではないが、愚かな男だ。私のオリジナル体は無間地獄に落ちてしまったが、 
    その苦悶はあまり想像したくない」 

チルノ「よく分からないけど、凄そうだな」 

魔翌理沙「須郷のやつ、ALOを隠れ蓑にSAOプレイヤーを被験者として研究し、 
    軍事用に実用化したかったんだってさ。おっそろしい奴だ。 
    準備段階で妖夢とキリトがさくっとクリアしたおかげで何も起きなかったけど、 
    須郷はもみ消し工作費や不履行違約金を自腹で捻出するしかなく、多額の借金を背負った。 
    そこまでは良くある喜劇だったが、ALOが意外に大ヒットしたのが運の尽きだったな。 
    目の前に大金がある。須郷は我欲を抑えられず、 
    返済のため一億円以上も会社の金を横領してしまった。開発資金が不足したALOは結局、 
    グラクエの完全実装が間に合わなかった。あいつはもう社会的には死んだも同然だ」 

霊夢「ALO、早く運営再開しないかしら。物足りないわ」 

妖夢「私もクラインさんと会いたいです……バーチャル限定とはいえ、せっかく付き合ってるのに。 
   こうなったらダイシー・カフェとやらに突撃してみようかしら」 

ユイ「半霊にみなさんびっくりすると思いますよ」 

チルノ「みんな楽しみに待ってるのに、連帯とか責任とか社会とかって面倒だな」 

霊夢「チルノが難しい単語を連発した!」 

魔翌理沙「私がいろいろ教えたせいだぜ。ALOは運営会社が変わるって話だ。 
    移管作業は順調らしい。まあ、あれのおかげだけどな」

チルノ「えーと、世界の種子?」 

魔翌理沙「ああ、キリトが茅場より託された、世界の種子だ。 
    ザ・シードというVRMMOパッケージのおかげで、 
    バーチャル世界がどんどん広がってるってよ」 

霊夢「たとえばどんな世界があるの?」 

妖夢「それなら白玉楼へお遣いに来てた永遠亭の鈴仙さんが、銃器の世界を楽しむと言ってましたね。 
   名は、ガンゲイル・オンラインだったかしら」 

魔翌理沙「GGOか。あそこは空も飛べないし、埃まみれで殺伐としてるから、 
    綺麗好きな霊夢にはあまり向かないな。とにかく増殖中だから、いくらでも選び放題だ」 

チルノ「あたいも楽しみたい! 最強になる!」 

ユイ「チルノさんはとっくに伝説級の最強プレイヤーですよ。 
   キリトさんと共に人知れずALOを救った、英雄チルノとして」 

妖夢「私が無双したアインクラッドも新生ALOで実装されるらしいです。 
   どこかにデータが奇跡的に残っていたみたいですね」 

カヤバ「SAO事件後もALOが発売されたり、鋼鉄の浮翌遊城が規制されないのは、 
    国がニードレス技術を裏で推進しているからだな。 
    あきらかに現在の都合より未来への投資を指向している」 

霊夢「なんにせよ、私たちにとっての大本命はALOってわけね。 
   あらチルノ、すごくワクワクしてるって顔ね」 

チルノ「——伝説かぁ、いいな! あたいったら最強ね!」

●P.S. 

カヤバ「古い記録を整理していて、霊夢くんが博麗神社の巫女に就任したのが 
    西暦換算で一九九六年以前となっているのだが、いまは二〇二三年。 
    二七年も昔の話だが、どう見ても少女だな。彼女は一体何歳なんだ? 
    魔翌理沙くんもただの人間のはずだが、おなじく二六年前の一九九七年から文献が残っている」 

紫「それはね、幻想郷、公然の秘密よ」 

カヤバ「これは興味深いな。永久に歳を取らない人間の少女か。 
    博麗大結界をすこしでも長く維持してもらいたくなった。 
    研究者として、私は全力を尽くすとするよ」 

紫「あなたが気に入ったのは、霊夢と魔翌理沙、どちらかしら?」 

カヤバ「私には外の世界にちゃんと恋人がいたんだよ。だからあの二人を見る私の目は、 
    歳の離れた妹や、娘などを愛でるものに近いといえるだろう。 
    いまは女だから、なおさらだ」 

紫「あら、意見が合いそうね。うふふ。せいぜい励みなさいな。 
  そうそう、これ別件に関する参考資料ね。事前対策のため、必要な情報が満載よ」 

カヤバ「アクセル・ワールド? ……読ませて貰おう」 


 END お粗末様でした

エディタかブラウのバグでしょうか、 
コピー&ペーストでなぜか「翌」が勝手に挿入されまくっとる。 

攻撃翌翌翌力 → 攻撃翌力 
魔翌翌翌理沙 → 魔翌理沙 
魔翌翌翌力 → 魔翌力

だめだ、勝手に挿入される。

こういう場合、別スレ立ててsaga仕様を再度投稿っていうのは、マナー的にどうなるんでしょうか。どうも消すほうは出来ないようですので。

さすがに30時間以上かけた作品をバグったまま完結というのも悔しいので。

SSまとめサイトさまへ 

このSSは強制変換された仕様なので、できれば無視のほう願います。 
まあ「翌」をすべて取り払うだけで本来の文章になりますが。

>>66 
あんまり宜しくないですね 
それにこの板自体長い目(週、月単位)で投下していく作品を扱う場所なので、既に完結しているのであればニュース速報(VIP)などで投下してはどうでしょうか? 
こちらですとすぐにコメが返ってきますし、確か自動で落とせた気がします

>>69 
どういうわけか2chはずっと規制されています。 
家以外から近場3箇所のネカフェもすべてダメ。 
プロキシもだめ。 
ついでに携帯もダメです。

じゃあsagaバージョンで。 
ここより投稿されるのは、 
>>1-62 
のsagaによる強制変換なしモードです。 
シーンごとでなく、文字数稼ぎ優先の区切り。 


SS 妖夢「これがソードアート・オンラインですか」 


 SAOアニメ化一周年なので 

●白玉楼 

妖夢「これがソードアート・オンラインですか。 
   アバターは面倒なので私そのまま、髪の色だけ人間らしく黒にしてっと」 

妖夢「……リンク・スタート!」 

●第一層・はじまりの街 

妖夢「ここがはじまりの街ですね。剣士だらけで酔いそう。 
   私の二刀流はどこまで通用するかしら?」 

妖夢「まずは武器を変えないと。 
   初期装備の、両刃の直剣なんか不要。片刃の曲刀が欲しいのです」 

妖夢「あの店が良さそう——おじさん、これを下取りであの曲刀をください」 

NPC店員「あいよお嬢さん。カトラスだぜ」 

妖夢「小さくて軽いですね。リーチの短さが気になるけど……そうだ、もう一本ください」 

クライン「なんだなんだ、二刀流か? 変わってんな」 

妖夢「あなたは?」 

クライン「俺はクライン。おなじカトラス使い同士、よろしく」 

妖夢「私はヨームです」 

クライン「そうだ、ちょっとレクチャーしてくれねえか? 
     その迷いのない只者じゃない動き、あんたベーターだろ?」 

妖夢「いいえ違いますよ。私はリアルで剣術を嗜んでいるだけです」 

クライン「なんという希少種! ぜひフレンド登録してくれ」 

妖夢「いいですよー」

●はじまりの街・西の平原 

妖夢「これがリーバー、ソードスキルって便利ですね。 
   勝手に体が動いて、どんな素人もソードスキルを使ってる瞬間は達人になれる」 

クライン「なんだヨーム、さっきからみんな一撃じゃんかよ。どうなってんだ?」 

妖夢「力をすこし込めたら、威力や速さが増すみたいです。 
   さらに急所も狙えば、最終的にダメージが三倍くらいまで増えますね」 

クライン「急所って、すげえな。よし俺も……うわっ、また失敗した。 
     力を抜いてりゃ楽なんだが、上乗せを狙うと加減もタイミングも難しいな」 

妖夢「失敗を繰り返して馴れるしかありませんね」 

クライン「このイノシシ野郎、動くなよ。チェストォー!」 

妖夢「そうだ、二刀流を試してみようかしら」 

妖夢「あれ、リーバーが発動しない。ポストモーションは合ってるはずなのに」 

キリト「そこの君、この辺りに警告表示が出てないか?」 

妖夢「あ、確かに。すいませんが、あなたは……」 

キリト「俺はキリト。二刀流は装備するだけならシステム的に可能だけど、 
    ソードスキルが一切使えなくなるんだ。だからほとんど誰も真似しないよ」 

妖夢「およよ、知りませんでした。ありがとうございます」 

キリト「二刀流なんて無謀なことはせずに、普通に片手一本でいいと思うよ。 
    みんな素人だから、通常攻撃なんてへっぴり腰で格好悪くて、見てらんないからね。 
    ソードスキルのモーションに任せたほうがずっと良い」 

妖夢「まあ、別にソードスキルが使えなくても私は構わないんですけどね。こんな具合に」 

キリト「なっ! しょっぱなから四連撃って? 通常の連続攻撃だけでフレンジーボアを一気に倒した? 
    しかもアニメやゲームみたいに鮮やかな二刀流。どうなってるんだ」 

妖夢「通常攻撃もソードスキルとおなじです。 
   タイミングと狙い次第でいくらでも速く打ち込め、強力なダメージを与えられますよ」 

クライン「さすがリアル剣術使いは動きが違うな。まるでずっとソードスキルを使ってるみてえだ」 

キリト「そうなのか。やはり武道経験者が有利になるゲームなんだなSAOは。 
    アバターだけ見れば俺の妹よりすこし上くらいなのに」 

クライン「おめえ妹さんがいるのか! 俺に紹介してくれよ!」 

キリト「ちょっ、あいつは俺らみたいなゲーマーとは違うから」 

妖夢「クラインさん、なんでそんなに過剰反応してるんですか? 私も女の子なのに」 

クライン「いや……ヨームがリアルで女って限らねえし、その強さだから歳もアバターとは違うだろうし」 

妖夢「クラインさん、ゲームで出逢いを求めるなんて、不純です!」 

キリト「クラインっていうのか。あまり素を出すと、せっかく格好いい二枚目アバターが泣くぞ」 

クライン「ぐぬぬ、反省だぜ」

●はじまりの街・西の平原 

妖夢「これがリーバー、ソードスキルって便利ですね。 
   勝手に体が動いて、どんな素人もソードスキルを使ってる瞬間は達人になれる」 

クライン「なんだヨーム、さっきからみんな一撃じゃんかよ。どうなってんだ?」 

妖夢「力をすこし込めたら、威力や速さが増すみたいです。 
   さらに急所も狙えば、最終的にダメージが三倍くらいまで増えますね」 

クライン「急所って、すげえな。よし俺も……うわっ、また失敗した。 
     力を抜いてりゃ楽なんだが、上乗せを狙うと加減もタイミングも難しいな」 

妖夢「失敗を繰り返して馴れるしかありませんね」 

クライン「このイノシシ野郎、動くなよ。チェストォー!」 

妖夢「そうだ、二刀流を試してみようかしら」 

妖夢「あれ、リーバーが発動しない。ポストモーションは合ってるはずなのに」 

キリト「そこの君、この辺りに警告表示が出てないか?」 

妖夢「あ、確かに。すいませんが、あなたは……」 

キリト「俺はキリト。二刀流は装備するだけならシステム的に可能だけど、 
    ソードスキルが一切使えなくなるんだ。だからほとんど誰も真似しないよ」 

妖夢「およよ、知りませんでした。ありがとうございます」 

キリト「二刀流なんて無謀なことはせずに、普通に片手一本でいいと思うよ。 
    みんな素人だから、通常攻撃なんてへっぴり腰で格好悪くて、見てらんないからね。 
    ソードスキルのモーションに任せたほうがずっと良い」 

妖夢「まあ、別にソードスキルが使えなくても私は構わないんですけどね。こんな具合に」 

キリト「なっ! しょっぱなから四連撃って? 通常の連続攻撃だけでフレンジーボアを一気に倒した? 
    しかもアニメやゲームみたいに鮮やかな二刀流。どうなってるんだ」 

妖夢「通常攻撃もソードスキルとおなじです。 
   タイミングと狙い次第でいくらでも速く打ち込め、強力なダメージを与えられますよ」 

クライン「さすがリアル剣術使いは動きが違うな。まるでずっとソードスキルを使ってるみてえだ」 

キリト「そうなのか。やはり武道経験者が有利になるゲームなんだなSAOは。 
    アバターだけ見れば俺の妹よりすこし上くらいなのに」 

クライン「おめえ妹さんがいるのか! 俺に紹介してくれよ!」 

キリト「ちょっ、あいつは俺らみたいなゲーマーとは違うから」 

妖夢「クラインさん、なんでそんなに過剰反応してるんですか? 私も女の子なのに」 

クライン「いや……ヨームがリアルで女って限らねえし、その強さだから歳もアバターとは違うだろうし」 

妖夢「クラインさん、ゲームで出逢いを求めるなんて、不純です!」 

キリト「クラインっていうのか。あまり素を出すと、せっかく格好いい二枚目アバターが泣くぞ」 

クライン「ぐぬぬ、反省だぜ」

●夕刻 

妖夢「狩った狩った〜〜!」 

クライン「やっと一撃で倒せるようになったぜ。ありがとなキリト。さすがベータテスター」 

キリト「クラインのスジがいいからだよ。それよりもヨーム、きみの二刀流、良ければ俺に教えて欲しい」 

妖夢「難しいと思いますよ。システムのアシストがあるソードスキルと違って、 
   通常攻撃だけで行う私の二刀流は生半可なシステム外スキルよりも高難度なはずですから」 

キリト「こう見えても剣道の経験があるんだ。もちろん剣術と剣道は違うってわかってるけど」 

妖夢「考えておきます。まずは見て基本動作から盗んでみてください。 
   才能があれば気が向いたら教えてあげてもいいですよ」 

クライン「そろそろ俺は一端抜けるわ。あれ? ログアウトボタンがねえぞ」 

キリト「なんだって?」 

妖夢「……鐘の音が」 

●強制転移 

キリト「ここは、はじまりの街の、転移門広場」 

妖夢「変なのが湧いてますよ」 

クライン「宙に浮かぶ赤い顔なしローブ巨人たあ、悪趣味だな」 

茅場『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。私の名は茅場晶彦……』 

妖夢「悪・即・斬!」 

茅場『うわあ、やめてくれたまえ! どうしてレベル一か二でそんな高さまで跳べる!』 

妖夢「なにこいつ。図体ばかりでかくて、弱っちい」 

茅場『システムコマンド、当たり判定透過』 

妖夢「あ〜〜、ずっるーい」 

●チュートリアル 

茅場『カクカクシカジカ、プレイヤー諸君の健闘を祈る』 

妖夢「いじわるね茅場って人。せっかく人間になってたのに、本当の姿に戻っちゃった。 
   まあ髪が黒から銀になっただけなんだけど。これは目立っちゃいそうです。 
   うん、半霊まではさすがに再現できないようね」 

クライン「……ヨーム、マジで女の子だったのか。よく見たら妖精みたいで、なんと可憐な」 

妖夢「クラインさん鼻息荒いですよ」 

キリト「ちょっと来い、クライン、ヨーム」

●路地 

キリト「リソースうんたらかんたら、効率なんたらかんたら。だから俺と一緒に来い」 

クライン「すまんが、ダチを置いていけねえ」 

妖夢「クラインさんも一緒ならいいですけど、 
   私は女子なので、殿方とふたりきりというのは、すこし」 

キリト「……そうか。ふたりとも、なにかあったらメッセージ飛ばしてくれ」 

クライン「おうよ、この礼はそのうちな」 

キリト「またなっ」 

クライン「キリトよう、おめえ、案外可愛い顔してやがんな。けっこう好みだぜ」 

キリト「……おまえもその野武士面のほうが、似合ってるよ」 

妖夢「キリトさん。あの——初心者の私が言うのもなんですが、 
   ソロはとても危険らしいので、気をつけてください」 

キリト「ヨームこそ、いくら強いからといって、あまり無理はするなよ。じゃあな」 

クライン「いっちまったな……」 

妖夢「これからどうしましょう」 

クライン「なあヨーム。俺のパーティーに来ねえか?」 

妖夢「そうですね。ほかに知り合いもいませんし、おなじ曲刀使いのよしみで、お世話になります」 

クライン「…………!」 

妖夢「クラインさん、そのガッツポーズ、彼女候補ゲットとか勝手に思ってません? 
   いまがどういう状況か、考えてくださいね。 
   それに先に言っておきますけど、キリトさんのほうが私の好みです」 

クライン「——がっくり」 

●四日後・トールバーナの町 

クライン「うひゃあ、こんな早く迷宮区間近に来れるとは」 

妖夢「たぶん一番乗りですね」 

ダチ(アフロ[ピザ])「これもヨームさんが超強いおかげです!」 

ダチ(頭巾ヒゲ)「ありがとう、俺たちの戦乙女!」 

クライン「ようし、このまま迷宮区行ってみよう!」 

全員『おおぅ!』 

●半日後 

妖夢「いきなり着いちゃいましたね」 

クライン「まさかこの大扉、ボス部屋かこれ?」 

妖夢「まあいいです。ちょっと遊んでみましょう」 

クライン「危なくなったら即、撤退するからなヨーム」 

妖夢「判っていますよ」 

●一〇分後 

イルファング・ザ・コボルトロード「ぐふっ」 

妖夢「なんか倒しちゃいましたね。 
   コボルトロードとかいうの、弱い! 弱すぎる! 手応えがなさすぎます」 

クライン「異次元の戦いを見てしまった。ダメージの八割はヨームだったな。 
     最後のほう、一五連撃くらいしてなかったか?」 

妖夢「さっさと第二層に行ってみましょう。まだまだ斬り足りません。 
   ボスなんてみんな私が切り刻んであげます」

●第二層・主街区ウルバス 

クライン「弱ったな。この層、テーブルマウンテン? みたいなのがいっぱいあって、まるで迷路みてえだ」 

ダチ(トサカ頭)「仲間にベータテスターでもいれば案内役として助かるんでね?」 

妖夢「そうだ、キリトさんを仲間に勧誘しましょう。彼はベータテスターって言ってましたよね」 

クライン「よし、その手で行こう。たぶんレベルも俺たちのほうが上だろうし、誘いやすそうだ」 

妖夢「さっそくフレンドメッセージ送りますね」 

●数時間後 

キリト「……すごいなきみたちは。速攻なんてもんじゃないぞコレ」 

クライン「いや、すごいのはヨームだけだな。 
     俺たちほかの六人は剣豪少女のおこぼれに与ってるって情けない立場さ」 

妖夢「キリトさん。ぜひ私たち風林火山に加わってください。この先はあなたの目が必要なんです」 

キリト「俺はきみたちを見捨てた側だぞ。こんな身勝手なソロの俺に関わっても、なんの得も……」 

アスナ「ソロ? 私がいるのに?」 

妖夢「あのキリトさん。隣の綺麗な方は?」 

キリト「ああ、こいつは……」 

アスナ「アスナっていいます。ヨームさんが茅場のあんちくしょうを斬ってくれたおかげで、 
    勇気を分けて貰い、初日からはじまりの街を出発した口よ」 

妖夢「それは、どういたしまして」 

アスナ「その後なりゆきからこの黒い変な人といっしょにいるの。 
    この人とっても便利なナビゲーターよ。一家に一匹欲しいわね」 

キリト「変なのっていうな。一匹っていうな」 

アスナ「とにかく宿屋に引き籠もるより、戦ってるほうがずっと前向きよね。これからの旅、よろしくね」 

妖夢「はい、私もほかに女子がいれば助かります」 

キリト「アスナ、勝手に話を進めるなよ。俺はクラインたちについていくってまだ決めたわけじゃないんだぞ」 

アスナ「でもクラインさんたちの装備、私たちよりずっと立派じゃない。 
    いろいろと効率が良さそうよ。レベルも早く上昇するんじゃない?」 

妖夢「それは正解です。じつは私たちはみんなレベルが八以上あります。 
   一緒にいればアインクラッドでもっともハイレベルな集団でいられますよ。 
   ちなみに私は一一です」 

アスナ「ねっ。私はまだ六、キリトくんも七」 

キリト「よろしくお願いします!」

●およそ四ヶ月後 

茅場「最前線はすでに第五〇層か……およそ二日で一層ずつ攻略されている」 

茅場「台風の目となっているこのYo−muという二刀プレイヤー、 
   一〇連撃、二〇連撃といくらでも攻撃を繋げ、 
   私がデザインしたソードスキルなど眼中にない無双ぶり。一体何者なのだ」 

茅場「このままでは私の計画が大きく狂ってしまう。間に合わない」 

茅場「攻略が早すぎて、自殺もヤケになる者も激減し、死者はわずか八〇〇名しか出ていない。 
   これは予想とおおきくズレている。私の世界はもっと重く、暗くなるはずだったのに。 
   なぜ最前線があれほど和気藹々としているのだ!」 

茅場「仕方ない、そろそろ動くべきだな。私のアバターと、最強の神聖剣を引っ提げて」 

●第五〇層ボス攻略戦 

ヒースクリフ「や、やあ。私もボス攻略戦に参加させてくれないか。私の名はヒースクリフ」 

妖夢「この層のボスはクォーターボスでしたっけ。 
   偵察戦によると普通と比べたら超強力でやっかいな相手です。 
   第二五層とおなじく、当たり所が悪ければ一撃で殺されそうな勢いですよ。 
   あなたは初顔さんですよね。レベルは足りていますか?」 

ヒースクリフ「たぶん安全マージンは十分だよ。レベルは六〇くらいかな」 

妖夢「みなさん! 怪しいですこの人!」 

ヒースクリフ「い、言いがかりはよしたまえ」 

妖夢「きっちり安全マージンに足りてる人は、攻略組でも私とキリトさんくらいしかいません。 
   なぜなら攻略速度が早すぎて、みんな攻略戦とレベリング戦闘がほぼ平行作業になってしまい、 
   いつもギリギリだからです」 

クライン「もしかしてこのヒョロいの、ヨームが出現を予想してた、あいつか?」 

キリト「みんな、このヒースクリフというプレイヤーを、捕まえるんだ!」 

ヒースクリフ「うわなにをするやめr」 

キリト「あっ、消えた。転移結晶も使わずに。しかもGMしか使えない左手メニュー!」 

妖夢「このチート行為で確定ですね。いまの人が、まちがいなく茅場晶彦です」 

アスナ「さすがに鋭いわねヨームちゃん」 

妖夢「簡単に予見できることですよ。茅場晶彦がただ傍観者で満足できているはずがないんです。 
   私がよくいく幻想きょ……もとい学校でも、なにか異変あらば、 
   首謀者はおろか黒幕も一緒に混じって遊んでるんですよ」 

クライン「相当に面白い学校に通ってんだなおめえ。私立か?」 

妖夢「ディアベルさん、指名手配のほう、お願いします」 

ディアベル「よし任せろ! キバオウさん、茅場捜索は頼んだ」 

キバオウ「なんでや! 丸投げやん。わいも攻略戦に出たいんや!」 

クライン「キバオウは、レベルがちいっと足りねえな」 

キリト「今回ばかりはレベル四〇台では命がいくつあってもな」 

キバオウ「仕方あらへん。ならヒースクリフはわいの手で絶対に捕まえてみせたる! 
     来いやコーバッツ少佐」 

コーバッツ「ありえない……攻略戦に出れば、経験値がっぽりなのに」 

キバオウ「面倒くさいやっちゃな。よし、コーバッツはん。 
     ジブンいまから解放軍の中佐に昇進や。これでええやろ」 

コーバッツ「不詳コーバッツ中佐、ありがたく任務に精励します! 
      キバオウ中将閣下バンザイ!」 

キバオウ「茅場を捕まえたら、わいも大将に昇進やな。ほなら、行くで!」

●現実 

茅場「……私の世界なのに、完全に追い出されてしまった。 
   ほかのアバターで行っても性格までは隠せない。似たような対応が待っていそうで怖いな」 

茅場「このままでは、私のシナリオはメチャクチャだ。どうしよう。 
   こうなったらせめて、Yo−muの正体だけでも突き止めなければ」 

●日本某所 

茅場「彼女のIPからすると、この辺りのはずなのだが」 

茅場「なんだろう、この古ぼけた、朽ち果てかけた神社は」 

茅場「歩き通しで疲れたな。すこし裏の縁側で眠らせてもらおうか」 

●数時間後 

霊夢「あんた誰? あまり強そうに見えないわね」 

茅場「ワキを露出した謎の巫女だと? それに神社がすっかり綺麗になっている」 

霊夢「ああ、幻想入りね」 

茅場「幻想入り?」 

霊夢「あなた、外の世界で忘れ去られた人か、逃げだしたいと思ってた口でしょう」 

茅場「…………」 

霊夢「ここは幻想郷。外の世界で幻想になった人や、 
   人間でないなにかが訪れる、いわゆる異世界よ」 

茅場「い、異世界だと……まさかそのようなものが実在するとは」 

霊夢「とりあえずあんたのことは後で紫(ゆかり)に相談するとして、いまはこれ」 

茅場「ホウキ?」 

霊夢「働かざる者、食うべからず。 
   私はいまからこたつで昼寝するから、境内の掃除のほうよろしくね」 

茅場「この私に、単純労働をしろというのかね。それよりも幻想郷とやらについて詳しく」 

霊夢「煩いわね。あなたが外でどんな立場だったかなんて興味ないわ。 
   幻想郷に来たのなら、とりあえず郷に従いなさい」 

●その夜 

紫「霊夢、結界を勝手に緩めないでよ。なんの用?」 

霊夢「おかしなおっさんが幻想入りしたのよ。屁理屈ばっかこねて鬱陶しいから、引き取って」 

茅場「……ひどい巫女だ。晩飯の用意までさせられるとは」 

紫「あらあなた、妖夢を閉じ込めた張本人じゃない。 
  妖夢を解放するくらい私の能力なら簡単だけど、面白そうだから様子見してたら、 
  あなたのほうから自力で幻想入りしてくるなんて……さすがは世紀の大天才といったところかしら」 

霊夢「大天才? この胡散臭い屁理屈おっさんが?」 

茅場「私はこう見えても二〇代なんだが」 

霊夢「それならもっとそれらしい言動しなさいよ。 
   あまりに落ち着いてそんな肉のこけた頬をしてるから、 
   てっきり三五歳くらいの虚弱体質って思ってたわよ私」 

茅場「……きみは見も知らぬ虚弱な中年へいきなり雑用を押しつけるのかね」 

紫「天下の茅場晶彦も博麗の巫女を前にすれば形無しね」

●冥界・白玉楼 

茅場「ここは? ずいぶんと閑かな場所だが」 

紫「死後の世界のひとつよ」 

茅場「死後だと! ……幻想郷とは、また違うのか」 

紫「ええ。あなたが欲していた異世界というものは、いくらでもあるわ。 
  この日本と関係しているものだけでも、幻想郷にはじまり、 
  仙界・天界・極楽・冥界・黄泉・地獄・魔界・妖精界・月都などもろもろ。 
  世界に目を広げれば、それこそたくさんね。私も実数なんて把握できないほどよ」 

茅場「私はいったい、なにをしてきたのだ。ソードアート・オンラインを作って、 
   デスゲームを演出し、世界を創ったと豪語していたのは、ただのまやかしだったのか」 

紫「あなたの事情なんかどうでもいいわ。さあ、彼女があなたの探していた妖夢よ。 
  ちなみに顕界との接続は私の能力にあの霊夢の力をプラスしてるわ」 

茅場「……新手の虐待かね。顔中に心ない落書きがしてあるんだが。美人が台無しだろうに」 

幽々子「だって、妖夢が眠りっぱなしでおやつを買ってきてくれないから〜〜。お腹すいた〜〜」 

紫「あなたキャラ崩壊してるわよ」 

幽々子「うらめしやー」 

茅場「人魂? 亡霊? そういえば妖夢といったかな、この子も傍らにおおきな人魂が」 

幽々子「私はご明察のとおり亡霊だけれど、妖夢は半人半霊、妖怪よ。 
    半分生きていて、半分死んでるわ。そういう種族なの」 

茅場「……まさか異界の人にあらざる住人が、私のゲームをプレイしていたとは。 
   世の真実は近くにあったのか」 

幽々子「純粋な剣士である妖夢にとって、剣一本で戦うあなたの世界こそ、 
    長年ずっと追い求めるものだったのよ。誇りなさい茅場晶彦。 
    あなたは人間でない本物の異相たる存在を、ここまで魅了するほどの世界を、 
    たとえ仮初めであったとしても創り出すことに成功したのだから」 

茅場「なるほど、私はそういう意味では、夢を具現したといえるのか」 

紫「ではそろそろ帰りましょうか。茅場晶彦、あなたはまだ、顕界ですべきことがあるわよね」 

茅場「ああ。私にはやるべきことがある。だがひとつだけ、力を貸して欲しい」 

紫「なにかしら」 

茅場「このままでは攻略が早すぎて、私の準備が間に合わない。その手伝いをしてもらいたい」 

紫「それで私になんの得があるの?」 

茅場「世界を変革するささやかな可能性のスタートに、 
   立ち合える——歴史の目撃者ではなく、当事者として」 

紫「面白そうね。暇だし、ここは乗ってあげてもいいわよ」

●およそ四ヶ月後 

妖夢「いよいよ第一〇〇層ね」 

キリト「長いようで早かったな。これもみんな、ヨームやクラインのおかげだ。 
    あのとき俺を誘ってくれてありがとう」 

クライン「キリトこそすげえよ。二刀流なんてユニークスキルをゲットしてよう。 
     スターバースト・ストリームやジ・イクリプスのおかげで、 
     八〇層からこちら、楽させてもらったぜ」 

妖夢「元祖二刀流といっても私のはシステム外のソードスキルレスですから、 
   いまとなっては瞬間火力面でキリトさんには叶いません」 

キリト「いや違う。なにもかも、ヨームが起点だった。 
    きみの頑張りがみんなをわずか八ヶ月で頂上まで導いてくれたんだ。 
    やっかいなクォーターボスも第二五層はふいを付かれたが、 
    五〇層でも七五層でも死者が出なかったのは、すべて君が起こした奇跡さ。 
    俺の二刀流スキルなんか、飾りだよ」 

アスナ「キリトくん、ヨームちゃん。はやく来てよ。 
    二七連撃と三三連撃の主役がいないと始まらないじゃない」 

妖夢「あ、すいませんアスナさん」 

キリト「いま行く」 

エギル「よーし。ユニークスキル持ちが揃ったぞ」 

アスナ「まさか最後の関門が、ユニークスキル持ちが揃わないと開かないなんて、変なカラクリね」 

クライン「こうして並んでみると壮観だな。まずキリトの直剣による二刀流、 
     俺のカタナによる抜刀術、アスナの細剣による閃光剣、エギルの大斧による旋風斧、 
     シュミットの突撃槍による無限槍、シリカの短剣による千手剣、 
     リズベットの戦鎚による雷神鎚、アルゴの投剣による手裏剣術 
     ……最後に、クラディールの大剣による暗黒剣」 

クラディール「みなさんと違って、爆発的な攻撃翌力と引き替えに自分のHPを削りながら戦う暗黒剣 
       ……デスゲームなので、あまりにも使えない」 

ディアベル「それでもうらやましい。俺もユニークスキル欲しかった」 

妖夢「私もユニークスキルは運悪く得られませんでしたけど、 
   得たとしても曲刀二本では使えないので、けっきょく変わりませんね」 

クライン「わりいなヨーム。曲刀系のユニークが、まさか上位レアスキルのカタナにしかなかったなんて、 
     俺も意外だった。不人気カテゴリーは辛いな」 

妖夢「気にしないでください。両手武器のカタナスキルだと本格的に一本しか持てませんから、 
   二刀流を守りたい私としては片手用曲刀のままじゃないと都合がつかなかったんですよ」 

アルゴ「本当に運ダナ。まさかのユニークスキルが出たトキ、オイラは心底びっくりしたヨ」 

シリカ「すいません私みたいなのがユニーク持ちで……ヒロイン補正だと思います」 

リズベット「私も驚きだわ。ま、投剣や短剣や戦鎚は使用プレイヤーが少ないぶん、競争率も低いってものよ」 

ディアベル「片手用直剣はユーザーが三〇〇〇人はいるから、競争率高すぎたんだよなあ……二刀流」 

キリト「じつはディアベル、二刀流は片手用直剣専用じゃないんだ」 

ディアベル「なんだって?」 

キリト「このスキルだが、片手用の武器であればなんでも有効なんだよ。 
    二刀流だけ出現が早かったし、武器種に依存しない謎スキル。つまり——」 

ディアベル「片手用直剣専用の、ユニークスキルがまだ残ってるというのか」 

キリト「ああ。俺が思うにおそらく、あの某ヒースクリフが怪しい。 
    判明しているユニークスキルが九種類というのも、数としては中途半端だろう」 

キバオウ「なんやと! あれかいな、わいらがずっと探しとった茅場のおっさんは、 
     こん大扉の向こうに未知のユニークスキル隠してふんぞり返っとるわけかい。 
     コーバッツ上級大将、捕縛の用意はええか?」 

コーバッツ「万端です! キバオウ大元帥閣下、 
      我々の永きに渡った捜索の日々も、ここで終わるというものなんですね」 

妖夢「語っていても仕方ないです。行きましょう——開ければ、なにもかもが、わかります。 
   私もたぶん、最後のボスは茅場だと思っています」 

ディアベル「よし、みんな行こう! そして勝つんだ!」 

全員『おおぅ』

●第一〇〇層・紅玉宮最奥 

ヒースクリフ「待っていたぞ諸君……って、すごい人数だな」 

妖夢「攻略組、三レイド、一四〇人よ」 

ヒースクリフ「たしかにこの大所帯で戦っていれば、ほとんど人死には出そうにないな」 

キリト「久しぶりだな。覚悟、茅場晶彦!」 

ヒースクリフ「さて、大勢で乗り込んできたところ悪いが、 
       この深紅に染められた空間は見ての通り局所的な圏内で、 
       私もシステム上、一般プレイヤー扱いだ」 

キリト「…………」 

ヒースクリフ「つまり私を倒す手段はデュエルモードしかなく、 
       同時に戦うことが許される人数は、わずか一人でしかない」 

ディアベル「なんだと! 俺の絶対無敵なゴルディオンハンマー戦術が使えない!」 

ヒースクリフ「本来なら全プレイヤー中で最大の反応速度を持ち、勇者の役割を担ったキリトくん、 
       きみが魔王たる私の相手となるはずだったのだが、 
       あえて私が描いたシナリオ外の相手で決着を付けさせてもらおう——妖夢くん」 

キリト「ヨウム? ヨームじゃないのか」 

妖夢「……あなた、私の正体を知ってるのね」 

ヒースクリフ「ああ。よく知っているとも。白玉楼の防人、幻想郷最強の女流剣士、魂魄妖夢くん」 

クライン「おいてめえ! リアルばらしは最大のマナー違反だぞ! 
     ……メモメモ、コンパクヨウムちゃん」 

妖夢「ク、クラインさん?」 

クライン「リアルに戻ったとき、名前を知っておかねえと、会えないだろうがよ」 

妖夢「まったくもう……勝手な人ですね」 

クライン「ぶっちゃけるとヨームよう。俺、おめえがマジで好きだわ」 

妖夢「なっ! ななな、いきなり告白ですか?」 

クライン「だってよう、ゲームクリアしちまったら、離れちまうからな」 

妖夢「——そうですね。あの、告白してくださって、ありがとうございます。 
   前向きに検討したいと思います。真剣に」 

クライン「えっ? それってまさか……」 

妖夢「でもその前に、茅場を倒さないといけませんね」 

アスナ「そうか! この戦いが終われば私たちは……キリトくん!」 

キリト「アスナ?」 

アスナ「私、あなたが好きよ。後悔したくないの」 

キリト「……お、おうっ」 

シリカ「いけない! ここは自己主張しないと。私もキリトさんが好きです」 

リズベット「私もよ! 私もキリトが、好きー!」 

アルゴ「オレっちもキー坊のことが、お金の次くらいに好きダヨ」 

クライン「おいおいキリトのやつ、突発的にすげえモテっぷりだな」 

キリト「みんなごめん。好意はありがたいけど、俺の体はひとつしかないんだ。 
    俺は……俺は、アスナと付き合いたい」 

妖夢「じつは私も最初、キリトさんのことが好きだったんですけどね」 

クライン「なんとぉ? いや待てよ、最初ってこたぁ……」 

妖夢「アスナさんが相手じゃ分が悪すぎるって思って、自分で勝手に失恋してました。 
   予定調和になってくれて安心してます。お幸せにキリトさん、アスナさん!」 

アスナ「ありがとうヨームちゃん。ねえキリトくん、この戦いが終わったら、第二二層に家を買いましょう」

キリト「それもいいな……でもたぶん、あの男を倒したらこの世界とはもうおさらばじゃないかな」 

アスナ「残念ね……なら、リアルで会いましょう」 

キリト「ああ。会おう、アスナ。あ、これ俺のリアルネームと住所」 

アスナ「私はこれよ。覚えてね」 

妖夢「いいなあ。カップルいいなあ」 

クライン「なあヨーム、返事をな」 

妖夢「およっ? クラインさん、ずいぶん急かすんですね」 

ヒースクリフ「そろそろ本番に入っていいかね、妖夢くん」 

妖夢「やはり私を指名するんですか。わかりました。ちゃっちゃと終わらせましょう」 

クライン「茅場ぁ! なんでそこで止めやがるー!」 

ヒースクリフ「公平を期するため、諸君らに私だけが持つ、 
       最初にして最後のユニークスキルを教えておこう。神聖剣という」 

妖夢「なんですか、その大袈裟な名前。茅場さん、ずいぶん歳を食った中学生なんですね」 

ヒースクリフ「くっ……このし——ごにょにょ剣は、片手用直剣と大盾の合体スキルで、 
       全スキル中、最大の防御力を誇っている。一方で攻撃性能は普通だ。 
       ほかの九種類がすべて攻撃翌力に特化しているのと、正反対の属性といえるだろう」 

妖夢「さすがフェアネスを貫き通したGMの鑑ね。情報開示ありがとう。そこだけは認めてあげるわ」 

ヒースクリフ「なお私のレベルはきみと同じ一〇八としている。それは済まないが演出上、了承してもらいたい」 

妖夢「私が八ヶ月戦い続けて到達した高みを、データ操作一発とは、さすがにチートすぎますよ。 
   でも仕方ないわね。そうでもしないと最低限の勝負にすらならないもの。 
   一〇八か——奇しくも煩悩を示す数字とは、未熟な私らしくもあるわ」 

ヒースクリフ「それではデュエルだ。モードは——」 

妖夢「もちろん、完全決着モード!」 

ヒースクリフ「ためらいもしないのだな。さすが冥府の守護。それでこそこの戦いも盛り上がるというものだ」 

妖夢「私はこの世界で唯一、正真正銘、本物の剣士。あなたの命を奪うことに、なんの感情もないわよ」 

キリト「いよいよ始まるのか。最後の戦いが」 

アスナ「大丈夫よキリトくん。ヨームちゃんは最強なんだから」 

クライン「うお〜〜、ヨームの返事が気になってラストバトル観戦どころじゃねー!」 

ヒースクリフ「それでは——行くぞっ!」 

妖夢「盾ですか。折伏無間! なに、弾かれた?」 

ヒースクリフ「……ほう。まさか攻撃判定のある特殊盾を大胆に掴もうとするとは。だがまだまだぁ」 

妖夢「甘い! 炯眼剣!」 

ヒースクリフ「剣術で当て身技だと? ぐおぉ!」 

妖夢「生死流転斬! あなたていどのド素人剣術なんて、どれほどチートなスキルに頼ろうとも、 
   私の敵じゃない! キリトさんのほうがまだ強いわ。円心流転斬!」 

アスナ「ヨームちゃんが珍しく技名を叫んでいるわ。よほどノッてるのね」 

キリト「システムが用意した最強の攻撃スキルを持つ俺ですら、 
    ヨーム相手には最長三〇秒しか持たないからな。相手が悪すぎる」 

妖夢「最後は未来永劫斬! ——はい、いっちょあがり。HPバー、削りきったわよ」 

ヒースクリフ「……ああ、終わった。これでやっと、私の世界も次の役割へと向けられる」 

妖夢「なにそれ? ちょっと、なに深そうなことつぶやいてるんです——」 

システムアナウンス『七月七日七時七分、ゲームはクリアされました。ゲームはクリアされました……』 

妖夢「おー、七並び。これは吉兆だわ」 

クライン「待ってくれ〜〜! ヨーォォォォム!」

●黄昏の空間 

妖夢「あれ? ここはどこ? あ、まさかあれ、アインクラッドじゃない? 無音で崩壊してる……」 

妖夢「…………」 

妖夢「……意外と綺麗な光景ね」 

妖夢「…………」 

茅場「やあ、魂魄妖夢くん。待たせたね」 

妖夢「あなたは——茅場晶彦の、リアルの姿です? 
   城はどうなっているんですか? あそこにいた人たちは?」 

茅場「これはデータ消去の演出だよ。安心したまえ、あそこにいた生存者は、 
   全員すでにログアウトを終えた。私ときみ、キリトくんにアスナくんを除いてね」 

妖夢「キリトさんとアスナさんは?」 

茅場「正規の勇者にはすでに会ってきたよ。 
   あの城が崩壊し終わったら、自動的にログアウトするよう設定してきた」 

妖夢「どうして一〇〇〇人近くも死ぬような大異変をしでかしたのですか」 

茅場「そうだな。いつしか叶えるよりも行動することが目的となってしまい、 
   あまり深く考えたことはなかったのだが、妄想に取り憑かれたから、かな。空に浮かぶ鋼鉄の城の」 

妖夢「……あなたが作りたかったものって、本物の異世界ですよね。 
   だから私たちの顔や姿を元に戻し、死んだら本当に終わるゲームを演出したのでしょう」 

茅場「ああそうだ。だが私は幻想郷の巫女や、冥界で眠るきみを知ってしまった。 
   本当の世界とは、静謐で穏やかなものだった。 
   私のやってきたことはなんだったのだろうと、考えるようになったのだよ」 

妖夢「答えは出ましたか」 

茅場「それはこれから、電脳の情報網が出す。答えを求めるための種を世界へと蒔こうと思う。 
   私の知識や意識という、見えざる種を。何十年かすれば、きっと世界の仕組みは変わっているだろう」 

妖夢「……あなた、死ぬ気ね」 

茅場「元々このデスゲームをはじめたときから、生き長らえようなんて甘いことは、 
   カケラも思っていなかったさ。ひとつ礼を言おう、妖夢くん」 

妖夢「なんでしょう」 

茅場「君のおかげでこのソードアート・オンラインは、ひとつの異世界として完結できた。 
   私の用意していた、ありきたりでくだらないヒロイックファインタジーのシナリオより、 
   よほどエキサイティングだったよ。可能性を見せてくれて、ありがとう」 

妖夢「最後まで自分勝手な人ですね。私にその礼を受けるいわれはないわ。 
   勝手にお逝きなさい。私はこれからも冥界に住んでいますが、 
   私が存命中にあなたと会うことはないでしょう」 

茅場「夢は果たされた。私は地獄行きなど、これっぽっちも怖れはしないよ。 
   まもなくデータの完全消去が終わる。では、そろそろ行くよ」 

妖夢「消えた……知らないって幸せね。予言してもいいですけど、あなた多分、 
   年甲斐もなく泣き喚くことになるわよ。あ、聞こえてないか」

●冥界・白玉楼 

妖夢「おはよう、ただいまー!」 

幽々子「おかえりなさい。どうだった?」 

妖夢「なかなかに楽しい休暇でした幽々子さま。 
   八ヶ月か——ちょっと長くなりましたね。お勤め、頑張って取り戻します!」 

幽々子「そのまえに、顔を洗いましょうね。うふふふふ」 

妖夢「え? ——鏡、鏡……きゃー! ゆ、幽々子さまヒドいですー!」 

●閻魔裁判の間 

映姫「次の魂は……茅場晶彦ね」 

茅場「閻魔は人材不足なのか? こんな子供がやってるなんて」 

映姫「うるさいわねあなた。順番待ちの列ですでにブツブツ聞こえていたわよ。 
   すこしはお黙りなさい。人間が増えすぎて十王様方だけではまったく捌ききれないのよ。 
   私は幻想郷と、顕界でこの一帯を担当してるわ」 

茅場「幻想郷——なるほど、だからあの紫くんは、私に潜伏場所を変えさせたのか」 

映姫「部外者なのに八雲紫を知ってるの? 面倒な子が来たものね。ええっと、 
   罪状は自殺と……一万人もの拘束監禁! さらに大量殺人? 一〇〇〇人近くとは、たまげたわ! 
   私の受け持ちでこれほどの大悪党を見るなんて、戦国時代以来よ」 

茅場「たしか紫くんまたは藍(らん)くんから一筆、書状が届いてるはずだが」 

映姫「……ああ、これね。読むわよ。 
  『茅場晶彦の大脳新皮質の完全スキャンは成功の模様。 
   コピーされた意識群のうち、ひとつを複製回収。新世紀の式神として、幻想郷のために使役予定。 
   ネットに散らばったデータにも刺激を与えているので、覚醒は早いだろう。 
   代償として死亡したあなたは地獄で安心して大人しく服役なさい』 
   だそうよ。私には半分くらいしか判らないわね」 

茅場「そうか、無事に成功したか。あの八雲藍くんという式神の仕事は確かだったな。 
   まだ半年以上かかったであろう装置の調整と完成を、たった二ヶ月に短縮するとは。 
   さすが異界の生き物は、たとえ狐であろうとも格がちがうな」 

映姫「とりあえず白黒付けずともあなたの地獄行きは確定よ。落ちる先はもちろん、 
   最大の苦痛を受ける阿鼻叫喚の無間地獄ね。服役期間は——二〇万年ほどかしら」 

茅場「にっ、にじゅうまん? ちょっ、ちょっと待ってくれないか。 
   そんな長い間、私はずっと筆舌の苦しみを味わうのか?」 

映姫「仕方ないじゃない、あなたは平和国家日本にあるまじき無差別大量殺戮者なんだから。 
   これが戦乱の世なら数千年で済んだでしょうに……」 

茅場「差が開きすぎているだろう! どういう理屈なのか、教えてくれないか」 

映姫「現代の日本がなまじ史上かつ世界最高の安全な治安国家なものだから、 
   情状酌量の余地どころか凶悪犯罪の懲役乗算倍率レートがすごいことになってるのよ」 

茅場「理解しがたい」 

映姫「世に範を示すため、霊界にも戒めが必要なの。 
   八〇年近くもつづく類を見ない安寧の平時にあえてこのような大乱を起こすことが、 
   日本の歴史にどれだけの濃い影を落とす、罪深いことかおわかり? 
   あなたの悪影響はおそらく、世紀単位で波及するわよ」 

茅場「私はただ、自分の想い描いた夢想を実現するために……」 

映姫「だまらっしゃい狂人さん。あなたなんてまだまだ小物よ。 
   前世紀派手に暴れた某ヒットラーなんか聞いた話、刑期は五千万年らしいわよ。 
   乱世の時代で五千万だから、いま同じことをすれば数億年となるでしょうね。 
   まあ、あなたがこれから落ちる仏教の地獄とは別の、キリスト教系の地獄なんだけどね」 

茅場「私は仏教徒ではない。裁判のやりなおしを要求したいのだが、どこに申請すればいいのかね」 

映姫「とにかくこれがあなたに積める唯一の善行なのよ。それではさよなら茅場さん」 

茅場「お、おかあさ〜〜ん!」

●埼玉県某所 

明日奈「和人くん、最近ネットでなにを熱心に調べてるの?」 

和人「いくら調べても出ないんだよなあ明日奈……ヨームの二刀流らしき流派。 
   ヨームのやつ、ついに教えてくれなかったんだよ。見つけ次第、リアルで入門したい。 
   あれを覚えれば、まもなくサービス開始となるALOで俺は最強になれる!」 

明日奈「ヨームちゃん、また会えるといいわね」 

和人「俺がキリトとしている限り、きっと会えそうな気がする。ALOでなら」 

明日奈「でもそれって、ヨームちゃんがいる限り、和人くんは永久に最強になれないってことよ?」 

和人「あ〜〜、……ま、いいか。ヨームの後塵を拝するくらい、 
   どうってことない。会える嬉しさのほうが、ずっと上だ」 

明日奈「私もおなじよ、和人くん」 

●ダイシー・カフェ 

壷井「コンパクヨウムちゃん、どこにいんだよう。俺のスイートハート」 

ミルズ「クライン、大の男が昼間から呑むな喚くな泣くな。 
    あの子にまた会いたいなら、このゲームで待ってるんだな」 

壷井「なんだいこりゃ、エギル。アルフヘイン?」 

ミルズ「アルヴヘイム・オンラインと読む。通称はALO。 
    SAOサバイバーが千人単位で正式サービス開始を待ちわびている。 
    いくら半年以上閉じ込められたからといっても、あの日々を忘れるなんて出来やしないさ。 
    俺たち、もう知ってしまったんだからな」 

壷井「そうか……そうだよな。よっしゃ、今度こそ俺は男を上げるぜ、エギルよう。 
   目指すはヨームの横に並んでも遜色ない、最強の魔法戦士だ」 

ミルズ「無謀な挑戦の前に警告しておいてやる。 
    おまえさんより強かったキリトとアスナも、ALOをプレイするそうだぞ」 

壷井「リ、リア充は爆発してろぉ!」 

ミルズ「なに言ってんだか。おまえさんも無事再会したら、勝負駆けが待ってるだろ」 

壺井「おうよ。待ってろよヨーム!」

●博麗神社 

魔翌理沙「久しぶりだな妖夢! もう当たり前に動けるのか」 

妖夢「ええ。妖怪だからか、リハビリは不要でしたよ」 

魔翌理沙「いくらデスゲームといってもおまえのことだから、SAOは面白かっただろう?」 

妖夢「剣で暴れまくってさっぱりしてきました。恋も経験できたし、なかなか充実の日々でした」 

魔翌理沙「恋だと! それは聞き捨てならねえなあ。そこんとこ、詳しく教えてくれよ」 

霊夢「そんなことより妖夢、神社に来るなら酒くらい持ってきなさい」 

妖夢「まったく霊夢さんはまるで変わりませんね」 

魔翌理沙「そうだ。妖夢の用事ってなんだ?」 

妖夢「ああ、じつは面白いゲームがまもなく発売されるそうなんですよ。 
   ALO、アルヴヘイム・オンライン——妖精の国っていいます」 

魔翌理沙「ソードアート・オンラインとは別物か?」 

妖夢「ええ。このゲームですが、魔法を使えるのはもちろん、空を自由に飛べるらしいですよ。 
   それも、とんでもない広さだそうです」 

魔翌理沙「おおっ。SAOは剣だけなんで敬遠したが、ALOは楽しそうだぜ。よし、さっそく手配しないとな」 

霊夢「まさか妖夢、また結界に小さな穴を開けて回線を提供してくれって言うつもりじゃ」 

妖夢「霊夢さんのぶんは幽々子さまと紫さまが費用を捻出してくださるそうですよ」 

霊夢「よし、がんばって遊ぶわよ! 幻想郷は飛び回るには狭すぎるのよ。 
   たまには外界のゲームで息抜きしないとね! いまから前祝い酒よ!」 

魔翌理沙「タダとなると俄然乗り気だな霊夢。酒盛りとなれば、私も付き合うぜ」 

妖夢「私も今度こそ楽しく遊びたいです。クラインさん、また会いたいなあ——あ、一杯ください」 

魔翌理沙「まだ酒が入ってないのに、頬が赤いぜ妖夢」

※ここよりALO編・主人公はチルノ 

●霧雨魔法店 

チルノ「アルヴヘイム・オンラインであたい最強! 
    天才のあたいが来てやったからには、もう勝利は確定だよ!」 

魔翌理沙「よう、待ってたぜチルノ。ほらこいつを被って、設定するぞ」 

チルノ「おー、これが噂の妖精王国!」 

魔翌理沙「アミュスフィアのユーザー名はCirnoっと。おいチルノ、 
    キャラクター名もおなじにしとけよ。名前が分かってないと連絡が取れないからな。 
    システムがユーザーネームと被るって注意してきたら正解だぜ」 

チルノ「わかったー」 

魔翌理沙「『リンク・スタート』と言って、あとは適当に設定したらゲーム開始だぜ。 
    それじゃ、向こうで落ち合おうな」 

チルノ「リンク・スタート!」 

●エントリー 

システム『アルヴヘイム・オンラインへようこそ——キャラクター名を入力してください』 

チルノ「名前〜? ち、ち……魔翌理沙が同じにしろって言ってたな。 
    えーと、あたいの綴り綴り、あ、この左上のか! C・i・r・n・o」 

システム『ゲーム機本体のユーザーネームとおなじですが、宜しいでしょうか』 

チルノ「あたいったら天才ね」 

システム『種族を決めましょう』 

チルノ「氷、氷、水……ウンディーネ!●ウンディーネ領ホームタウン 

チルノ「あたい降臨!」 

チルノ「お〜〜、みんな青い髪、青い目、青い翼! ウンディーネ!」 

チルノ「容姿ランダムって言ってたけど、あたいはどんな姿かな? 
    大ちゃんみたいに胸が欲しい♪」 

チルノ「あ、この建物の壁、あたいが写ってる!」 

チルノ「…………」 

チルノ「なんであたいが、そのまんまいるの?」 

チルノ「メッセージ? ——M・a・r・i・s・a、魔翌理沙だ!」 

魔翌理沙『姿いっしょで驚いただろ? そいつはゲーム機に因幡てゐの幸運能力を掛けてるからだぜ』 

チルノ「そーなの? ……返事、返事」 

チルノ『まりさ とこにいる』 

魔翌理沙『世界樹のふもとにいる。 
    とてつもなくでっかい木まで飛んでこい。おまえなら簡単なはずだ』 

チルノ『わかつた せかいしゆにいく』 

チルノ「でっかい木、でっかい木……分かんない。やい、そこの青びょうたん」 

ディアベル「ん? おお、これは見たこともないほど小さなアバターだな。 
      珍しい。初期装備か。ゲームをはじめたばかりかい?」 

チルノ「世界樹ってどこ? 行きたいの」 

ディアベル「いきなりレネゲイドにでもなる気か。俺としてはあまりお奨めできないね」 

チルノ「レネゲイドって美味しい? じゃなくて、どこにあるのかな? 世界樹」 

ディアベル「そりゃあ、あちらにまっすぐ飛んでいけば、 
      ぶっとうし丸一日くらいで着くだろうけど」 

チルノ「ありがと。じゃああたい、行くね」

ディアベル「ちょっと待てよきみ。一人だと危ないぞ」 

チルノ「うん?」 

ディアベル「ここはMMO歴の長い俺がレクチャーしてあげよう。 
      こう見えても一週間後に迫ってる選挙で領主候補の筆頭なんだ。 
      顔が広いから、いくらでも仲間を紹介してあげられる」 

チルノ「いい。魔翌理沙と会う約束が先だ——飛翔!」 

ディアベル「んなっ! 補助コントローラーもなしに、なんだあの速度は! 
      初心者の随意飛行じゃないぞ。もう見えなくなった」 

ディアベル「そういえば、最初から猛烈な速さで飛ぶプレイヤーが何人かいるって噂があったな。 
      仮の名はセブンセンシズ・ガール。その一人がたしか……マリサ」 

●虹の谷 

チルノ「なんで山より高く飛べないのかな」 

チルノ「ときどき勝手に地面へ降ろされるの、うっとーしー!」 

チルノ「あ、ここだけ山が低い。なんか出た……『虹の谷』? ここを抜ければ、世界樹だな」 

チルノ「変な空飛ぶモンスターが出た! あたいの魔法を食らってみろ! パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「…………」 

チルノ「あれれ?」 

チルノ「いやー! 来るなー!」 

チルノ「はあはあ、死ぬかと思った。魔法が使えないんじゃ、 
    いくらあたいが天才でも最強になれない。こうなったら、聞くは一時の恥ね」 

チルノ『まほうつかえない おしえろ ぱあふえくとふりいす』 

魔翌理沙『ごにょごにょごにょごにょ。この呪文を唱えて、最後にパーフェクトフリーズとでも叫べ』 

チルノ「よし、リベンジだ」 

チルノ「ごにょごにょ、おー、謎の魔法陣だ。パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「なんか効果が違う気もするけど、効いた! ごにょごにょ、パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「倒した! わっはっは、無敵だ。あたい天才!」 

チルノ「パーフェクトフリーズ! パーフェクトフリーズ! あたい最強!」 

チルノ「——うわーん! 魔法力尽きたー! 逃げるー!」 

●央都アルン(世界樹のふもと) 

魔翌理沙「たった三時間で辿り着くとは、さすが生粋の妖精……もとい、天才だな。 
    私でも五時間近くかかったのに。やはりおまえをパートナーに選んで正解だったようだぜ」 

チルノ「……パーフェクトフリーズ、連続で八回しか使えない。 
    三〇分くらいで回復するけど、遅い!」 

魔翌理沙「そりゃ熟練度の低いうちは初期魔法でもMP消費が激しいからなあ。 
    武器も使えないと、ALOは戦えないぜ」 

チルノ「武器? あたいが使ってる、氷の剣の魔法はないの?」 

魔翌理沙「そういうのはかなり魔法スキルをあげないと無理だ。ここは幻想郷じゃないからな」 

チルノ「不便!」 

魔翌理沙「むくれるな。でもチルノ、楽しかっただろ」 

チルノ「うん楽しい。アルヴヘイム、幻想郷よりずっとず〜〜っと広い。 
    こんなに長くまっすぐ飛んでいられたの、はじめてだ」 

魔翌理沙「だからここは戦ってスキルを強くして、もっとどこにでも飛んで行けるようになろうな」 

チルノ「あたいに任せろ!」

途中から抜けてsageになってたorz

なんで上手く投稿できんのか分からん! 
勝手にsagaがsageに入れ替わる。消してもすぐ戻る。 
FireFoxでは投稿不可能。IEでも変な表示が。

>>73-91 はなかったことには……できんですな。 

今度こそ! 


妖夢「これがソードアート・オンラインですか」 

 SAOアニメ化一周年なので 

●白玉楼 

妖夢「これがソードアート・オンラインですか。 
   アバターは面倒なので私そのまま、髪の色だけ人間らしく黒にしてっと」 

妖夢「……リンク・スタート!」 

●第一層・はじまりの街 

妖夢「ここがはじまりの街ですね。剣士だらけで酔いそう。 
   私の二刀流はどこまで通用するかしら?」 

妖夢「まずは武器を変えないと。 
   初期装備の、両刃の直剣なんか不要。片刃の曲刀が欲しいのです」 

妖夢「あの店が良さそう——おじさん、これを下取りであの曲刀をください」 

NPC店員「あいよお嬢さん。カトラスだぜ」 

妖夢「小さくて軽いですね。リーチの短さが気になるけど……そうだ、もう一本ください」 

クライン「なんだなんだ、二刀流か? 変わってんな」 

妖夢「あなたは?」 

クライン「俺はクライン。おなじカトラス使い同士、よろしく」 

妖夢「私はヨームです」 

クライン「そうだ、ちょっとレクチャーしてくれねえか? 
     その迷いのない只者じゃない動き、あんたベーターだろ?」 

妖夢「いいえ違いますよ。私はリアルで剣術を嗜んでいるだけです」 

クライン「なんという希少種! ぜひフレンド登録してくれ」 

妖夢「いいですよー」 

●はじまりの街・西の平原 

妖夢「これがリーバー、ソードスキルって便利ですね。 
   勝手に体が動いて、どんな素人もソードスキルを使ってる瞬間は達人になれる」 

クライン「なんだヨーム、さっきからみんな一撃じゃんかよ。どうなってんだ?」 

妖夢「力をすこし込めたら、威力や速さが増すみたいです。 
   さらに急所も狙えば、最終的にダメージが三倍くらいまで増えますね」 

クライン「急所って、すげえな。よし俺も……うわっ、また失敗した。 
     力を抜いてりゃ楽なんだが、上乗せを狙うと加減もタイミングも難しいな」 

妖夢「失敗を繰り返して馴れるしかありませんね」 

クライン「このイノシシ野郎、動くなよ。チェストォー!」 

妖夢「そうだ、二刀流を試してみようかしら」 

妖夢「あれ、リーバーが発動しない。ポストモーションは合ってるはずなのに」 

キリト「そこの君、この辺りに警告表示が出てないか?」 

妖夢「あ、確かに。すいませんが、あなたは……」 

キリト「俺はキリト。二刀流は装備するだけならシステム的に可能だけど、 
    ソードスキルが一切使えなくなるんだ。だからほとんど誰も真似しないよ」 

妖夢「およよ、知りませんでした。ありがとうございます」 

キリト「二刀流なんて無謀なことはせずに、普通に片手一本でいいと思うよ。 
    みんな素人だから、通常攻撃なんてへっぴり腰で格好悪くて、見てらんないからね。 
    ソードスキルのモーションに任せたほうがずっと良い」 

妖夢「まあ、別にソードスキルが使えなくても私は構わないんですけどね。こんな具合に」 

キリト「なっ! しょっぱなから四連撃って? 通常の連続攻撃だけでフレンジーボアを一気に倒した? 
    しかもアニメやゲームみたいに鮮やかな二刀流。どうなってるんだ」 

妖夢「通常攻撃もソードスキルとおなじです。 
   タイミングと狙い次第でいくらでも速く打ち込め、強力なダメージを与えられますよ」 

クライン「さすがリアル剣術使いは動きが違うな。まるでずっとソードスキルを使ってるみてえだ」 

キリト「そうなのか。やはり武道経験者が有利になるゲームなんだなSAOは。 
    アバターだけ見れば俺の妹よりすこし上くらいなのに」 

クライン「おめえ妹さんがいるのか! 俺に紹介してくれよ!」 

キリト「ちょっ、あいつは俺らみたいなゲーマーとは違うから」 

妖夢「クラインさん、なんでそんなに過剰反応してるんですか? 私も女の子なのに」 

クライン「いや……ヨームがリアルで女って限らねえし、その強さだから歳もアバターとは違うだろうし」 

妖夢「クラインさん、ゲームで出逢いを求めるなんて、不純です!」 

キリト「クラインっていうのか。あまり素を出すと、せっかく格好いい二枚目アバターが泣くぞ」 

クライン「ぐぬぬ、反省だぜ」

●夕刻 

妖夢「狩った狩った〜〜!」 

クライン「やっと一撃で倒せるようになったぜ。ありがとなキリト。さすがベータテスター」 

キリト「クラインのスジがいいからだよ。それよりもヨーム、きみの二刀流、良ければ俺に教えて欲しい」 

妖夢「難しいと思いますよ。システムのアシストがあるソードスキルと違って、 
   通常攻撃だけで行う私の二刀流は生半可なシステム外スキルよりも高難度なはずですから」 

キリト「こう見えても剣道の経験があるんだ。もちろん剣術と剣道は違うってわかってるけど」 

妖夢「考えておきます。まずは見て基本動作から盗んでみてください。 
   才能があれば気が向いたら教えてあげてもいいですよ」 

クライン「そろそろ俺は一端抜けるわ。あれ? ログアウトボタンがねえぞ」 

キリト「なんだって?」 

妖夢「……鐘の音が」 

●強制転移 

キリト「ここは、はじまりの街の、転移門広場」 

妖夢「変なのが湧いてますよ」 

クライン「宙に浮かぶ赤い顔なしローブ巨人たあ、悪趣味だな」 

茅場『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。私の名は茅場晶彦……』 

妖夢「悪・即・斬!」 

茅場『うわあ、やめてくれたまえ! どうしてレベル一か二でそんな高さまで跳べる!』 

妖夢「なにこいつ。図体ばかりでかくて、弱っちい」 

茅場『システムコマンド、当たり判定透過』 

妖夢「あ〜〜、ずっるーい」 

●チュートリアル 

茅場『カクカクシカジカ、プレイヤー諸君の健闘を祈る』 

妖夢「いじわるね茅場って人。せっかく人間になってたのに、本当の姿に戻っちゃった。 
   まあ髪が黒から銀になっただけなんだけど。これは目立っちゃいそうです。 
   うん、半霊まではさすがに再現できないようね」 

クライン「……ヨーム、マジで女の子だったのか。よく見たら妖精みたいで、なんと可憐な」 

妖夢「クラインさん鼻息荒いですよ」 

キリト「ちょっと来い、クライン、ヨーム」

●路地 

キリト「リソースうんたらかんたら、効率なんたらかんたら。だから俺と一緒に来い」 

クライン「すまんが、ダチを置いていけねえ」 

妖夢「クラインさんも一緒ならいいですけど、 
   私は女子なので、殿方とふたりきりというのは、すこし」 

キリト「……そうか。ふたりとも、なにかあったらメッセージ飛ばしてくれ」 

クライン「おうよ、この礼はそのうちな」 

キリト「またなっ」 

クライン「キリトよう、おめえ、案外可愛い顔してやがんな。けっこう好みだぜ」 

キリト「……おまえもその野武士面のほうが、似合ってるよ」 

妖夢「キリトさん。あの——初心者の私が言うのもなんですが、 
   ソロはとても危険らしいので、気をつけてください」 

キリト「ヨームこそ、いくら強いからといって、あまり無理はするなよ。じゃあな」 

クライン「いっちまったな……」 

妖夢「これからどうしましょう」 

クライン「なあヨーム。俺のパーティーに来ねえか?」 

妖夢「そうですね。ほかに知り合いもいませんし、おなじ曲刀使いのよしみで、お世話になります」 

クライン「…………!」 

妖夢「クラインさん、そのガッツポーズ、彼女候補ゲットとか勝手に思ってません? 
   いまがどういう状況か、考えてくださいね。 
   それに先に言っておきますけど、キリトさんのほうが私の好みです」 

クライン「——がっくり」 

●四日後・トールバーナの町 

クライン「うひゃあ、こんな早く迷宮区間近に来れるとは」 

妖夢「たぶん一番乗りですね」 

ダチ(アフロデブ)「これもヨームさんが超強いおかげです!」 

ダチ(頭巾ヒゲ)「ありがとう、俺たちの戦乙女!」 

クライン「ようし、このまま迷宮区行ってみよう!」 

全員『おおぅ!』 

●半日後 

妖夢「いきなり着いちゃいましたね」 

クライン「まさかこの大扉、ボス部屋かこれ?」 

妖夢「まあいいです。ちょっと遊んでみましょう」 

クライン「危なくなったら即、撤退するからなヨーム」 

妖夢「判っていますよ」 

●一〇分後 

イルファング・ザ・コボルトロード「ぐふっ」 

妖夢「なんか倒しちゃいましたね。 
   コボルトロードとかいうの、弱い! 弱すぎる! 手応えがなさすぎます」 

クライン「異次元の戦いを見てしまった。ダメージの八割はヨームだったな。 
     最後のほう、一五連撃くらいしてなかったか?」 

妖夢「さっさと第二層に行ってみましょう。まだまだ斬り足りません。 
   ボスなんてみんな私が切り刻んであげます」

●第二層・主街区ウルバス 

クライン「弱ったな。この層、テーブルマウンテン? みたいなのがいっぱいあって、まるで迷路みてえだ」 

ダチ(トサカ頭)「仲間にベータテスターでもいれば案内役として助かるんでね?」 

妖夢「そうだ、キリトさんを仲間に勧誘しましょう。彼はベータテスターって言ってましたよね」 

クライン「よし、その手で行こう。たぶんレベルも俺たちのほうが上だろうし、誘いやすそうだ」 

妖夢「さっそくフレンドメッセージ送りますね」 

●数時間後 

キリト「……すごいなきみたちは。速攻なんてもんじゃないぞコレ」 

クライン「いや、すごいのはヨームだけだな。 
     俺たちほかの六人は剣豪少女のおこぼれに与ってるって情けない立場さ」 

妖夢「キリトさん。ぜひ私たち風林火山に加わってください。この先はあなたの目が必要なんです」 

キリト「俺はきみたちを見捨てた側だぞ。こんな身勝手なソロの俺に関わっても、なんの得も……」 

アスナ「ソロ? 私がいるのに?」 

妖夢「あのキリトさん。隣の綺麗な方は?」 

キリト「ああ、こいつは……」 

アスナ「アスナっていいます。ヨームさんが茅場のあんちくしょうを斬ってくれたおかげで、 
    勇気を分けて貰い、初日からはじまりの街を出発した口よ」 

妖夢「それは、どういたしまして」 

アスナ「その後なりゆきからこの黒い変な人といっしょにいるの。 
    この人とっても便利なナビゲーターよ。一家に一匹欲しいわね」 

キリト「変なのっていうな。一匹っていうな」 

アスナ「とにかく宿屋に引き籠もるより、戦ってるほうがずっと前向きよね。これからの旅、よろしくね」 

妖夢「はい、私もほかに女子がいれば助かります」 

キリト「アスナ、勝手に話を進めるなよ。俺はクラインたちについていくってまだ決めたわけじゃないんだぞ」 

アスナ「でもクラインさんたちの装備、私たちよりずっと立派じゃない。 
    いろいろと効率が良さそうよ。レベルも早く上昇するんじゃない?」 

妖夢「それは正解です。じつは私たちはみんなレベルが八以上あります。 
   一緒にいればアインクラッドでもっともハイレベルな集団でいられますよ。 
   ちなみに私は一一です」 

アスナ「ねっ。私はまだ六、キリトくんも七」 

キリト「よろしくお願いします!」

●およそ四ヶ月後 

茅場「最前線はすでに第五〇層か……およそ二日で一層ずつ攻略されている」 

茅場「台風の目となっているこのYo−muという二刀プレイヤー、 
   一〇連撃、二〇連撃といくらでも攻撃を繋げ、 
   私がデザインしたソードスキルなど眼中にない無双ぶり。一体何者なのだ」 

茅場「このままでは私の計画が大きく狂ってしまう。間に合わない」 

茅場「攻略が早すぎて、自殺もヤケになる者も激減し、死者はわずか八〇〇名しか出ていない。 
   これは予想とおおきくズレている。私の世界はもっと重く、暗くなるはずだったのに。 
   なぜ最前線があれほど和気藹々としているのだ!」 

茅場「仕方ない、そろそろ動くべきだな。私のアバターと、最強の神聖剣を引っ提げて」 

●第五〇層ボス攻略戦 

ヒースクリフ「や、やあ。私もボス攻略戦に参加させてくれないか。私の名はヒースクリフ」 

妖夢「この層のボスはクォーターボスでしたっけ。 
   偵察戦によると普通と比べたら超強力でやっかいな相手です。 
   第二五層とおなじく、当たり所が悪ければ一撃で殺されそうな勢いですよ。 
   あなたは初顔さんですよね。レベルは足りていますか?」 

ヒースクリフ「たぶん安全マージンは十分だよ。レベルは六〇くらいかな」 

妖夢「みなさん! 怪しいですこの人!」 

ヒースクリフ「い、言いがかりはよしたまえ」 

妖夢「きっちり安全マージンに足りてる人は、攻略組でも私とキリトさんくらいしかいません。 
   なぜなら攻略速度が早すぎて、みんな攻略戦とレベリング戦闘がほぼ平行作業になってしまい、 
   いつもギリギリだからです」 

クライン「もしかしてこのヒョロいの、ヨームが出現を予想してた、あいつか?」 

キリト「みんな、このヒースクリフというプレイヤーを、捕まえるんだ!」 

ヒースクリフ「うわなにをするやめr」 

キリト「あっ、消えた。転移結晶も使わずに。しかもGMしか使えない左手メニュー!」 

妖夢「このチート行為で確定ですね。いまの人が、まちがいなく茅場晶彦です」 

アスナ「さすがに鋭いわねヨームちゃん」 

妖夢「簡単に予見できることですよ。茅場晶彦がただ傍観者で満足できているはずがないんです。 
   私がよくいく幻想きょ……もとい学校でも、なにか異変あらば、 
   首謀者はおろか黒幕も一緒に混じって遊んでるんですよ」 

クライン「相当に面白い学校に通ってんだなおめえ。私立か?」 

妖夢「ディアベルさん、指名手配のほう、お願いします」 

ディアベル「よし任せろ! キバオウさん、茅場捜索は頼んだ」 

キバオウ「なんでや! 丸投げやん。わいも攻略戦に出たいんや!」 

クライン「キバオウは、レベルがちいっと足りねえな」 

キリト「今回ばかりはレベル四〇台では命がいくつあってもな」 

キバオウ「仕方あらへん。ならヒースクリフはわいの手で絶対に捕まえてみせたる! 
     来いやコーバッツ少佐」 

コーバッツ「ありえない……攻略戦に出れば、経験値がっぽりなのに」 

キバオウ「面倒くさいやっちゃな。よし、コーバッツはん。 
     ジブンいまから解放軍の中佐に昇進や。これでええやろ」 

コーバッツ「不詳コーバッツ中佐、ありがたく任務に精励します! 
      キバオウ中将閣下バンザイ!」 

キバオウ「茅場を捕まえたら、わいも大将に昇進やな。ほなら、行くで!」

●現実 

茅場「……私の世界なのに、完全に追い出されてしまった。 
   ほかのアバターで行っても性格までは隠せない。似たような対応が待っていそうで怖いな」 

茅場「このままでは、私のシナリオはメチャクチャだ。どうしよう。 
   こうなったらせめて、Yo−muの正体だけでも突き止めなければ」 

●日本某所 

茅場「彼女のIPからすると、この辺りのはずなのだが」 

茅場「なんだろう、この古ぼけた、朽ち果てかけた神社は」 

茅場「歩き通しで疲れたな。すこし裏の縁側で眠らせてもらおうか」 

●数時間後 

霊夢「あんた誰? あまり強そうに見えないわね」 

茅場「ワキを露出した謎の巫女だと? それに神社がすっかり綺麗になっている」 

霊夢「ああ、幻想入りね」 

茅場「幻想入り?」 

霊夢「あなた、外の世界で忘れ去られた人か、逃げだしたいと思ってた口でしょう」 

茅場「…………」 

霊夢「ここは幻想郷。外の世界で幻想になった人や、 
   人間でないなにかが訪れる、いわゆる異世界よ」 

茅場「い、異世界だと……まさかそのようなものが実在するとは」 

霊夢「とりあえずあんたのことは後で紫(ゆかり)に相談するとして、いまはこれ」 

茅場「ホウキ?」 

霊夢「働かざる者、食うべからず。 
   私はいまからこたつで昼寝するから、境内の掃除のほうよろしくね」 

茅場「この私に、単純労働をしろというのかね。それよりも幻想郷とやらについて詳しく」 

霊夢「煩いわね。あなたが外でどんな立場だったかなんて興味ないわ。 
   幻想郷に来たのなら、とりあえず郷に従いなさい」 

●その夜 

紫「霊夢、結界を勝手に緩めないでよ。なんの用?」 

霊夢「おかしなおっさんが幻想入りしたのよ。屁理屈ばっかこねて鬱陶しいから、引き取って」 

茅場「……ひどい巫女だ。晩飯の用意までさせられるとは」 

紫「あらあなた、妖夢を閉じ込めた張本人じゃない。 
  妖夢を解放するくらい私の能力なら簡単だけど、面白そうだから様子見してたら、 
  あなたのほうから自力で幻想入りしてくるなんて……さすがは世紀の大天才といったところかしら」 

霊夢「大天才? この胡散臭い屁理屈おっさんが?」 

茅場「私はこう見えても二〇代なんだが」 

霊夢「それならもっとそれらしい言動しなさいよ。 
   あまりに落ち着いてそんな肉のこけた頬をしてるから、 
   てっきり三五歳くらいの虚弱体質って思ってたわよ私」 

茅場「……きみは見も知らぬ虚弱な中年へいきなり雑用を押しつけるのかね」 

紫「天下の茅場晶彦も博麗の巫女を前にすれば形無しね」

●冥界・白玉楼 

茅場「ここは? ずいぶんと閑かな場所だが」 

紫「死後の世界のひとつよ」 

茅場「死後だと! ……幻想郷とは、また違うのか」 

紫「ええ。あなたが欲していた異世界というものは、いくらでもあるわ。 
  この日本と関係しているものだけでも、幻想郷にはじまり、 
  仙界・天界・極楽・冥界・黄泉・地獄・魔界・妖精界・月都などもろもろ。 
  世界に目を広げれば、それこそたくさんね。私も実数なんて把握できないほどよ」 

茅場「私はいったい、なにをしてきたのだ。ソードアート・オンラインを作って、 
   デスゲームを演出し、世界を創ったと豪語していたのは、ただのまやかしだったのか」 

紫「あなたの事情なんかどうでもいいわ。さあ、彼女があなたの探していた妖夢よ。 
  ちなみに顕界との接続は私の能力にあの霊夢の力をプラスしてるわ」 

茅場「……新手の虐待かね。顔中に心ない落書きがしてあるんだが。美人が台無しだろうに」 

幽々子「だって、妖夢が眠りっぱなしでおやつを買ってきてくれないから〜〜。お腹すいた〜〜」 

紫「あなたキャラ崩壊してるわよ」 

幽々子「うらめしやー」 

茅場「人魂? 亡霊? そういえば妖夢といったかな、この子も傍らにおおきな人魂が」 

幽々子「私はご明察のとおり亡霊だけれど、妖夢は半人半霊、妖怪よ。 
    半分生きていて、半分死んでるわ。そういう種族なの」 

茅場「……まさか異界の人にあらざる住人が、私のゲームをプレイしていたとは。 
   世の真実は近くにあったのか」 

幽々子「純粋な剣士である妖夢にとって、剣一本で戦うあなたの世界こそ、 
    長年ずっと追い求めるものだったのよ。誇りなさい茅場晶彦。 
    あなたは人間でない本物の異相たる存在を、ここまで魅了するほどの世界を、 
    たとえ仮初めであったとしても創り出すことに成功したのだから」 

茅場「なるほど、私はそういう意味では、夢を具現したといえるのか」 

紫「ではそろそろ帰りましょうか。茅場晶彦、あなたはまだ、顕界ですべきことがあるわよね」 

茅場「ああ。私にはやるべきことがある。だがひとつだけ、力を貸して欲しい」 

紫「なにかしら」 

茅場「このままでは攻略が早すぎて、私の準備が間に合わない。その手伝いをしてもらいたい」 

紫「それで私になんの得があるの?」 

茅場「世界を変革するささやかな可能性のスタートに、 
   立ち合える——歴史の目撃者ではなく、当事者として」 

紫「面白そうね。暇だし、ここは乗ってあげてもいいわよ」

●およそ四ヶ月後 

妖夢「いよいよ第一〇〇層ね」 

キリト「長いようで早かったな。これもみんな、ヨームやクラインのおかげだ。 
    あのとき俺を誘ってくれてありがとう」 

クライン「キリトこそすげえよ。二刀流なんてユニークスキルをゲットしてよう。 
     スターバースト・ストリームやジ・イクリプスのおかげで、 
     八〇層からこちら、楽させてもらったぜ」 

妖夢「元祖二刀流といっても私のはシステム外のソードスキルレスですから、 
   いまとなっては瞬間火力面でキリトさんには叶いません」 

キリト「いや違う。なにもかも、ヨームが起点だった。 
    きみの頑張りがみんなをわずか八ヶ月で頂上まで導いてくれたんだ。 
    やっかいなクォーターボスも第二五層はふいを付かれたが、 
    五〇層でも七五層でも死者が出なかったのは、すべて君が起こした奇跡さ。 
    俺の二刀流スキルなんか、飾りだよ」 

アスナ「キリトくん、ヨームちゃん。はやく来てよ。 
    二七連撃と三三連撃の主役がいないと始まらないじゃない」 

妖夢「あ、すいませんアスナさん」 

キリト「いま行く」 

エギル「よーし。ユニークスキル持ちが揃ったぞ」 

アスナ「まさか最後の関門が、ユニークスキル持ちが揃わないと開かないなんて、変なカラクリね」 

クライン「こうして並んでみると壮観だな。まずキリトの直剣による二刀流、 
     俺のカタナによる抜刀術、アスナの細剣による閃光剣、エギルの大斧による旋風斧、 
     シュミットの突撃槍による無限槍、シリカの短剣による千手剣、 
     リズベットの戦鎚による雷神鎚、アルゴの投剣による手裏剣術 
     ……最後に、クラディールの大剣による暗黒剣」

クラディール「みなさんと違って、爆発的な攻撃力と引き替えに自分のHPを削りながら戦う暗黒剣 
       ……デスゲームなので、あまりにも使えない」 

ディアベル「それでもうらやましい。俺もユニークスキル欲しかった」 

妖夢「私もユニークスキルは運悪く得られませんでしたけど、 
   得たとしても曲刀二本では使えないので、けっきょく変わりませんね」 

クライン「わりいなヨーム。曲刀系のユニークが、まさか上位レアスキルのカタナにしかなかったなんて、 
     俺も意外だった。不人気カテゴリーは辛いな」 

妖夢「気にしないでください。両手武器のカタナスキルだと本格的に一本しか持てませんから、 
   二刀流を守りたい私としては片手用曲刀のままじゃないと都合がつかなかったんですよ」 

アルゴ「本当に運ダナ。まさかのユニークスキルが出たトキ、オイラは心底びっくりしたヨ」 

シリカ「すいません私みたいなのがユニーク持ちで……ヒロイン補正だと思います」 

リズベット「私も驚きだわ。ま、投剣や短剣や戦鎚は使用プレイヤーが少ないぶん、競争率も低いってものよ」 

ディアベル「片手用直剣はユーザーが三〇〇〇人はいるから、競争率高すぎたんだよなあ……二刀流」 

キリト「じつはディアベル、二刀流は片手用直剣専用じゃないんだ」 

ディアベル「なんだって?」 

キリト「このスキルだが、片手用の武器であればなんでも有効なんだよ。 
    二刀流だけ出現が早かったし、武器種に依存しない謎スキル。つまり——」 

ディアベル「片手用直剣専用の、ユニークスキルがまだ残ってるというのか」 

キリト「ああ。俺が思うにおそらく、あの某ヒースクリフが怪しい。 
    判明しているユニークスキルが九種類というのも、数としては中途半端だろう」 

キバオウ「なんやと! あれかいな、わいらがずっと探しとった茅場のおっさんは、 
     こん大扉の向こうに未知のユニークスキル隠してふんぞり返っとるわけかい。 
     コーバッツ上級大将、捕縛の用意はええか?」 

コーバッツ「万端です! キバオウ大元帥閣下、 
      我々の永きに渡った捜索の日々も、ここで終わるというものなんですね」 

妖夢「語っていても仕方ないです。行きましょう——開ければ、なにもかもが、わかります。 
   私もたぶん、最後のボスは茅場だと思っています」 

ディアベル「よし、みんな行こう! そして勝つんだ!」 

全員『おおぅ』

●第一〇〇層・紅玉宮最奥 

ヒースクリフ「待っていたぞ諸君……って、すごい人数だな」 

妖夢「攻略組、三レイド、一四〇人よ」 

ヒースクリフ「たしかにこの大所帯で戦っていれば、ほとんど人死には出そうにないな」 

キリト「久しぶりだな。覚悟、茅場晶彦!」 

ヒースクリフ「さて、大勢で乗り込んできたところ悪いが、 
       この深紅に染められた空間は見ての通り局所的な圏内で、 
       私もシステム上、一般プレイヤー扱いだ」 

キリト「…………」 

ヒースクリフ「つまり私を倒す手段はデュエルモードしかなく、 
       同時に戦うことが許される人数は、わずか一人でしかない」 

ディアベル「なんだと! 俺の絶対無敵なゴルディオンハンマー戦術が使えない!」 

ヒースクリフ「本来なら全プレイヤー中で最大の反応速度を持ち、勇者の役割を担ったキリトくん、 
       きみが魔王たる私の相手となるはずだったのだが、 
       あえて私が描いたシナリオ外の相手で決着を付けさせてもらおう——妖夢くん」 

キリト「ヨウム? ヨームじゃないのか」 

妖夢「……あなた、私の正体を知ってるのね」 

ヒースクリフ「ああ。よく知っているとも。白玉楼の防人、幻想郷最強の女流剣士、魂魄妖夢くん」 

クライン「おいてめえ! リアルばらしは最大のマナー違反だぞ! 
     ……メモメモ、コンパクヨウムちゃん」 

妖夢「ク、クラインさん?」 

クライン「リアルに戻ったとき、名前を知っておかねえと、会えないだろうがよ」 

妖夢「まったくもう……勝手な人ですね」 

クライン「ぶっちゃけるとヨームよう。俺、おめえがマジで好きだわ」 

妖夢「なっ! ななな、いきなり告白ですか?」 

クライン「だってよう、ゲームクリアしちまったら、離れちまうからな」 

妖夢「——そうですね。あの、告白してくださって、ありがとうございます。 
   前向きに検討したいと思います。真剣に」 

クライン「えっ? それってまさか……」 

妖夢「でもその前に、茅場を倒さないといけませんね」 

アスナ「そうか! この戦いが終われば私たちは……キリトくん!」 

キリト「アスナ?」 

アスナ「私、あなたが好きよ。後悔したくないの」 

キリト「……お、おうっ」 

シリカ「いけない! ここは自己主張しないと。私もキリトさんが好きです」 

リズベット「私もよ! 私もキリトが、好きー!」 

アルゴ「オレっちもキー坊のことが、お金の次くらいに好きダヨ」 

クライン「おいおいキリトのやつ、突発的にすげえモテっぷりだな」 

キリト「みんなごめん。好意はありがたいけど、俺の体はひとつしかないんだ。 
    俺は……俺は、アスナと付き合いたい」 

妖夢「じつは私も最初、キリトさんのことが好きだったんですけどね」 

クライン「なんとぉ? いや待てよ、最初ってこたぁ……」 

妖夢「アスナさんが相手じゃ分が悪すぎるって思って、自分で勝手に失恋してました。 
   予定調和になってくれて安心してます。お幸せにキリトさん、アスナさん!」 

アスナ「ありがとうヨームちゃん。ねえキリトくん、この戦いが終わったら、第二二層に家を買いましょう」

キリト「それもいいな……でもたぶん、あの男を倒したらこの世界とはもうおさらばじゃないかな」 

アスナ「残念ね……なら、リアルで会いましょう」 

キリト「ああ。会おう、アスナ。あ、これ俺のリアルネームと住所」 

アスナ「私はこれよ。覚えてね」 

妖夢「いいなあ。カップルいいなあ」 

クライン「なあヨーム、返事をな」 

妖夢「およっ? クラインさん、ずいぶん急かすんですね」 

ヒースクリフ「そろそろ本番に入っていいかね、妖夢くん」 

妖夢「やはり私を指名するんですか。わかりました。ちゃっちゃと終わらせましょう」 

クライン「茅場ぁ! なんでそこで止めやがるー!」 

ヒースクリフ「公平を期するため、諸君らに私だけが持つ、 
       最初にして最後のユニークスキルを教えておこう。神聖剣という」 

妖夢「なんですか、その大袈裟な名前。茅場さん、ずいぶん歳を食った中学生なんですね」 

ヒースクリフ「くっ……このし——ごにょにょ剣は、片手用直剣と大盾の合体スキルで、 
       全スキル中、最大の防御力を誇っている。一方で攻撃性能は普通だ。 
       ほかの九種類がすべて攻撃力に特化しているのと、正反対の属性といえるだろう」 

妖夢「さすがフェアネスを貫き通したGMの鑑ね。情報開示ありがとう。そこだけは認めてあげるわ」 

ヒースクリフ「なお私のレベルはきみと同じ一〇八としている。それは済まないが演出上、了承してもらいたい」 

妖夢「私が八ヶ月戦い続けて到達した高みを、データ操作一発とは、さすがにチートすぎますよ。 
   でも仕方ないわね。そうでもしないと最低限の勝負にすらならないもの。 
   一〇八か——奇しくも煩悩を示す数字とは、未熟な私らしくもあるわ」 

ヒースクリフ「それではデュエルだ。モードは——」 

妖夢「もちろん、完全決着モード!」 

ヒースクリフ「ためらいもしないのだな。さすが冥府の守護。それでこそこの戦いも盛り上がるというものだ」 

妖夢「私はこの世界で唯一、正真正銘、本物の剣士。あなたの命を奪うことに、なんの感情もないわよ」 

キリト「いよいよ始まるのか。最後の戦いが」 

アスナ「大丈夫よキリトくん。ヨームちゃんは最強なんだから」 

クライン「うお〜〜、ヨームの返事が気になってラストバトル観戦どころじゃねー!」 

ヒースクリフ「それでは——行くぞっ!」 

妖夢「盾ですか。折伏無間! なに、弾かれた?」 

ヒースクリフ「……ほう。まさか攻撃判定のある特殊盾を大胆に掴もうとするとは。だがまだまだぁ」 

妖夢「甘い! 炯眼剣!」 

ヒースクリフ「剣術で当て身技だと? ぐおぉ!」 

妖夢「生死流転斬! あなたていどのド素人剣術なんて、どれほどチートなスキルに頼ろうとも、 
   私の敵じゃない! キリトさんのほうがまだ強いわ。円心流転斬!」 

アスナ「ヨームちゃんが珍しく技名を叫んでいるわ。よほどノッてるのね」 

キリト「システムが用意した最強の攻撃スキルを持つ俺ですら、 
    ヨーム相手には最長三〇秒しか持たないからな。相手が悪すぎる」 

妖夢「最後は未来永劫斬! ——はい、いっちょあがり。HPバー、削りきったわよ」 

ヒースクリフ「……ああ、終わった。これでやっと、私の世界も次の役割へと向けられる」 

妖夢「なにそれ? ちょっと、なに深そうなことつぶやいてるんです——」 

システムアナウンス『七月七日七時七分、ゲームはクリアされました。ゲームはクリアされました……』 

妖夢「おー、七並び。これは吉兆だわ」 

クライン「待ってくれ〜〜! ヨーォォォォム!」

●黄昏の空間 

妖夢「あれ? ここはどこ? あ、まさかあれ、アインクラッドじゃない? 無音で崩壊してる……」 

妖夢「…………」 

妖夢「……意外と綺麗な光景ね」 

妖夢「…………」 

茅場「やあ、魂魄妖夢くん。待たせたね」 

妖夢「あなたは——茅場晶彦の、リアルの姿です? 
   城はどうなっているんですか? あそこにいた人たちは?」 

茅場「これはデータ消去の演出だよ。安心したまえ、あそこにいた生存者は、 
   全員すでにログアウトを終えた。私ときみ、キリトくんにアスナくんを除いてね」 

妖夢「キリトさんとアスナさんは?」 

茅場「正規の勇者にはすでに会ってきたよ。 
   あの城が崩壊し終わったら、自動的にログアウトするよう設定してきた」 

妖夢「どうして一〇〇〇人近くも死ぬような大異変をしでかしたのですか」 

茅場「そうだな。いつしか叶えるよりも行動することが目的となってしまい、 
   あまり深く考えたことはなかったのだが、妄想に取り憑かれたから、かな。空に浮かぶ鋼鉄の城の」 

妖夢「……あなたが作りたかったものって、本物の異世界ですよね。 
   だから私たちの顔や姿を元に戻し、死んだら本当に終わるゲームを演出したのでしょう」 

茅場「ああそうだ。だが私は幻想郷の巫女や、冥界で眠るきみを知ってしまった。 
   本当の世界とは、静謐で穏やかなものだった。 
   私のやってきたことはなんだったのだろうと、考えるようになったのだよ」 

妖夢「答えは出ましたか」 

茅場「それはこれから、電脳の情報網が出す。答えを求めるための種を世界へと蒔こうと思う。 
   私の知識や意識という、見えざる種を。何十年かすれば、きっと世界の仕組みは変わっているだろう」 

妖夢「……あなた、死ぬ気ね」 

茅場「元々このデスゲームをはじめたときから、生き長らえようなんて甘いことは、 
   カケラも思っていなかったさ。ひとつ礼を言おう、妖夢くん」 

妖夢「なんでしょう」 

茅場「君のおかげでこのソードアート・オンラインは、ひとつの異世界として完結できた。 
   私の用意していた、ありきたりでくだらないヒロイックファインタジーのシナリオより、 
   よほどエキサイティングだったよ。可能性を見せてくれて、ありがとう」 

妖夢「最後まで自分勝手な人ですね。私にその礼を受けるいわれはないわ。 
   勝手にお逝きなさい。私はこれからも冥界に住んでいますが、 
   私が存命中にあなたと会うことはないでしょう」 

茅場「夢は果たされた。私は地獄行きなど、これっぽっちも怖れはしないよ。 
   まもなくデータの完全消去が終わる。では、そろそろ行くよ」 

妖夢「消えた……知らないって幸せね。予言してもいいですけど、あなた多分、 
   年甲斐もなく泣き喚くことになるわよ。あ、聞こえてないか」 

●冥界・白玉楼 

妖夢「おはよう、ただいまー!」 

幽々子「おかえりなさい。どうだった?」 

妖夢「なかなかに楽しい休暇でした幽々子さま。 
   八ヶ月か——ちょっと長くなりましたね。お勤め、頑張って取り戻します!」 

幽々子「そのまえに、顔を洗いましょうね。うふふふふ」 

妖夢「え? ——鏡、鏡……きゃー! ゆ、幽々子さまヒドいですー!」

●閻魔裁判の間 

映姫「次の魂は……茅場晶彦ね」 

茅場「閻魔は人材不足なのか? こんな子供がやってるなんて」 

映姫「うるさいわねあなた。順番待ちの列ですでにブツブツ聞こえていたわよ。 
   すこしはお黙りなさい。人間が増えすぎて十王様方だけではまったく捌ききれないのよ。 
   私は幻想郷と、顕界でこの一帯を担当してるわ」 

茅場「幻想郷——なるほど、だからあの紫くんは、私に潜伏場所を変えさせたのか」 

映姫「部外者なのに八雲紫を知ってるの? 面倒な子が来たものね。ええっと、 
   罪状は自殺と……一万人もの拘束監禁! さらに大量殺人? 一〇〇〇人近くとは、たまげたわ! 
   私の受け持ちでこれほどの大悪党を見るなんて、戦国時代以来よ」 

茅場「たしか紫くんまたは藍(らん)くんから一筆、書状が届いてるはずだが」 

映姫「……ああ、これね。読むわよ。 
  『茅場晶彦の大脳新皮質の完全スキャンは成功の模様。 
   コピーされた意識群のうち、ひとつを複製回収。新世紀の式神として、幻想郷のために使役予定。 
   ネットに散らばったデータにも刺激を与えているので、覚醒は早いだろう。 
   代償として死亡したあなたは地獄で安心して大人しく服役なさい』 
   だそうよ。私には半分くらいしか判らないわね」 

茅場「そうか、無事に成功したか。あの八雲藍くんという式神の仕事は確かだったな。 
   まだ半年以上かかったであろう装置の調整と完成を、たった二ヶ月に短縮するとは。 
   さすが異界の生き物は、たとえ狐であろうとも格がちがうな」 

映姫「とりあえず白黒付けずともあなたの地獄行きは確定よ。落ちる先はもちろん、 
   最大の苦痛を受ける阿鼻叫喚の無間地獄ね。服役期間は——二〇万年ほどかしら」 

茅場「にっ、にじゅうまん? ちょっ、ちょっと待ってくれないか。 
   そんな長い間、私はずっと筆舌の苦しみを味わうのか?」 

映姫「仕方ないじゃない、あなたは平和国家日本にあるまじき無差別大量殺戮者なんだから。 
   これが戦乱の世なら数千年で済んだでしょうに……」 

茅場「差が開きすぎているだろう! どういう理屈なのか、教えてくれないか」 

映姫「現代の日本がなまじ史上かつ世界最高の安全な治安国家なものだから、 
   情状酌量の余地どころか凶悪犯罪の懲役乗算倍率レートがすごいことになってるのよ」 

茅場「理解しがたい」 

映姫「世に範を示すため、霊界にも戒めが必要なの。 
   八〇年近くもつづく類を見ない安寧の平時にあえてこのような大乱を起こすことが、 
   日本の歴史にどれだけの濃い影を落とす、罪深いことかおわかり? 
   あなたの悪影響はおそらく、世紀単位で波及するわよ」 

茅場「私はただ、自分の想い描いた夢想を実現するために……」 

映姫「だまらっしゃい狂人さん。あなたなんてまだまだ小物よ。 
   前世紀派手に暴れた某ヒットラーなんか聞いた話、刑期は五千万年らしいわよ。 
   乱世の時代で五千万だから、いま同じことをすれば数億年となるでしょうね。 
   まあ、あなたがこれから落ちる仏教の地獄とは別の、キリスト教系の地獄なんだけどね」 

茅場「私は仏教徒ではない。裁判のやりなおしを要求したいのだが、どこに申請すればいいのかね」 

映姫「とにかくこれがあなたに積める唯一の善行なのよ。それではさよなら茅場さん」 

茅場「お、おかあさ〜〜ん!」

●閻魔裁判の間 

映姫「次の魂は……茅場晶彦ね」 

茅場「閻魔は人材不足なのか? こんな子供がやってるなんて」 

映姫「うるさいわねあなた。順番待ちの列ですでにブツブツ聞こえていたわよ。 
   すこしはお黙りなさい。人間が増えすぎて十王様方だけではまったく捌ききれないのよ。 
   私は幻想郷と、顕界でこの一帯を担当してるわ」 

茅場「幻想郷——なるほど、だからあの紫くんは、私に潜伏場所を変えさせたのか」 

映姫「部外者なのに八雲紫を知ってるの? 面倒な子が来たものね。ええっと、 
   罪状は自殺と……一万人もの拘束監禁! さらに大量殺人? 一〇〇〇人近くとは、たまげたわ! 
   私の受け持ちでこれほどの大悪党を見るなんて、戦国時代以来よ」 

茅場「たしか紫くんまたは藍(らん)くんから一筆、書状が届いてるはずだが」 

映姫「……ああ、これね。読むわよ。 
  『茅場晶彦の大脳新皮質の完全スキャンは成功の模様。 
   コピーされた意識群のうち、ひとつを複製回収。新世紀の式神として、幻想郷のために使役予定。 
   ネットに散らばったデータにも刺激を与えているので、覚醒は早いだろう。 
   代償として死亡したあなたは地獄で安心して大人しく服役なさい』 
   だそうよ。私には半分くらいしか判らないわね」 

茅場「そうか、無事に成功したか。あの八雲藍くんという式神の仕事は確かだったな。 
   まだ半年以上かかったであろう装置の調整と完成を、たった二ヶ月に短縮するとは。 
   さすが異界の生き物は、たとえ狐であろうとも格がちがうな」 

映姫「とりあえず白黒付けずともあなたの地獄行きは確定よ。落ちる先はもちろん、 
   最大の苦痛を受ける阿鼻叫喚の無間地獄ね。服役期間は——二〇万年ほどかしら」 

茅場「にっ、にじゅうまん? ちょっ、ちょっと待ってくれないか。 
   そんな長い間、私はずっと筆舌の苦しみを味わうのか?」 

映姫「仕方ないじゃない、あなたは平和国家日本にあるまじき無差別大量殺戮者なんだから。 
   これが戦乱の世なら数千年で済んだでしょうに……」 

茅場「差が開きすぎているだろう! どういう理屈なのか、教えてくれないか」 

映姫「現代の日本がなまじ史上かつ世界最高の安全な治安国家なものだから、 
   情状酌量の余地どころか凶悪犯罪の懲役乗算倍率レートがすごいことになってるのよ」 

茅場「理解しがたい」 

映姫「世に範を示すため、霊界にも戒めが必要なの。 
   八〇年近くもつづく類を見ない安寧の平時にあえてこのような大乱を起こすことが、 
   日本の歴史にどれだけの濃い影を落とす、罪深いことかおわかり? 
   あなたの悪影響はおそらく、世紀単位で波及するわよ」 

茅場「私はただ、自分の想い描いた夢想を実現するために……」 

映姫「だまらっしゃい狂人さん。あなたなんてまだまだ小物よ。 
   前世紀派手に暴れた某ヒットラーなんか聞いた話、刑期は五千万年らしいわよ。 
   乱世の時代で五千万だから、いま同じことをすれば数億年となるでしょうね。 
   まあ、あなたがこれから落ちる仏教の地獄とは別の、キリスト教系の地獄なんだけどね」 

茅場「私は仏教徒ではない。裁判のやりなおしを要求したいのだが、どこに申請すればいいのかね」 

映姫「とにかくこれがあなたに積める唯一の善行なのよ。それではさよなら茅場さん」 

茅場「お、おかあさ〜〜ん!」

●埼玉県某所 

明日奈「和人くん、最近ネットでなにを熱心に調べてるの?」 

和人「いくら調べても出ないんだよなあ明日奈……ヨームの二刀流らしき流派。 
   ヨームのやつ、ついに教えてくれなかったんだよ。見つけ次第、リアルで入門したい。 
   あれを覚えれば、まもなくサービス開始となるALOで俺は最強になれる!」 

明日奈「ヨームちゃん、また会えるといいわね」 

和人「俺がキリトとしている限り、きっと会えそうな気がする。ALOでなら」 

明日奈「でもそれって、ヨームちゃんがいる限り、和人くんは永久に最強になれないってことよ?」 

和人「あ〜〜、……ま、いいか。ヨームの後塵を拝するくらい、 
   どうってことない。会える嬉しさのほうが、ずっと上だ」 

明日奈「私もおなじよ、和人くん」 

●ダイシー・カフェ 

壷井「コンパクヨウムちゃん、どこにいんだよう。俺のスイートハート」 

ミルズ「クライン、大の男が昼間から呑むな喚くな泣くな。 
    あの子にまた会いたいなら、このゲームで待ってるんだな」 

壷井「なんだいこりゃ、エギル。アルフヘイン?」 

ミルズ「アルヴヘイム・オンラインと読む。通称はALO。 
    SAOサバイバーが千人単位で正式サービス開始を待ちわびている。 
    いくら半年以上閉じ込められたからといっても、あの日々を忘れるなんて出来やしないさ。 
    俺たち、もう知ってしまったんだからな」 

壷井「そうか……そうだよな。よっしゃ、今度こそ俺は男を上げるぜ、エギルよう。 
   目指すはヨームの横に並んでも遜色ない、最強の魔法戦士だ」 

ミルズ「無謀な挑戦の前に警告しておいてやる。 
    おまえさんより強かったキリトとアスナも、ALOをプレイするそうだぞ」 

壷井「リ、リア充は爆発してろぉ!」 

ミルズ「なに言ってんだか。おまえさんも無事再会したら、勝負駆けが待ってるだろ」 

壺井「おうよ。待ってろよヨーム!」

●博麗神社 

魔理沙「久しぶりだな妖夢! もう当たり前に動けるのか」 

妖夢「ええ。妖怪だからか、リハビリは不要でしたよ」 

魔理沙「いくらデスゲームといってもおまえのことだから、SAOは面白かっただろう?」 

妖夢「剣で暴れまくってさっぱりしてきました。恋も経験できたし、なかなか充実の日々でした」 

魔理沙「恋だと! それは聞き捨てならねえなあ。そこんとこ、詳しく教えてくれよ」 

霊夢「そんなことより妖夢、神社に来るなら酒くらい持ってきなさい」 

妖夢「まったく霊夢さんはまるで変わりませんね」 

魔理沙「そうだ。妖夢の用事ってなんだ?」 

妖夢「ああ、じつは面白いゲームがまもなく発売されるそうなんですよ。 
   ALO、アルヴヘイム・オンライン——妖精の国っていいます」 

魔理沙「ソードアート・オンラインとは別物か?」 

妖夢「ええ。このゲームですが、魔法を使えるのはもちろん、空を自由に飛べるらしいですよ。 
   それも、とんでもない広さだそうです」 

魔理沙「おおっ。SAOは剣だけなんで敬遠したが、ALOは楽しそうだぜ。よし、さっそく手配しないとな」 

霊夢「まさか妖夢、また結界に小さな穴を開けて回線を提供してくれって言うつもりじゃ」 

妖夢「霊夢さんのぶんは幽々子さまと紫さまが費用を捻出してくださるそうですよ」 

霊夢「よし、がんばって遊ぶわよ! 幻想郷は飛び回るには狭すぎるのよ。 
   たまには外界のゲームで息抜きしないとね! いまから前祝い酒よ!」 

魔理沙「タダとなると俄然乗り気だな霊夢。酒盛りとなれば、私も付き合うぜ」 

妖夢「私も今度こそ楽しく遊びたいです。クラインさん、また会いたいなあ——あ、一杯ください」 

魔理沙「まだ酒が入ってないのに、頬が赤いぜ妖夢」

※ここよりALO編 主人公はチルノ 

●霧雨魔法店 

チルノ「アルヴヘイム・オンラインであたい最強! 
    天才のあたいが来てやったからには、もう勝利は確定だよ!」 

魔理沙「よう、待ってたぜチルノ。ほらこいつを被って、設定するぞ」 

チルノ「おー、これが噂の妖精王国!」 

魔理沙「アミュスフィアのユーザー名はCirnoっと。おいチルノ、 
    キャラクター名もおなじにしとけよ。名前が分かってないと連絡が取れないからな。 
    システムがユーザーネームと被るって注意してきたら正解だぜ」 

チルノ「わかったー」 

魔理沙「『リンク・スタート』と言って、あとは適当に設定したらゲーム開始だぜ。 
    それじゃ、向こうで落ち合おうな」 

チルノ「リンク・スタート!」 

●エントリー 

システム『アルヴヘイム・オンラインへようこそ——キャラクター名を入力してください』 

チルノ「名前〜? ち、ち……魔理沙が同じにしろって言ってたな。 
    えーと、あたいの綴り綴り、あ、この左上のか! C・i・r・n・o」 

システム『ゲーム機本体のユーザーネームとおなじですが、宜しいでしょうか』 

チルノ「あたいったら天才ね」 

システム『種族を決めましょう』 

チルノ「氷、氷、水……ウンディーネ!」 

●ウンディーネ領ホームタウン 

チルノ「あたい降臨!」 

チルノ「お〜〜、みんな青い髪、青い目、青い翼! ウンディーネ!」 

チルノ「容姿ランダムって言ってたけど、あたいはどんな姿かな? 
    大ちゃんみたいに胸が欲しい♪」 

チルノ「あ、この建物の壁、あたいが写ってる!」 

チルノ「…………」 

チルノ「なんであたいが、そのまんまいるの?」 

チルノ「メッセージ? ——M・a・r・i・s・a、魔理沙だ!」 

魔理沙『姿いっしょで驚いただろ? そいつはゲーム機に因幡てゐの幸運能力を掛けてるからだぜ』 

チルノ「そーなの? ……返事、返事」 

チルノ『まりさ とこにいる』 

魔理沙『世界樹のふもとにいる。 
    とてつもなくでっかい木まで飛んでこい。おまえなら簡単なはずだ』 

チルノ『わかつた せかいしゆにいく』 

チルノ「でっかい木、でっかい木……分かんない。やい、そこの青びょうたん」 

ディアベル「ん? おお、これは見たこともないほど小さなアバターだな。 
      珍しい。初期装備か。ゲームをはじめたばかりかい?」 

チルノ「世界樹ってどこ? 行きたいの」 

ディアベル「いきなりレネゲイドにでもなる気か。俺としてはあまりお奨めできないね」 

チルノ「レネゲイドって美味しい? じゃなくて、どこにあるのかな? 世界樹」 

ディアベル「そりゃあ、あちらにまっすぐ飛んでいけば、 
      ぶっとうし丸一日くらいで着くだろうけど」 

チルノ「ありがと。じゃああたい、行くね」

ディアベル「ちょっと待てよきみ。一人だと危ないぞ」 

チルノ「うん?」 

ディアベル「ここはMMO歴の長い俺がレクチャーしてあげよう。 
      こう見えても一週間後に迫ってる選挙で領主候補の筆頭なんだ。 
      顔が広いから、いくらでも仲間を紹介してあげられる」 

チルノ「いい。魔理沙と会う約束が先だ——飛翔!」 

ディアベル「んなっ! 補助コントローラーもなしに、なんだあの速度は! 
      初心者の随意飛行じゃないぞ。もう見えなくなった」 

ディアベル「そういえば、最初から猛烈な速さで飛ぶプレイヤーが何人かいるって噂があったな。 
      仮の名はセブンセンシズ・ガール。その一人がたしか……マリサ」 

●虹の谷 

チルノ「なんで山より高く飛べないのかな」 

チルノ「ときどき勝手に地面へ降ろされるの、うっとーしー!」 

チルノ「あ、ここだけ山が低い。なんか出た……『虹の谷』? ここを抜ければ、世界樹だな」 

チルノ「変な空飛ぶモンスターが出た! あたいの魔法を食らってみろ! パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「…………」 

チルノ「あれれ?」 

チルノ「いやー! 来るなー!」 

チルノ「はあはあ、死ぬかと思った。魔法が使えないんじゃ、 
    いくらあたいが天才でも最強になれない。こうなったら、聞くは一時の恥ね」 

チルノ『まほうつかえない おしえろ ぱあふえくとふりいす』 

魔理沙『ごにょごにょごにょごにょ。この呪文を唱えて、最後にパーフェクトフリーズとでも叫べ』 

チルノ「よし、リベンジだ」 

チルノ「ごにょごにょ、おー、謎の魔法陣だ。パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「なんか効果が違う気もするけど、効いた! ごにょごにょ、パーフェクトフリーズ!」 

チルノ「倒した! わっはっは、無敵だ。あたい天才!」 

チルノ「パーフェクトフリーズ! パーフェクトフリーズ! あたい最強!」 

チルノ「——うわーん! 魔法力尽きたー! 逃げるー!」 

●央都アルン(世界樹のふもと) 

魔理沙「たった三時間で辿り着くとは、さすが生粋の妖精……もとい、天才だな。 
    私でも五時間近くかかったのに。やはりおまえをパートナーに選んで正解だったようだぜ」 

チルノ「……パーフェクトフリーズ、連続で八回しか使えない。 
    三〇分くらいで回復するけど、遅い!」 

魔理沙「そりゃ熟練度の低いうちは初期魔法でもMP消費が激しいからなあ。 
    武器も使えないと、ALOは戦えないぜ」 

チルノ「武器? あたいが使ってる、氷の剣の魔法はないの?」 

魔理沙「そういうのはかなり魔法スキルをあげないと無理だ。ここは幻想郷じゃないからな」 

チルノ「不便!」 

魔理沙「むくれるな。でもチルノ、楽しかっただろ」 

チルノ「うん楽しい。アルヴヘイム、幻想郷よりずっとず〜〜っと広い。 
    こんなに長くまっすぐ飛んでいられたの、はじめてだ」 

魔理沙「だからここは戦ってスキルを強くして、もっとどこにでも飛んで行けるようになろうな」 

チルノ「あたいに任せろ!」

●三〇分後 

チルノ「飽きた」 

魔理沙「早っ」 

チルノ「敵を探して、見つけて、剣や魔法で倒すだけ。単純なことの繰り返し、つまんない」 

魔理沙「仕方ないなあ。じゃあスキマから預かったこいつでも付けてやる。 
    私はもう一人でも大丈夫だしな。お友達がいれば退屈しないだろう」 

チルノ「なにこの白くて小さくて可愛いの!」 

ユイ「八雲結(やくもゆい)といいます。 
   このゲームではプライベート用のナビゲーション・ピクシーとなっていますが、 
   本来はあなたと同じくらいの大きさなんですよ」 

チルノ「やくもゆいちゃんは、あたいみたいに天才?」 

ユイ「お役に立てると思います。ただユイと、呼んでください。チルノさん」 

チルノ「よろしくな!」 

●サラマンダー領ホームタウン・首都ガタン 

クライン「領主やめるって、本当かよレイム」 

霊夢「好きでやってるんじゃないわよ。見目が良くて強いからって変な理由で、 
   勝手に人気投票で赤トカゲの頭目にさせられたんだから」 

クライン「でも初代領主がわずか二週間で辞任って、 
     補佐役の俺としても、ようやく馴れてきたのによう」 

霊夢「私はね、央都アルンですることがあるの。 
   こんな博麗の巫女みたいな面倒なこと、現実だけで結構よ」 

クライン「てことは、世界樹に行くつもりかレイム」 

霊夢「グランド・クエストとかいうのを平らげて、 
   世界樹のてっぺんにいる妖精王オベイロンに謁見して、限定解除でいくらでも飛ぶ!」 

クライン「サービス開始一ヶ月半でグランド・クエストに挑戦? 
     いくらなんでも早すぎると思うぞおい。クエストが実装されたのも、たった一週間前だろ」 

霊夢「先行した魔理沙とチルノがエンシェント級の装備でガッチリ固めたって聞いたのよ。 
   三週間しか遊んでないチルノが、武器防具でもう私を追い抜いたって、我慢できないわ。 
   アルン周辺でないと手に入らないものがたくさんあるわけ。あんたも来なさい」 

クライン「うへえ。領主と補佐役が揃って消えると、サラマンダーはどうなっちまうんだ」 

霊夢「そんなの知ったこっちゃないわ。モーティマーとユージーンの兄弟がやりたがってるみたいだし、 
   摩擦も鬱陶しいから、頭目の地位なんて熨斗(のし)でも付けてくれてやるわよ」 

クライン「その思い切りの良さ、まるでヨウムみてえだな」 

霊夢「妖夢もホームタウンを出てアルンに来るそうよ。 
   そろそろ文通だけじゃ物足りなくなってきたところじゃないクライン?」 

クライン「よっしゃ! 付いていくぜレイム」

●央都アルン 

チルノ「あははは、霊夢の髪が赤! 変だ」 

霊夢「こればかりはね。黒髪はインプやスプリガン、ノームでなれるけど、 
   特性が私の趣味じゃないのよ。やはり魔法も武器もパワーよパワー!」 

魔理沙「まあ、博麗の巫女が隠密性や幻惑魔法、素材採集に秀でても仕方ないからな」 

霊夢「魔理沙は外見を優先してちゃっかりケットシーなんて選んでるじゃない。 
   耳がまるでネコみたいだし、しっぽまで生やして、可愛すぎるわよ。 
   あなたなら本来、星型のエフェクトが出る魔法をいくつも使えるインプでしょう」 

魔理沙「インプじゃ金髪になれないぜ。暗中行動が出来るからってインプを選んだ妖夢はまっくろくろすけだ」 

クライン「なあおいレイム、ヨウムはどこだ?」 

チルノ「誰このおじさん」 

クライン「まだおじさんって言われる歳じゃねえよ」 

魔理沙「ほう、この男が、もしかして」 

妖夢「あ、あの。お久しぶりです……クラインさん」 

クライン「おおうっ、黒髪のヨウム! まるで出会った最初の日を思い出すなあ」 

妖夢「はい。もう一年になるんですね。懐かしいです」 

クライン「こちらでもよろしくな、ヨウム」 

妖夢「クラインさんも。あの、さっそくフレンド登録を……」 

クライン「おうよ」 

チルノ「妖夢の顔が赤い! なんだなんだ? 珍しいぞ!」 

ユイ「ヨウムさんの心拍が急上昇していますね。ドキドキです。可愛いです。素敵です」 

魔理沙「まあアレだな、そういうわけだぜ」 

チルノ「妖夢はこのおじさんが好きなのか?」 

妖夢「ちっ、チルノ!」 

クライン「……これで、これで俺もやっと、爆発しろと言われる側になれる」 

チルノ「おー、男泣きだ」 

霊夢「チルノのせいで収拾が付かないじゃない。 
   ほらほら、妖夢とクラインはさっさとあちらで告白でもなんでも済ましてきなさい」 

●一週間後 

巨像『未だ天の高みを知らぬ者よ——』 

チルノ「挑戦するー!」 

霊夢「ふっふっふ、腕が鳴るわね」 

魔理沙「グランド・クエストへ初挑戦か。 
    一昨日は三〇人のパーティーが全滅したそうだが、たった五人でどこまで通じるかな」 

クライン「ま、俺らならなんとかなるんじゃねーの? ヨウムもいるし」 

妖夢「私はクラインさん赴くところ、どこへでも馳せ参じます」 

ユイ「おててを繋いで、すっかりお熱いですねえ。ひゅーひゅーなのです」 

クライン「おいマリサ。このチビスケやたらと高性能だけど、本当にナビゲーション・ピクシーなのか?」 

魔理沙「ユイはあの悪名高いSAOを動かしてたカーディナル・システムの一部だぜ。 
    私の知り合いが途中からメインフレーム維持管理に加わった関係者でね、 
    疑似人格といえるレベルまで成長してたから、消去するに忍びなくてサルベージしたんだ」 

クライン「……どういうチートだよ」

●さらに一週間後 

チルノ「おまえ誰? 妙なトサカ頭」 

キリト「俺はキリト。クラインに呼ばれた助っ人だよ」 

リーファ「お兄ちゃん、こんな小さな子、はじめて見たわ!」 

アスナ「バグかしら? 活動にいろいろと支障あるんじゃない」 

チルノ「あたいは最強だから、ちんまくても平気だ」 

魔理沙「そいつの言ってることは本当だぜ。私たちの中で、 
    チルノはなぜか最強のエアレイド魔法使いだ。全プレイヤーでも上位五人に入ってるだろうな」 

霊夢「純粋だから、きっとシステムとの相性がいいのよ。 
   妖夢も武器で最強だし、どっちつかずで半端な私と魔理沙の立つ瀬がないわ」 

妖夢「キリトさん、アスナさん。ご無沙汰してます」 

キリト「……ヨーム。久しぶり」 

アスナ「ヨームちゃん、元気そうね。どこか落ち着いて見えるわ」 

妖夢「また一緒に戦うことが出来て、嬉しいです。 
   それから私ですが、ALOではヨウムで登録しています」 

アスナ「ヨウムちゃん、よろしくね」 

クライン「キリトもアスナも来てくれてありがとな」 

キリト「クラインも直では久々だな。元気そうで……ん? クラインとヨウム、どこか似てるな」 

リーファ「あれれ、防具がまるでペアルック〜〜。あやしー」 

妖夢「はい……付き合ってます」 

リーファ「マジ! うらやましいなー」 

アスナ「えっ! おめでとうヨウムちゃん! 良かったね」 

キリト「おいおい、初耳だぞ」 

クライン「そりゃサプライズは隠しておくってのが相場だかんな。 
     これで俺もおまえらに追いついたぞ。コンビとしての強さは、俺らが上だがな」 

キリト「ほほう。それじゃあ、試してみるか」 

妖夢「別にいいですよ。SAOではとても選ぶことが無理だった完全決着モードでの試合、 
   キリトさんと一度、してみたかったんです」 

●試合後 

キリト「……なにがコンビとしての強さだよ。 
    ほとんどヨウムだけじゃないか。ゲームで死んだのは一年以上ぶりだぜ」 

クライン「まあ、俺の強さを一〇〇とすりゃ、ヨウムは一〇〇〇くれぇ強いからな。 
     俺は牽制役・囮役に徹してるほうが、ペアとしてはかえって強いわけだ」 

アスナ「私なんて接近されて五秒と持たなかったわよ。追尾魔法までありえない回避でかわしちゃうし、 
    どういう運動神経、もとい、飛行センスをしてるのヨウムちゃん」 

妖夢「いつもやってるというか、慣れてるというか、地上戦よりむしろ空中戦のほうが得意です」 

キリト「なんてこった。ALOでヨウムに追いつくどころか、ますます離されてしまった……」 

魔理沙「キリトからは天才と言っていい迸るほどの才気を感じるけど、 
    妖夢のリアル剣術は仲間内でも最強だぜ。何十年も修行して数百余の実戦経験を持つ相手に、 
    一年かそこらで追いつくのも無理な話だ。あまり気落ちすんな天才」 

キリト「何十年? 数百余?」 

魔理沙「おっと、言葉のアヤだぜ。それくらいに相当するほど濃いって喩えだ」 

チルノ「キリトとアスナ、本当はかなり強いだろ。 
    妖夢が強すぎて弱いように見えたけど、あたいには分かるよ」 

アスナ「あれ、この子はさっきの。あ、蘇生魔法かけてくれてありがとうね」 

チルノ「よし。ならその恩返しとして、今度はあたいと勝負しろ!」

●空中 

キリト「血の気が多いなこのおチビさんは。本当に二対一でいいんだな?」 

チルノ「さっきもクラインは適当に飛んでるだけ。ほぼ二対一だった。 
    あたいは最強だから、妖夢に負けられない。一人でいい」 

アスナ「キリトくん、この子、見た目で判断したら泣きを見るわよ」 

キリト「わかってる……蘇生魔法を使えるほどだし、プレッシャーが只者じゃない」 

チルノ「先手必勝! ごにょ——パーフェクトフリーズ!」 

キリト「なんとか回避できた。というかチルノ、それパーフェクト違うから!」 

アスナ「なんて詠唱速度なの! ほとんどスペルが聴き取れなかったわ」 

チルノ「ごにょ、アイストルネード!」 

キリト「しまった! ぐはあ。そ、それもアイスなんとかと違う」 

アスナ「キリトくんに回復魔法を……」 

チルノ「させるか! ごにょ、グレートクラッシャー!」 

アスナ「ごにょごにょごにょ、きゃあ、は、早い!」 

キリト「アスナも突っ込めよ。それ違うって」 

アスナ「ごにょごにょごにょ、そんな余裕ないわよ——ごにょごにょはい、ヒール!」 

キリト「サンキュー! それでは剣で勝負だチルノ!」 

チルノ「ごにょ、ソードフリーザー!」 

キリト「なんと氷の剣だと! 相変わらず名前違うけど、 
    最高ランクスペル! ——だが俺とてSAOで鍛えた剣の腕が!」 

チルノ「遅い!」 

キリト「フェイントを交えた俺の一撃が避けられた……ヨウムのときと同じだ」 

チルノ「地上と空中は、違うんだよ。ほいぶっすり、はい終了」 

キリト「一撃でHP全損か……さすが最上位攻撃魔法。アスナ、あとは任せた」 

アスナ「任せたって、キリトくんでも一蹴されたのに、私が叶うわけないじゃなーい!」

●勝負後 

チルノ「おまえら、なかなか強かったぞ」 

キリト「一方的にのされたあとで言われてもな……わずか五分で二度も死ぬなんて、初めてだよ。 
    しかも殺された相手に蘇生魔法の施しまで受けるとは。HP完全回復状態で復活するなんて、 
    ウンディーネにしか使えない、おまけに超高等魔法だぞコレ」 

チルノ「あたいは水系統限定だけど、攻撃魔法も回復魔法も極めたから、なんでも出来るんだ。えっへん」 

アスナ「ねえチルノちゃん。あなたって、MMOはどれくらいやってるの?」 

チルノ「MMOって美味しいか?」 

アスナ「へ?」 

霊夢「その子は強くなることに関しての集中力と記憶力は凄まじいけど、それ以外はてんでダメよ」 

キリト「……ということは、ヨウムのときと同じ」 

霊夢「からっきしの初心者よ」 

アスナ「ねえチルノちゃん、このゲームはじめてどれくらい?」 

チルノ「さあ? けっこう日が経ったよ」 

魔理沙「まだ五週間くらいだぜ」 

キリト「その期間であの強さだと? 飛ぶほうも凄いし——そういえば君はウンディーネだし、 
    まさか、セブンセンシズ・ガールの一人か!」 

チルノ「セブンセンシズぅ〜〜?」 

キリト「先日ウンディーネ領主になったディアベルが目撃してたんだ。 
    初心者なのにとてつもない速度で飛べる、常人にない第七の感覚を宿した天才少女アバターがいたって。 
    あ、第六感は超能力のことだよ」 

リーファ「それを言うなら、お兄ちゃんもたった一時間で補助コンなしで自在に随意飛行できるようになってたじゃない。 
     それこそ第六感ってレベルじゃないの?」 

魔理沙「つーかそれ以前に、感覚って七どころか一〇種類以上あるんだが、どこのマンガだそれ。 
    いわゆる五感ってのは、たくさんある感覚のうち、代表的なものを指してるだけだぞ」 

キリト「聖闘士星矢(せいんとせいや)は俺の亡くなった祖父がバイブルにしていたマンガだ。 
    それだけネタが古い」 

魔理沙「セイント? 悪いが知らん」 

妖夢「あのみなさん、セブンセンシズ・ガールですが、私が知ってます。 
   クラインさんに教えられたんですけど、私たち幻想郷クラスタ四人のことです」 

クライン「当人たちがろくに気付いてねえとは、恐れ入ったぜ天才空戦少女たち」 

キリト「ということは、もしかしてマリサとレイムも……」 

霊夢「悪いけど私も魔理沙も、空中戦闘——エアレイドに限ればあんたらより余裕で強いわ。 
   ま、私たちの戦いを見ればわかるわよ」 

魔理沙「そういうこった。善は急げってな」

●グランド・クエスト 

巨像『未だ天の高みを知らぬ者よ——』 

チルノ「受けるー!」 

魔理沙「私たちセブンなんとかが前に出るから、 
    キリトたちはクラインと一緒に後ろからサポートに徹してくれ」 

キリト「りょ、了解……」 

リーファ「お兄ちゃん、覇気がないじゃない。どうしたの?」 

キリト「しょうがねえだろリーファ、サポートなんて初体験だし。 
    しかもこれ、最高難度のグラクエだぞ」 

アスナ「これまでのクエストはいつもキリトくんが先導役で主戦力だったしね。 
    さすがに彼女たちが相手じゃ、二刀流の英雄も形無しかな」 

クライン「ま、上には上がいるってこったな。せいぜい参考にして、後日の糧としようじゃないか少年」 

キリト「おまえは気楽でいいよな。彼女が滅法強くて」 

クライン「社会人の俺は分別をわきまえてるからな」 

霊夢「最初は妖夢と釣り合うんだ〜って無謀に最強を目指してたわよ、その人。 
   私の強さを聞きつけて突っかかってきたから、秒殺して子分にしてやったのよ」 

クライン「レイムさーん、それは言わないって約束じゃ……」 

霊夢「ここぞとばかりに過去の鬱憤を晴らして大人ぶってるからよ」 

妖夢「あの、クラインさん。剣なら私が教えてさしあげますから、強くなりましょう」 

クライン「おうよ! 修行デートだな」 

チルノ「扉が開いた! 突入!」 

魔理沙「一番手は私だ! ごにょ、開幕マスタースパーク!」 

妖夢「はー! ごにょ、幽明求聞持聡明(ゆうめいぐもんじそうめい)の法!」 

キリト「そんな無茶苦茶な……大出力ビームに、分身の術だなんて」 

アスナ「はじめて見るけど、どちらも高位のスペルよね。名前ぜんぜん違うけど」 

キリト「ナイス突っ込みアスナ」 

リーファ「なによこれ。白い変な戦士がたくさん湧いてるわよ。すごい数」 

クライン「ガーディアンどもさ。まっ、これが彼女たちが短期間で魔法スキルをガンガンあげた理由だけんどな。 
     サポート魔法中心だけど、俺も地味に高レベルだぞ」 

霊夢「ごにょ……八方龍殺陣!」 

チルノ「ごにょ、フロストコラムス!」 

魔理沙「ドラゴンメテオ!」 

妖夢「六根清浄斬!」 

霊夢「夢想封印!」 

チルノ「アルティメットブリザード!」 

キリト「……楽だ。弾幕の間を抜けてくるガーディアンを斬り倒すだけのお仕事。 
    というか前の四人、敵のあらゆる攻撃を謎機動でことごとく回避してやがる。あやかりたいぜ」 

リーファ「エアレイドの次元が違うわね。とくにチルノちゃんの動きは自然体すぎて、あまりにも天才的よ。 
     なんていうか、敵ながらガーディアンが可哀想になってきたわ」 

クライン「それでも届かねえんだよな。だから俺は剣技に秀でたおまえらを呼んだわけさ」 

アスナ「え? でももう敵、八割方は片付いてるわよ」 

クライン「見てなって。本番はむしろ、これからだ」 

キリト「なんだなんだ、新手がどんどん湧いて、白い壁になったぞ。むこうが見えない!」 

クライン「なっ。おまけにな、こちらはスッカラカンだ」

チルノ「うーん、魔力がつきかけてる。あとは回復用にストック」 

魔理沙「ここから先は、肉弾戦だぜ!」 

妖夢「私の本領発揮ですね。このムラサメブレードで、今宵も滅殺してあげましょう。 
   まず最後のMPで特大の剣撃を放ちますから、そこへみなさん、突撃してください」 

キリト「ヨウムのことだから……すごいのが来そうだな」 

妖夢「ごにょ、迷津慈航斬(めいしんじこうざん)!」 

リーファ「すごーい! 剣が何倍にも伸びて、一撃で三〇体は倒したわよ」 

アスナ「これってあのエンシェントウェポンのエクストラ攻撃に、 
    インプ専用の高位スペルを合わせた特殊技じゃなかったかしら。名前ぜんぜん違うけど」 

霊夢「総員抜刀、突入!」 

キリト「そういや前の四人、ヨウム以外の三人は武器を手にしてなかったな。 
    前衛なのにここまで素手って、デタラメすぎる」 

アスナ「私から見れば、キリトくんも十分にデタラメよ。 
    クラインさんが言ったように、上には上がいるって話。さあ、行きましょう」 

キリト「ああ。そうだな。この戦い、どこまで通用するのか、俺も行けるところまで暴れてやる」 

●五分後 

妖夢「はああぁぁ!」 

キリト「おりゃあああぁぁ!」 

チルノ「やった、抜けた!」 

霊夢「あなたたちはゴールの天井に! 残った人は万が一に備えた退路確保のため、 
   空間を維持するの。ここを橋頭堡として、守りきるわよ!」 

チルノ「任せろ! 行くよ!」 

キリト「まさか一回目の挑戦でたどり着けるとはな」 

妖夢「私たち、これで七〇回目くらいなんですけどね。 
   キリトさんたちのおかげでやっとクリアできそうです」 

キリト「ななじゅう? 毎日何回も挑んでたのか。そりゃ、スキル熟練度がすごいことになるはずだ」 

チルノ「なんだこれ、動かないぞ。なにも反応しない」 

キリト「おかしいな。これってどう見ても扉かなにかだよな」 

妖夢「条件が足りてない? でも敵は永久に出てくる仕様みたいで、 
   全滅させるのはとても不可能に見えます」 

チルノ「なあユイ。なにか分かるか?」 

ユイ「えっと、この扉ですけど、管理者権限によってロックされています」 

キリト「なんだと? クエストフラグは?」 

ユイ「フラグ以前に、この空間にはそれ用の変数がそもそも存在しません。 
   つまりALOのグランド・クエストは、普通のプレイヤーがなにをしてもクリアできないようになっています。 
   できるとすれば、GM用のアクセスコードを持った特殊な権限の人だけです」 

キリト「なんてことだ。実装してぬか喜びさせておいて、実際はまだ未完成だったというのか!」 

妖夢「開発チームの怠慢ですね。サービス開始間もないから、 
   どうせ誰もクリアできないと、高をくくっていたのでしょう」 

ユイ「いえ。扉自体はすでに機能します。この扉はどこかへワープできるよう、 
   しっかりデザインされています。ただ、開けないようにしているだけです」 

キリト「とんだ悪意を感じるな」 

チルノ「なに言ってるのか、天才のあたいにも分かるよう、教えろ」 

ユイ「チルノさん。この扉は意地悪な人のせいで、開きません」 

チルノ「意地悪なやつ、とっちめる!」 

キリト「とにかく撤退だ! ここにいてもいたずらに霊夢やクラインたちが疲弊するだけだ」

●宿屋 

全員『…………』 

クライン「GMコールで抗議文送ってみたけど、仕様ですってテンプレ返答だ。意味不明だぜこりゃ」 

リーファ「こうなったら、ネットでこの件、流してみる?」 

キリト「信じて貰えるのか? 三〇人はおろか五〇人態勢でも全滅するような難関クエストに、 
    たった八人で誰も死なず扉まで辿り着けたって」 

アスナ「あーあ。カメラで写真を撮っとけば良かった」 

魔理沙「現実的じゃないぜアスナ。悪意には悪意をもって返されるのが世の常だ。 
    まず扉を間近で見た者がほかに誰もいない。 
    だから運営に捏造だと主張されたら、こちらが逆に糾弾される。 
    データ書き換えでデザインを変更されたら、その時点で私たちは詐欺師に転落だ」 

霊夢「そこまで悪辣で性根の腐った運営と思いたくないけど」 

魔理沙「レクト・プログレスには、ニードレス技術開発に関する暗い噂もある。 
    慎重に事を運んでもいいと思うぜ」 

アスナ「その件についてだけど、私に任せてもらえないかしら」 

キリト「アスナ、さすがにそれは」 

魔理沙「なんだ、アスナには妙案があるのか?」 

アスナ「とっておきの裏技よ。じつは私の父が、レクト本社でかなり偉い人なの」 

キリト「あーあ」 

霊夢「悪いけどそのカードを切るのは、アスナ、最後の最後にしてくれないかしら」 

アスナ「どうして? 父さんから開発チームのあいつに圧力をかければ、 
    すぐに解決するわよこんな理不尽。 
    どうせ世界樹のてっぺんで偉そうにしてる妖精王オベイロンの正体は、あいつに決まってるんだから」 

魔理沙「よほど嫌いなようだな、レクト・プログレスにいる特定の野郎が」 

アスナ「だってあの変態ったら、ただでさえ変態のくせに、 
    いいかげん変態の変態なうえに変態すぎて、どうしようもない大変態だし」 

魔理沙「生理的に受け付けないのか」 

アスナ「名ばかりで実のない口約束だけの許嫁(いいなずけ)だったくせに、 
    いきなり権利を主張してキリトくんと私の交際に猛反対したのよ。 
    私に本当に好きな人ができたら、許嫁は解消する。 
    そんな感じの空手形だったし、父さんも母さんもキリトくんを認めてくれたのに」 

キリト「アスナが怒髪天貫いて、あやうく流血沙汰になるところだったよ。 
    おかげで俺はどうやら、将来までガッチリ進路が決まってしまったようだ」 

リーファ「お兄ちゃん、エリートコース確定だもんね。しっかり勉強しないと、置いてかれるよ」 

アスナ「そうなのよ。いまやキリトくんと私は、両家が認めて書面も交わした正式な許嫁なの」 

クライン「すげえ。リア充として追いついたと思ったら、 
     おめえらとっくに先の果てまで行っちまってたのかよ」 

霊夢「アスナ、あなたかなり恵まれたお嬢さまなのね」 

アスナ「あまり話したくなかったけど、そうなるわ。 
    とにかく私の父を動かせば、この件は一発で解決よ」 

霊夢「だからこそ学ぶべきことがあるわ。理不尽なんていつでもどこにでも転がっている。 
   まず可能なあらゆる手を探って、なにもかもやり尽くして、 
   最後になってからでないと、裏技にはすがりたくないの」 

アスナ「レイムさん……」 

魔理沙「私も賛成だぜ。まず足掻いてみたい。なにか糸口があると思う」 

クライン「でも内側はロックされててダメなんだろう? 
     外側つーか、世界樹の幹は侵入不可エリアだしよ」 

チルノ「枝は?」 

魔理沙「おっ、ずっとだんまりしてた子が、やっと発言したな」

チルノ「だってみんな、なに言ってるのかわかんなかったし」 

アスナ「不思議に思ってたけど、チルノちゃん、 
    もしかして見た目だけじゃなくて、中身も幼いの?」 

霊夢「まんまよ、まんま。九歳くらいと思っていいわ」 

キリト「……以後はそれを踏まえて、こいつに接しよう」 

チルノ「あー! みんなあたいをバカにしただろ。あたいは最強なんだぞ」 

魔理沙「はいはい、チルノは最強で天才っと。で、枝がどうしたって?」 

チルノ「中がダメ、外も幹がダメなら、あとは枝じゃん」 

クライン「途中で飛行可能時間が尽きて、誰も最下層の枝にすら届かねえぞ?」 

キリト「待てよ、その発想、捨てたものじゃない……」 

リーファ「なにか思いついたの、お兄ちゃん」 

キリト「——ロケットだ。みんなして肩車して、多段ロケットになればいい」 

●アルン正門前 

リーファ「みんな見てるね……」 

クライン「我慢だ。我慢しろよみんな! 
     俺たちは伝説になるんだからな。いまは笑われても、気にするな」 

霊夢「それではいくわよ、一段目、全力ブースト!」 

チルノ「おおう、動き出した! 遅いね、ゆっくり」 

霊夢「仕方ないじゃない。私ひとりで、七人も抱えてるんだから! なんで私が最初なのよ」 

魔理沙「一番パワーのあるサラマンダーだから、仕方ないぜ」 

霊夢「おりゃあああ! 最高速度〜〜!」 

チルノ「遅い、ゆっくり」 

霊夢「バカにするなぁああ!」 

チルノ「おおお、加速しはじめたぞ、やるな霊夢、褒めてやる」 

霊夢「軽いからって理由でてっぺんにいる奴は気楽でいいわね!」 

●およそ一〇分後 

霊夢「そろそろ尽きるわよ、二段目用意OK?」 

クライン「おうよ、任せろ!」 

霊夢「切り離すわ、それでは、行ってらっしゃい!」 

クライン「うぉぉおおお! サラマンダー族の底力を、見せてやる!」 

チルノ「霊夢より遅いな。のんびりだ」 

●およそ一〇分後 

クライン「俺の滞空限界が来たぞ、三段目!」 

リーファ「もっと高い位置にいたかったのに」 

クライン「飛行能力の高いシルフだからな。あばよっ、下で待ってるぜ」 

リーファ「任せなさい、私も妖精の端くれ!」 

チルノ「おおー、すこし速くなったな」

●およそ一〇分後 

リーファ「四段目、タッチして!」 

アスナ「行くわよ、ウンディーネの全力!」 

チルノ「またのんびりだ」 

アスナ「私、それほど飛ぶの得意じゃないのよ」 

リーファ「どんどん離れていく……けど、あまり上昇してないわね」 

●およそ一〇分後 

アスナ「私の限界が来たみたい」 

妖夢「私の出番ですね。五段目、行きます!」 

キリト「なんだこの急加速。さすがセブンセンシズ・ガールだな」 

チルノ「だんだん枝が近づいてきた!」 

妖夢「意外と疲れますねこれ」 

アスナ「うわあ、ヨウムちゃんもうあんな高さに。そういえばいま、高度何キロあるんだろう。 
    この高さからの滑空は楽しいわね。癖になっちゃいそう」 

●およそ一〇分後 

妖夢「私も滞空が切れたようです。お願いします」 

魔理沙「任せろ! 私の本領を発揮だぜ」 

妖夢「吉報を待っていますよ」 

魔理沙「行けー!」 

チルノ「高い高い! 早い早い!」 

●およそ一〇分後 

魔理沙「電池切れのようだぜ。キリト、よろしくな」 

キリト「七段目、スタート!」 

チルノ「あれれ? 三人から二人に減ってるのに、もしかして魔理沙とおなじくらい?」 

キリト「これでも俺はスプリガンとしてめっちゃ速いほうで、 
    並のシルフより最高速が出るんだぞ。きみたちが極端に速すぎるだけなんだよ」 

チルノ「もうすぐ届きそうだよ、枝」 

キリト「お? これってもしかして、俺も栄誉に噛ませて貰えそうだな」 

●五分後 

キリト「やったぞ! 世界樹についた! 七人で良かったんだな」 

チルノ「あたいったら天才ね。なにもしなくても天才。 
    だから天才で最強。さっそく、写真、写真……キリト」 

キリト「なんだ、天才で最強ちゃん」 

チルノ「このカメラってアイテム、どう使うの?」 

キリト「やはり俺が一緒に辿り着けて、良かったな」

●世界樹 

キリト「なんてこった……どこにも空中都市なんてない。ここはもう、ほとんど頂上のはずなのに」 

チルノ「いくら歩いても、枝と葉っぱしかないね」 

ユイ「アルフらしき、NPCの反応もありません。皆無です。不自然です」 

キリト「とにかく写真だ。証拠を片っ端から写すぞ」 

チルノ「わあい。悪を暴くんだ」 

オベイロン「——困るなあ、いきなりそんなことをされたら」 

キリト「誰だ!」 

チルノ「くどくて変な顔、変な顔のおっさんだ」 

オベイロン「僕の名は妖精王オベイロン。きみたちが崇める、この世界の支配者だよ。 
      正規の手段を踏まずに世界樹に侵入してくるなんて、オイタが過ぎたね。 
      これはスプリガンとウンディーネに、きついペナルティを与えないといけないなぁ」 

チルノ「ここまで攻略したぞ。アルフに転生させろ。あたいはずっと空を飛ぶんだ!」 

オベイロン「いや、これは不正な手段だ。だから悪い子にはアルフの町も、謁見の間も見えないんだよ」 

キリト「それは理屈としておかしい。あの試練は、あくまでも世界樹の上へと転移する手段にすぎない 
    ——そういう設定で、個別の事象のはずだ。俺たちは方法こそ違えども、 
    きちんと実現可能なルールの範囲内で、フェアネスに則ってここまでやって来た」 

オベイロン「残念だけど、想定の範囲外ってやつだよ。 
      うん、何事にも例外はあるんだよ。だからね、不正はいけないな」 

キリト「だから不正じゃないと言っている……須郷」 

チルノ「あれ、固まったぞこの変なおっさん。すごー?」 

オベイロン「……そうか。そうかそうか、きみは——データを参照させて貰うよ……なるほど、 
      やはりまさかな、英雄くんがこんなところまで出張るとは、どこまで僕の邪魔をすれば気が済むんだい」 

キリト「邪魔だと? 俺はべつにあんたの邪魔なんか」 

オベイロン「どうしてSAOを、たった八ヶ月でクリアしたんだ!」 

キリト「?」 

オベイロン「早すぎる、あまりにも早すぎたんだよ君たちは! ヨームという謎の少女と、 
      桐ヶ谷和人(きりがやかずと)くん。君たちふたりのせいで、 
      あまりにもあの世界は早くクリアされてしまった! なんという都合の悪いことを!」 

チルノ「あたいは妖夢から、良かった事だと聞いてるよ」 

ユイ「その通りです。攻略が早く終わったおかげで、死んだ人が思ったより少なくて済みました」 

オベイロン「良くない! おかげでどうだ、僕の計画は大幅に狂ってしまった! 
      実験に使うはずだった空間も、施設も人もお金も、なにもかもが無駄になってしまった。 
      明日奈くんまでもが僕を見捨てた! 選ばれた人間である僕をだぞ! 
      なにもかも失った僕には、数億円の借金しか残らなかった。終わったよ、ああ終わったんだ」 

チルノ「まるで三流な悪人の告白みたい」 

キリト「たしかに悪人っぽいな」 

オベイロン「おいおい、絶望に染められた僕の呪詛はまだ終わってないぞぉ」 

キリト「別にアルフになれなくてもいいけど、グランド・クエストの半端な実装を詫びて、 
    世間に謝罪するんだな。あとは誠意を見せて、クエストをきちんと完成させるんだ」 

オベイロン「あーはっはっは! そんなの、無理に決まってんだろが! 
      このALOでアルフの町をデザインして、 
      アルフ転生イベントの影響と修正を全マップへと実装反映させるのに、 
      何千万円掛かると思ってるんだい? そんなことに使うお金があったら、 
      僕の借金返済に一円でも回さないといけないじゃないか。分かってないなあ君は。愚かだね」 

キリト「……だめだこいつ」 

オベイロン「僕はね、きみを心底から憎んでいるんだよ。 
      絶好の研究材料と、出世街道の足がかりとなるはずだった婚約者と、 
      栄光の未来を、ことごとく奪ってくれたガキが!」

キリト「おまえの事情は知りようがないけど、人の地位や不幸を利用しようとしていたことだけは分かる。 
    さらに運営資金の使い込みまで行うとは、須郷、おまえは悪だ」 

チルノ「悪か! こいつは悪いやつなんだな!」 

ユイ「私の会話分析でも、この人は悪人だという結果が出ています。 
   おまけに自分から勝手にネタバレして不利な状況を作ってるように、精神の均衡を失っています。 
   話が通じなさそうですから、さっさとやっつけましょう! ——きゃあ」 

チルノ「ユイが消えた! おっさん、ユイになにをした!」 

オベイロン「なぜAIごときが僕を断罪する! 僕はきみの創造主なんだぞ! 
      たかがナビゲーション・ピクシーの分際で……いや、こいつは——これは、SAO! 
      基幹開発者、茅場晶彦だと! なぜだ! なぜ僕のALOにまだ、 
      茅場先輩の影がいるんだ! 名義はすべて書き換えたはずなのに!」 

チルノ「ユイを返せおっさん! さもないと——ぐっ」 

キリト「須郷、貴様! ……うぅ。これは、超重力か」 

オベイロン「未実装の重力魔法だよ。脆いねえ。いくら強がろうとも、神たる僕の操作ひとつでこのザマさ。 
      そう、僕はALOの絶対君主で、最高の支配者なのさ。もう君たちは帰さないよ。 
      ここで朽ちてもらう。死人に口なしってね。きゃーっはっはっは!」 

キリト「アミュスフィアはナーヴギアとは違う。そんな機能はないぞ」 

オベイロン「ちっちっち、甘いねえ君は。出来ることもあるんだよねえ。 
      たとえばさぁ、精神を崩壊させたら、殺したのとおなじ効果があるだろう? 
      とりあえず英雄くんと、そこのおちびさんの自力ログアウトは不可能にしておいたよ。 
      外から無理矢理起こされる前に、どうやって料理しようかなあ」 

チルノ「こいつ悪いやつだ! とんでもなく悪いやつだ!」 

キリト「貴様ぁ! こんなことをして……ぐはあぁ。な、なぜ腹を蹴られて」 

オベイロン「驚いてるかい? そうだろうな。なぜ痛いのかって顔をしてるね? 
      傑作だよその表情。きゃーはっはっは! もちろん痛覚を再現したからだよ。 
      ペインアブソーバーの抑制レベルを下げたのさ! 
      素晴らしいねえ、あらゆる感覚を操作できる神の手!」 

キリト「てめえ……」 

オベイロン「こうやって痛めつけて、徹底的に仕返しをしたら、いくら英雄といえども、 
      心は折れて、精神もやられてしまうだろうよ。だってSAOは、どれだけ敵に斬られようとも、 
      潰されようとも、飛ばされようとも、痛みを感じないヤワい世界だからねえ。だが!」 

キリト「それは俺の剣——なにを……が!」 

チルノ「キリト!」 

オベイロン「僕みたいな非力な男が剣を突き刺しただけで、ほらっ! 
      簡単に苦痛でのたうち回る! そうなんだよ和人くん。きみは英雄といっても、 
      あ・く・ま・で・も、ゲームの世界での勇者だったんだ。どうだい、本物の傷みというものは」 

キリト「……きさま。こんなことをして、いいと思ってるのか」 

オベイロン「あーっはっはっ! いくら強がろうとも、顔がウソを付いてないよ。 
      痛いよ〜痛いよ〜、助けて〜って言ってる。ほら和人くん、僕に頼みたまえ。 
      どうか背中の剣を抜いてくださいってな!」 

チルノ「おい卑怯だぞ変なおっさん!」 

オベイロン「黙ってろガキが。言動が幼いからゲーム機の登録情報を覗いてみたらまさかの九歳って、 
      どこまでふざけてるんだ。僕はね、ガキが大嫌いなんだよ。バカだし、愚かだし、煩いし、鬱陶しい。 
      小さいからといって、僕がきみに手を挙げることができないって思ってないかい? 
      きみにも知られてしまったからには、この和人くんとおなじように、 
      心を砕くことにするから、おとなしく料理の順番を待ってるんだな」 

チルノ「くそう——あたいは最強なのに」 

謎の声『……そうか、きみは最強なのか』 

チルノ「え? 誰?」 

謎の声『しー、気付かれる。これはきみにしか聞こえていない。小さな声でいい』 

チルノ「……誰だ」 

カヤバ『私は茅場晶彦——の、残留思念みたいなものだ。非科学的な物言いになるが』

チルノ「妖夢がやっつけた奴だね」 

カヤバ『そう、見事にしてやられたよ。システムを簡単に上回る、人間の可能性を見せて貰った』 

チルノ「妖夢は妖怪だよ」 

カヤバ『いや違う。あの世界では、魂魄妖夢(こんぱくようむ)くんといえども 
    プレイヤー以上の力を出すことは出来なかった。だから人間の可能性でいいんだ』 

チルノ「どうしてあたいに話しかけてるの?」 

カヤバ『それは八雲紫(やくもゆかり)くんに、幻想郷の未来を託されたからだな。 
    ニードレス技術は順調に発展しており、やがてニューロリンカーとして爆発的な世界の変革を実現する。 
    精神や魂の秘密が解き明かされる日も近い。それは同時に、オカルトとして日の目を見なかった分野が、 
    一斉に正統な科学の仲間入りを果たすことも、また意味しているのだよ。 
    結界や封印の類を科学で見つけ、科学で解除する日が来る。 
    私は新時代の式神として、妖怪たちと人間との橋渡しに選ばれたらしい』 

チルノ「天才のあたいに分かる言葉で説明してよ」 

カヤバ『そのうち人間は幻想郷を見つけるだろう。仲介役が私だ。 
    私は人間の側でありながら妖怪の味方でもあるから、チルノくんを助けるのだよ』 

チルノ「あたいは今、なにをすればいい」 

カヤバ『一時的にきみを、この世界の神にしよう』 

チルノ「最強になるのか」 

カヤバ『だがきっと、きみの喜ぶ最強とは違うと思う。それは許してくれたまえ。 
    須郷のバカを止めるには、いまはほかに手がないんだ』 

チルノ「わかった——なら、最強やるのはキリトに任せる」 

カヤバ『ほう、私が平行処理でキリトくんへ同時接触していることに気付いていたか』 

チルノ「あたいは天才だからね。キリトもブツブツしてる」 

カヤバ『彼には人間として託したいものがあるからね。では行くよ』 

チルノ「へえ。わからん……そうか、うんうん、つづけて同じコトを言えばいいんだね」 

オベイロン「うるさいなあガキが。さっきから一人で、なにをブツブツと」 

チルノ「システムログイン、IDヒースクリフ!」 

オベイロン「な、なんだと! なぜその名を言う! 茅場ぁ〜〜!」 

チルノ「システムコマンド、マジックコントロール、 
    IDチルノとIDキリトに掛かっているグラビティを無効化せよ」 

オベイロン「貴様!」 

チルノ「システムコマンド、IDオベイロンの管理者権限を強制ログオフ!」 

オベイロン「なっ!」 

キリト「ようやく解放されたぜ。システムログオン、IDオベイロン」 

オベイロン「桐ヶ谷もか! 僕のGM権限をログインしながら乗っ取ったな! 
      雑魚でガキのくせに! 茅場め! 死んでまで僕の邪魔をするというのか!」 

キリト「うるさいな盗人が——うっ、剣を自分の体から抜くってこんな感覚なのか。 
    だがもうすぐ終わる。須郷、あんた名義を換えたと言ったな。 
    つまりALOは茅場のシステムを土台にしてるということだな」 

オベイロン「茅場先輩の構築したSAOは完成度が高い。流用しない手はないだろ。うへへっ」 

キリト「俺もおまえも、他人の舞台で踊ってることに変わりはない。 
    俺が雑魚の勇者なら、おまえは盗賊の王だ。 
    システムコマンド、この空間のペインアブソーバーをゼロに!」 

オベイロン「なっ? なにをする気だ!」 

キリト「決着を付けようってわけさ。痛みを感じない茅場の世界で魔王を倒す行為を、 
    たかがゲームだと嘲笑しただろ。だから現実とおなじレベルで痛みを感じるようにしてやったまでだ。 
    俺とおまえ、どちらが正義か。剣と剣の一対一で勝負を付けようっていうんだよ」 

オベイロン「武器、武器……ない、僕の武器がない! エクスキャリバー!」

キリト「ほう、そんな武器があるのか。 
    システムコマンド、オブジェクトID、エクスキャリバーをジェネレート」 

オベイロン「なんだとぉ!」 

キリト「なんてふざけたステータスだ。ほら、特別に伝説の武器をくれてやる。 
    俺はこの、ただの店売り剣で相手してやるよ。掛かってこい須郷伸之!」 

チルノ「格好いいぞキリト!」 

オベイロン「……こ、このガキがぁ!」 

●博麗神社 

チルノ「それでね、あたいがぼけ〜〜っと見てる前で、こう、何回も何回も切り刻んで、 
    変なおっさんはカエルみたいな悲鳴あげながら弾け飛んだ」 

妖夢「へーそれは見本のような勧善懲悪でしたね」 

チルノ「投げやりだなー、妖夢」 

妖夢「そりゃそうよ。この話を聞くのはもう九回目ですし」 

ユイ「みなさーん、お茶が入りましたよー」※式神なので実体可 

カヤバ「新作和菓子も出来たぞ。私の手製だから、ありがたく食したまえ」※式神 

チルノ「美味そうだ! さすがカヤバだな!」 

魔理沙「カヤバ、おまえもすっかり神社のおさんどんが板に付いたな」 

カヤバ「これも幻想入りして以来の腐れ縁というやつかな。もっとも、 
    そもそもなぜ私は女体化しているのか、 
    しかもなぜ中学生ていどのイヌミミ少女にされてしまったのか。 
    いろんなことを八雲紫くんに問い詰めたい日々だよ」 

霊夢「将来のためらしいわよ。まさか茅場晶彦そのままの姿で、 
   幻想郷と日本政府との交渉役に使えるわけがないじゃない。妖怪にしても、 
   年若い女の見た目でいるほうがなにかと便利なのよ。相手が油断してくれるから」 

カヤバ「まあいい。性転換は男のロマンらしいから、しばらくこの姿を楽しむとしよう」 

魔理沙「妖怪は姿に内面も引き摺られるっていうぞ。だからそのうち身も心も女になると思うぜ」 

カヤバ「それは貴重な観察対象になりそうで興味深いな。 
    妖怪というのはなんでもありなだけに、研究材料に事欠かなくて面白い」 

ユイ「はい、おやつの用意が整いましたよ」 

全員『少女喫茶中……』 

妖夢「けっきょく須郷って人は、なにをしたかったんでしょうか? 勝手に自爆しまくっちゃって、 
   未熟な私から見てもただの阿呆さん。なにか大それた所業を働こうって輩には見えません」 

魔理沙「ところがどっこい、あいつがやろうとしていたのは、人の魂の直接制御らしいぜ」 

妖夢「それは……なんという大それたことを」 

カヤバ「彼はそれなりに優秀だが、追い詰められると自暴自棄になるところがあってね。 
    悪事に走ってしまったのも、私への対抗心がおかしな方向に走ってしまった結果だろう。 
    私ほどではないが、愚かな男だ。私のオリジナル体は無間地獄に落ちてしまったが、 
    その苦悶はあまり想像したくない」 

チルノ「よく分からないけど、凄そうだな」 

魔理沙「須郷のやつ、ALOを隠れ蓑にSAOプレイヤーを被験者として研究し、 
    軍事用に実用化したかったんだってさ。おっそろしい奴だ。 
    準備段階で妖夢とキリトがさくっとクリアしたおかげで何も起きなかったけど、 
    須郷はもみ消し工作費や不履行違約金を自腹で捻出するしかなく、多額の借金を背負った。 
    そこまでは良くある喜劇だったが、ALOが意外に大ヒットしたのが運の尽きだったな。 
    目の前に大金がある。須郷は我欲を抑えられず、 
    返済のため一億円以上も会社の金を横領してしまった。開発資金が不足したALOは結局、 
    グラクエの完全実装が間に合わなかった。あいつはもう社会的には死んだも同然だ」 

霊夢「ALO、早く運営再開しないかしら。物足りないわ」 

妖夢「私もクラインさんと会いたいです……バーチャル限定とはいえ、せっかく付き合ってるのに。 
   こうなったらダイシー・カフェとやらに突撃してみようかしら」 

ユイ「半霊にみなさんびっくりすると思いますよ」

チルノ「みんな楽しみに待ってるのに、連帯とか責任とか社会とかって面倒だな」 

霊夢「チルノが難しい単語を連発した!」 

魔理沙「私がいろいろ教えたせいだぜ。ALOは運営会社が変わるって話だ。 
    移管作業は順調らしい。まあ、あれのおかげだけどな」 

チルノ「えーと、世界の種子?」 

魔理沙「ああ、キリトが茅場より託された、世界の種子だ。 
    ザ・シードというVRMMOパッケージのおかげで、 
    バーチャル世界がどんどん広がってるってよ」 

霊夢「たとえばどんな世界があるの?」 

妖夢「それなら白玉楼へお遣いに来てた永遠亭の鈴仙さんが、銃器の世界を楽しむと言ってましたね。 
   名は、ガンゲイル・オンラインだったかしら」 

魔理沙「GGOか。あそこは空も飛べないし、埃まみれで殺伐としてるから、 
    綺麗好きな霊夢にはあまり向かないな。とにかく増殖中だから、いくらでも選び放題だ」 

チルノ「あたいも楽しみたい! 最強になる!」 

ユイ「チルノさんはとっくに伝説級の最強プレイヤーですよ。 
   キリトさんと共に人知れずALOを救った、英雄チルノとして」 

妖夢「私が無双したアインクラッドも新生ALOで実装されるらしいです。 
   どこかにデータが奇跡的に残っていたみたいですね」 

カヤバ「SAO事件後もALOが発売されたり、鋼鉄の浮遊城が規制されないのは、 
    国がニードレス技術を裏で推進しているからだな。 
    あきらかに現在の都合より未来への投資を指向している」 

霊夢「なんにせよ、私たちにとっての大本命はALOってわけね。 
   あらチルノ、すごくワクワクしてるって顔ね」 

チルノ「——伝説かぁ、いいな! あたいったら最強ね!」 

●P.S. 

カヤバ「古い記録を整理していて、霊夢くんが博麗神社の巫女に就任したのが 
    西暦換算で一九九六年以前となっているのだが、いまは二〇二三年。 
    二七年も昔の話だが、どう見ても少女だな。彼女は一体何歳なんだ? 
    魔理沙くんもただの人間のはずだが、おなじく二六年前の一九九七年から文献が残っている」 

紫「それはね、幻想郷、公然の秘密よ」 

カヤバ「これは興味深いな。永久に歳を取らない人間の少女か。 
    博麗大結界をすこしでも長く維持してもらいたくなった。 
    研究者として、私は全力を尽くすとするよ」 

紫「あなたが気に入ったのは、霊夢と魔理沙、どちらかしら?」 

カヤバ「私には外の世界にちゃんと恋人がいたんだよ。だからあの二人を見る私の目は、 
    歳の離れた妹や、娘などを愛でるものに近いといえるだろう。 
    いまは女だから、なおさらだ」 

紫「あら、意見が合いそうね。うふふ。せいぜい励みなさいな。 
  そうそう、これ別件に関する参考資料ね。事前対策のため、必要な情報が満載よ」 

カヤバ「アクセル・ワールド? ……読ませて貰おう」 



 saga仕様版END 今度こそやったぜ。

まさかブラウザのセキュリティとか大幅にカットする羽目になろうとは 
どうもお騒がせしました。




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